【決算チェック】
企業の決算をチェックする会計監査への信頼が揺らいでいる。銀行、証券などの経営破たんの後、粉飾決算の発覚が相次いでいるからだ。企業の違法行為に加担したり、見逃した監査責任を裁判で問う動きも広がってきた。企業とのなれ合いを排し、厳格な監査制度への改革が急務だ。
会計監査にあたる公認会計士や監査法人は、企業の決算書が適正かどうかを証明し、投資家に正確な情報を提供する公益性の高い職責を担う。
しかし、実態はお寒い限りだ。山一証券、三田工業、日本長期信用銀行と破たん劇のたびに、粉飾疑惑が持ちあがり、会計士・監査法人が共犯者として訴えられている。最近でも東京相和銀行が、監査法人の承認した前三月期決算発表から二週間後に破たんし、会計監査の無力さを見せつけた。
これでは企業の財務諸表を信頼できないし、健全な企業社会は望めない。企業に甘い会計処理を許してきた会計士の責任は重い。投資家に顔を向けた制度の見直しを急ぐべきである。
改革の焦点は、監査意見書の充実だろう。欧米では、倒産の恐れがある企業の「存続可能性(ゴーイングコンサーン)」を明記することが義務づけられている。日本でもこうした規定を導入し、投資家に注意喚起していくのが会計監査の責務ではないか。
そのためには企業にどっぷりつかった体質を改め、会計士や監査法人の独立性を高めることが不可欠だ。
日本公認会計士協会は昨年、倫理規定を見直し、会計士が同一企業を担当する期限を最大十年までに限る自主規制ルールを設けた。また、公正な監査が行われているかどうか、定期的に担当外の会計士が調べるダブルチェック制度を始めたが、課題は多い。
とくに行政とのかかわりが極めて不透明だ。会計士協会の事務局長は、監督官庁である大蔵省のOBが占め、多くの監査法人が会長職に天下り組を受け入れてきた。企業や行政とのなれ合いを断つ自浄作用が求められる。
会計原則や監査制度を、蔵相の諮問機関である企業会計審議会で策定する従来型では、大胆な改革は期待できない。米国の財務会計基準審議会(FASB)のような、行政や会計士協会から独立した民間機関を設け、国際基準に沿った変革が必要である。
今年度から向こう三年間に、連結主体の決算、時価会計、年金会計の変更を順次導入する新たな企業会計制度がスタートした。いつまでも、「物言わぬ監査」では、市場の信任は得られない。会計監査制度についても速やかに古い殻を脱ぎ捨てるときだ。