平成 11年 (1999) 8月27日[金] 大安

主張 解党おそれぬ本格論戦を

【民主党代表選】
 民主党の代表選挙は、菅直人代表と鳩山由紀夫幹事長代理が出馬を表明、横路孝弘総務会長も立候補の構えで、事実上の三つどもえとなる様相だ。支持率が大幅に低下するなど、影が薄い印象の民主党だが、選挙を通じて建設的な論戦を展開することが再活性化への一歩となるのではないか。

 代表選挙は現職国会議員と非議員の衆院選公認候補、各都道府県代表二人ずつの約三百人によって行われる。九月十一日告示、二十五日投票のスケジュールは、自民党総裁選とほぼ重なる時期だ。政局の関心が自民党や「自自公」の動きにばかり集中してしまうことをおそれ、埋没を避けようとする思惑とみられる。

 民主党は昨年夏の参院選で躍進し、金融国会では民主党案を自民党に“丸のみ”させるなど、野党第一党としての存在感を示してきた。ところが、菅代表の女性スキャンダルの発覚、自民・自由連立政権の発足などによって、党の勢いは急速に低下し、求心力が失われていった。

 先の通常国会でも、ほとんどなすすべがなかった。終盤で内閣不信任案を提出したものの不発に終わり、長時間演説“フィリバスター”や牛歩戦術の乱発など、かつての“抵抗野党”を再現させてしまったのである。

 二大政党ないし二大政治ブロック時代を前提に、政権担当能力のある健全野党を目指すというのであれば、自自公体制が固まれば固まるほど、対抗勢力の核としての民主党の立場は重みを増すはずだ。議会制民主主義を根づかせるためにも、民主党の成熟が望まれているといっていい。

 自民党から旧社会党までさまざまな党派の出身者の寄せ集め政党ではあるが、冷戦時代のイデオロギー対決は過去のものとなったはずで、党内に超えられない差があるとも思えない。保守政権に対するリベラル勢力を結集するというならば、それなりの対抗軸を打ち立てるのは可能であると思える。

 菅、鳩山両氏は旧さきがけ出身、横路氏は旧社会党出身だが、この国をどういう方向に導いていこうとするのか、それぞれが描く国家像や政治理念は必ずしも明確ではない。

 代表選挙を格好の機会として、政治手法や基本政策などをめぐり、徹底した論戦を展開してはどうか。党内には抗争激化−党の分裂といった事態を懸念する声もある。これをおそれて徹底した論争を避けるようでは、代表選挙の意味がない。仮に分裂となったら、政界再編の流れに重大な一石を投じることにもなるわけで、そのぐらいのダイナミズムを望みたいところだ。

主張 ペット社会はモラル第一

【ピラニア騒動】
 農業用水溝にいたピラニアに、小学生が指をかまれてけがをする“事件”が大阪であった。ピラニアはアマゾンなど南米の河川に生息する、集団で牛をも食い殺すというどう猛な魚だ。ペットとして飼育されていたものが捨てられたとみられるが、手にあまるからといって安易に捨てるような者に、生き物を飼う資格はない。

 総理府の調査では、三人に一人が家庭でペットを飼っているという。多くは「動物が好きだから」「子供の情操教育のために」という理由だが、独り暮らしの高齢者のコンパニオン・アニマル(伴りょとなる動物)としてや、傷ついた心を動物と接することでいやすアニマルセラピーなどでも、ペットは注目されている。

 が、昨今のペットブームは過熱を通り越して“暴走”気味にも感じられる。絶滅が危惧されワシントン条約で保護されている動物の密輸は、日本がアジアで最も多いという。もちろんペットとして希少動物の需要があるからで、オランウータンやフクロテナガザルなどを店頭に置いていたペットショップが種の保存法違反で大阪府警に摘発されている。

 また、やはり大阪で、飼い主から逃げ出したか、捨てられたワニが路上で目撃され、警察官が捕獲に出動する騒ぎが、つい最近あった。

 家庭で飼育できなくなったペットについては、相談があれば動物愛護団体が仲介役になって新しい飼い主を探しているが、それも限界がある。希少動物は動物園に持ち込むしかないが、すべて引き取ってくれるわけではない。飽きてしまったから、あるいは手に負えなくなったからといって、生き物をオモチャのように扱ってはいけない。ペットを飼うには、最後まで面倒をみる心がまえと飼育の知識がなければならないのだ。

 法律や条例もペットブームの実態に合わせて見直す必要がある。「動物の保護及び管理に関する法律」では、保護動物としてイヌやネコ、イエウサギなど十一種と、ほかに「人が占有しているほ乳類、鳥類」を挙げているが、は虫類や魚類は含まれていない。これらの動物を虐待、遺棄した場合の罰則は三万円以下の罰金または科料という軽いものである。

 記憶に新しい「矢ガモ事件」などがきっかけになって、動物虐待への罰則強化が論議されているが、保護動物の範囲を広げ、さらに危険動物の飼育を登録制にするなど法の網をかぶせて、ペットの飼い主に自覚をうながすべきだろう。動物と共生するペット社会には、厳しいペナルティーも必要だ。