平成 11年 (1999) 6月 7日[月] 先負

主張 問われる「公共放送とは」

【NHK・BS10年】
 NHKの衛星放送(BS)が本放送を開始して満十年を迎えた。ニュース報道やスポーツなどの番組で既存局にない切り口が支持されたこともあって、受信世帯千三百万を超える順調な普及ぶりである。しかし二〇〇〇年末にはBSデジタル放送が始まり、民放局も加わって大激戦の時代になる。それは、デジタル時代における「公共放送のあり方」が問われるときでもある。

 BSは、もともと難視聴地域対策として始まったが、五輪などのスポーツイベントや中国天安門事件、ベルリンの壁崩壊、湾岸戦争、ペルー日本大使公邸人質事件など、相次ぐ国際的な大事件が普及の後押しをした。リアルタイムの報道や試合終了まで完全中継などの長時間編成が、地上波テレビのマンネリ化に飽きた視聴者にはざん新に映ったのだろう。

 いうまでもなくNHKは世界屈指のメディア軍団で、それを支える受信料は、基本受信料五千百二十億円に衛星付加受信料九百五十四億円を加えた六千七十五億円(今年度)にもなる。着実に増える衛星受信料が、事業拡大の財源になっている。

 デジタルの特徴は「放送と通信の融合」で、映像や音声だけでなく各種データ送信ができるところにある。双方向のコミュニケーションも可能になる。それだけにビジネスチャンスを期待する多くの企業が進出の機会をうかがっている。であれば、国民の受信料に立脚する「公共放送」には、民業圧迫を防ぐためデジタル分野への進出に一定の規制をすべきだ、という声にも一理があるといえよう。

 NHKは「あくまでも本体での範囲内にとどめる」と表明している。しかし現在でも関連会社を通じ積極的に営利事業を展開しており、「別の形で商業的に利用する可能性は否定できない」と、“巨人”の動向に懸念も根強いことを指摘しておきたい。

 BSの番組編成にも注文がある。国内ばかりでなく海外からも長時間の生中継に力を入れるが、ビデオ編集でなく中継する意味がどれだけあるのかなど疑問を感ずる番組も少なくない。NHKは厳しいコスト意識をもつべきだろう。「なんでも、とことんやる」必要などさらさらない。

 ラジオで始まり、テレビで成長し、デジタルに進化しようとするNHKを、半世紀前と同じ位置づけでとらえていていいのかどうか。そうした根本的な議論をすべき段階を迎えている。まずはグループを含めた経営の透明性と現行の受信料制度を徹底的に検討すべきであろう。