【山崎政権構想】
自民党総裁選に出馬する意向の山崎拓前政調会長が、政権構想の骨格を固めた。近く発売される月刊誌に掲載されるが、注目すべきは、集団的自衛権の行使を含めて、憲法改正を真っ向から打ち出していることだ。憲法問題が総裁選の政策論争の主要テーマとなるのであれば、きわめて意義深いといえ、山崎氏の姿勢を率直に評価したい。
総裁選をめぐっては、九月の予定を一カ月程度前倒しして小渕恵三首相の無投票再選に持ち込もうとする動きがあるが、加藤紘一前幹事長と山崎氏がこれに対抗して出馬の意欲を示している。山崎氏の雑誌論文は七月半ばにも発表する政権構想に盛り込まれるとのことで、事実上の出馬宣言といえる。
山崎氏は二十一世紀の冒頭十年間に実行に移すべき理念・政策を掲げ、「二〇一〇年の国家像」を論じた。これまで国際社会で主体的に平和を創造する努力を怠ってきた−として、安全保障面での日本の役割を強調している。とりわけ、集団的自衛権の行使について、「憲法解釈の拡大変更(解釈改憲)の手法によらず、たとえ時間がかかっても正攻法で、憲法九条改正によって認められるよう目指すべきだ」と、明確に改憲論を打ち出した。
昭和三十年の保守合同では「現行憲法の自主的改正」が共通目標となり、以来、自主憲法制定が自民党の党是とされてきた。ところが、憲法に対する自民党の姿勢は政治情勢に応じて変転をたどり、河野洋平総裁時代の平成七年の党大会で決定された「新宣言」では、「新しい時代にふさわしい憲法のあり方について国民とともに議論を進めていく」として、自主憲法制定を棚上げにした。
最近になって再び憲法問題が主要な政治テーマに浮上、国会に憲法調査会を設置する国会法改正案がこの通常国会で成立する見通しだ。また、周辺事態安全確保法などの論議を通じて、集団的自衛権の行使を認めていない政府解釈が改めて問題化している。
山崎氏はこうした経緯を踏まえて改憲論を掲げたもので、九条のほかにも、国を守る義務、環境保全の義務、道州制、首相公選制などの検討課題をあげている。
総裁選がどういうかたちで実施されるか定かではないが、仮に三氏が出馬することになるのであれば、山崎氏の問題提起は貴重である。憲法論議に対して、加藤氏は護憲派として知られてきただけに慎重で、小渕首相も政権担当者の立場から及び腰であるのは否めない。ここは、国家像を明確にするために徹底した憲法論争を求めたい。
主張 交通ネットワーク整備を
【鉄道改革】
二十一世紀初頭における総合的な交通政策はどうあるべきか−。運輸相の諮問機関である運輸政策審議会が、長期的展望に立った交通政策の基本的方向について審議を始めた。また運輸省は、今年度から二カ年計画で、首都圏、関西圏などでJR、地下鉄、私鉄の相互乗り入れなど先導的プロジェクトの具体化に向けて調査を開始した。
日本の大都市の鉄道が、国際的に競争力をもつのかどうかは疑問がある。東京を中心とする大都市の通勤混雑や踏切の多さ、さらには、乗り換えの利便性、空港へのアクセスなどの面で見劣りする。
その意味からいうと、今回、同省の調査対象である(1)東武東上線、西武池袋線とつながる営団十三号線と東急東横線・目蒲線、京急空港線を接続し、羽田空港まで直結する(2)都営浅草線に新駅をつくり、東京駅へ乗り入れる(3)東京−上野間の線路を増設し、JR東北、高崎、常磐線を東京駅に乗り入れる(4)阪神西大阪線西九条−難波間の延伸(5)なにわ筋線の整備−などは、利便性の観点から早期に実施すべきだ。
二十一世紀は環境問題の深刻化やグローバルな競争の進展が予想され、鉄道を中心とする交通システムの活性化は先進国共通の課題となっている。英国では異なるタイプの交通間の連携を目指す新交通政策、米国では二十一世紀に向けた交通平等法の制定など、未来を先取りした政策が相次いで打ち出されている。
そのなかで、日本の交通ネットワークの整備は諸外国に比べ、立ち遅れている。東京圏における混雑(ピーク時一時間あたりの輸送量の輸送力に対する比率)は一八六%だ。朝夕の道路の走行速度は三大都市圏で時速二一キロと遅く、九十分以内に空港に到達できる人口の割合は八二%にとどまっている。鉄道の乗り換え時間は東京圏で九−十分が一カ所、七−八分が二カ所、六−七分が十二カ所もある。
そうした点から、国際的な規模、機能を持った競争力の高い交通インフラの整備が急務だ。新しい都市政策を構築し、路線ごとにバラバラな駅を統合する、あるいは、路面の踏切をなくし都市部を連続高架・地下化する、駅の乗り換えに便利なようにエスカレーター、エレベーターを設置する−といった基盤整備は最低限、実施すべきだ。
都市鉄道は、乗り継ぎなしのシームレスでなければいけない。さらに、ICカードを用いた共通乗車券の販売、情報拠点としての駅の整備など、課題は多い。新しい観点から鉄道の役割に期待する。