平成 11年 (1999) 8月17日[火] 先勝

主張 自然の“掟”をあなどるな

【キャンプ事故】
 自然を甘くみてはいけない。その思いを強くする。

 お盆休みの十四日、熱帯低気圧の通過で大雨となった関東地方で、キャンプ客が増水した川に流されたり、孤立する事故が相次いだ。なかでも神奈川県山北町の玄倉川では、中州でキャンプをしていた十八人が濁流にのまれた。行方不明者の無事を願って捜索を見守るしかないが、再三の警告にキャンプを中止して避難していれば避けられた事故だっただけに、悔やまれる。

 現場周辺では前夜から、時には一時間に四〇ミリ近い激しい雨が降り続いていた。このため上流の玄倉ダムではサイレンを三十分間にわたって鳴らしたうえで放流を始めた。さらに県職員や警察官が川を見回り、キャンプをしていた人たちに避難するよう呼びかけたが、中州の十八人は「大丈夫だ」と答え、聞き入れなかったという。

 事故はダムの放流が引き金になったという見方がある。救助活動にあたっていた警察の要請でいったん放流を停止したが、ダムがあふれる恐れが出たため放流を再開した。十八人が濁流にのまれたのは放流量が毎秒一〇〇トンと最大になった直後だったからだ。

 しかし、この判断を責めることはできない。すでに玄倉ダムは満水に近く、ダムから水があふれれば、調節した放流以上の水量となり、流域に大きな被害をもたらす可能性がある。

 それよりも救助隊が駆けつけていながら、手をさしのべることができず、目前で事故が起きてしまったのが残念でならない。可能な手段はつくされたと思うが、一刻を争う状況に対応するのに、現場の人員、日ごろの訓練など十分であったか。この悲しい事故を教訓に、広域連携や早期の自衛隊出動などを含めて態勢を検討してほしい。

 そして、被害に遭った人たちには酷かもしれないが、キャンプをしていた場所を問題にしたい。中州も河原も川の中なのである。普段は小川のような流れでも、ひとたびまとまった雨が降れば、たちまち急流となり、川幅も広がって水没してしまう。アウトドアの専門家は「とくに中州はテントを張ってはいけない場所」と警告する。

 このところのブームでキャンプ人口は一千万人ともいわれる。四輪駆動車で山奥深く分け入り、テントを張ってバーベキューなどを楽しむ。手軽に自然と触れ合うことができるレジャーである。が、自然に親しむには、自然を知らなければならない。時に自然は怖いものであることを。

 せっかくの休みを、という気持ちも理解できるが、キャンプを中止する勇気が生死を分ける。