【敦賀原発】
福井県敦賀市の日本原子力発電会社(原電)敦賀原子力発電所2号機で大量の一次冷却水が漏れた事故(トラブル)は、同じ原子炉で二度目の漏水だが、多重防護機構が機能して今回も安全性は確保された。しかし国民の原子力発電に対する安心感が損なわれたことは間違いない。
原電、原子力安全委員会、通産省は、今度のトラブルが原子力施設事故に関する国際評価尺度(INES)に基づく事故(アクシデント)には該当しないトラブルだからといって軽視せず、平成七年十二月に起きた動力炉・核燃料開発事業団(現核燃料サイクル開発機構)の高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の二次系ナトリウム漏れ以上に深刻な事態と受け止めるべきだ。
漏水の原因となったステンレス製管の亀裂がなぜ起きたのか、定期検査で前期症状は発見できなかったのか、管の材質に問題はなかったのか、などを徹底的に調べ、他の原発での同種トラブルの再発防止に役立て、国民の安心感醸成につとめなければならない。
通産省などの調査によると、管に亀裂が生じた場所は高温の原子炉の熱を取り出した一次冷却水を発電用の蒸気発生器に送ったあと、再び冷却水として使うための再生熱交換器につなぐ枝管の部分。漏れた水は原子炉から蒸気発生器まで、一次系の施設、配管をすっぽり覆う「格納容器」の底にたまっており、容器外には放射性物質は漏れていなかった。
世界の軽水炉では格納容器の外側には圧力容器があり、さらに堅牢な原子炉建屋があって、仮に原子炉で大きな事故が起きても放射性物質が建屋外に漏れる恐れは少ない。ところが旧ソ連で起きたチェルノブイリ事故の原子炉(黒鉛減速型原子炉=RBMK)は軍事用としてプルトニウムを取り出しやすいように開発された特殊な炉で、格納容器などはまったくなく、事故発生、爆発と同時に、強力な放射性物質が大気中に拡散しヨーロッパ諸国を汚染した。現在もロシア、ウクライナ、リトアニアの三国で十四基が稼働中で、国際原子力機関(IAEA)では早く閉鎖するよう勧告している。
今度の水漏れが「もんじゅ」より深刻なトラブルというのは、まず漏れた個所が放射能を帯びた一次系だったこと、次いでナトリウムは漏れても空気と化学反応を起こし固形になり拡散しにくいが、水は蒸気となってその挙動を把握しにくくナトリウムに比べれば外に漏れやすい、という点だ。しかし、いずれにしても、冷静さを欠いたことさらな「危険報道」は事態の正確な把握に害あって益なしである。