主張 自然への感動も心の教育
【体験学習】
最近、各学校で田植えなどの体験学習が盛んに行われている。自然や社会の営みを体で覚えることは、教室では味わえない喜びや感動を子供たちに与え、心の教育に役立つはずだ。
「中学生が母親を殺害」(横浜)、「修学旅行で高校生焼死」(北海道)など少年少女の事件・事故を報じる新聞記事の片隅に、「児童が田植えに挑戦」「泥んこに悪戦苦闘」といった記事を見つけると、ホッとする。
東京では水田がほとんど見られなくなったが、江東区の小学生は公園に造成された区内唯一の水田で田植えの課外授業を受け、「わー、気持ち悪い」「田んぼの上は温かいが、下は冷たい」などと大はしゃぎだったという。この経験が大切なのだ。
体験学習の効果はまず、こうした稲作の知識を頭だけでなく、体でも覚えられることだ。古代日本人は春には米の豊作を神々に祈り、実りの秋には、それを感謝した。凶作のときは、来年の豊作を願った。その祭りはいつから始まったのか。先生に力量があれば、子供たちに、こんな想像力をふくらませることもできる。
子供にとっても、教科書や参考書だけを使った「座学」より「校外学習」の方がおもしろいはずだ。ふだんは勉強嫌いで不登校の子供も、田植えの実習なら参加しやすい。学級崩壊や校内暴力などの「荒れ」に悩む多くの教師が、子供たちを校外に連れ出すと目の輝きが増すことを経験している。
体験学習の最大の利点は、それによって正義感や規範意識、道徳観が培われることだ。文部省が昨年、小中学生を対象に行った体験活動に関するアンケート調査によると、「太陽が昇るところを見た」「チョウやトンボ、バッタなどの昆虫をつかまえた」といった自然体験が豊富な子供ほど、「友達が悪いことをしていたら、やめさせる」「バスや電車で席を譲る」ケースが多いという。自然の優しさと同時に、畏怖の念も感じるからだといわれる。
自然だけでなく、社会体験も大切だ。一昨年、中学生による衝撃的な事件が起きた兵庫県では、昨年、小中学生が一週間以上、学校を離れて社会の現実に触れる「トライやる・ウイーク」を実施した。その就労体験で、不まじめな生徒は殴られた。学校内でそうしたことが起きれば「体罰」として批判されるが、昔の子供たちには普通のことだった「地域のゲンコツ力」である。その後、ある中学校では遅刻者がゼロになったという。
学校だけでなく、家庭や地域社会も、子供たちに自然や社会の現実を学ばせる体験学習をさせてほしい。