【在外投票】
鳴り物入りで発足したわりには、意外と関心は低く拍子抜け−。こんな状況をみせているのが、海外で暮らす日本人有権者に国政選挙の投票権を付与する「在外投票」制度だ。
昨年の国会での公職選挙法改正を受けて、外務、自治両省が今年五月から、在外の日本大使館や総領事館などで選挙人名簿登録の受け付けを開始した。だが、七月末までの登録者数は九千四百二人で、約五十九万人と推定されている海外有権者のわずか一・六%にとどまっている。
海外在住日本人の強い要望と、十五年に及ぶ国会論議を経て実現にこぎつけた在外投票制度も、このままでは形骸化してしまうことが危惧されている。政府は、制度の周知をはかるためのPRを強化するとともに、本人が在外公館に直接出向かなくてはならない登録手続きなどについて、さらに工夫することが必要だろう。同時に各政党にも、海外有権者に対する政策のアピールなど、国政参加の意欲を高める積極的な対応が求められる。
在外投票制度は、海外に三カ月以上住んでいる有権者を対象に、来年五月一日以降の衆参両院選挙から適用される。当面は比例代表選挙だけの投票に限定し、在外公館での投票を原則とするが、直接投票が困難な場合は郵便投票も認めることにしている。
政府は、主要国で海外有権者に対する説明会を開く一方で、現地メディアやNHKの国際放送、日本人会などの組織を通じてPRに努めてきたとしている。だが、世界各国に散らばる有権者にはまだ十分知らされていないのが実情のようで、投票に必要な選挙人名簿の登録申請の出足は鈍い。
七月末までの三カ月間に登録した九千四百二人のうち、最も多いのがブラジル・サンパウロ総領事館の二千六百九人、米ロサンゼルス総領事館の五百九十六人がこれに続く。ロンドンは二百三十二人、ニューヨークは二百二十人、パリは百四十八人と、日本人の多い都市でも登録者は少ない。
これでは、在外投票の導入が、かえって国政選挙全体の投票率低下につながる結果を招くことにもなりかねない。選挙の公平性を保つうえからも、特定の地域や組織に偏らない制度の周知徹底が急務だ。もちろん海外有権者自身の責務も大きい。悲願の国政参加の道を広げていく啓蒙運動など、自主的な取り組みが求められる。
緊張感のある政策論争で国会審議を活性化させ、政治の質を高めることが、国内、海外を問わず有権者の関心を引きつける第一の条件であることは、いうまでもない。