【脱マイカー実験】
建設省は九月から、できるだけマイカーを使わない都市生活を体験する「社会実験」を全国六地域で順次、実施する。都心部での交通渋滞の緩和、激増する交通事故対策、大気汚染の軽減などがねらいだ。マイカーをどう利用すべきか、国民すべてが考えるきっかけとしてほしいものだ。
実験は、東京都世田谷区、神奈川県海老名市、鎌倉市、愛知県豊田市、大阪府、島根県松江市の六地域で行われる。
このうち世田谷区では、ミニバスを借り上げて一定区間を一日数十回運行し、通勤や買い物のマイカー族に乗り換えてもらうことにしている。採算のめどが立てば、民間のバス事業者に運行業務を委ねて、来春にも新規路線の開設にこぎつけたい段取りだ。
世田谷区の実験には、行政と住民が連携して民間業者を後押しし、不況下で新たな事業展開を導く手助けをしようという側面もある。ぜひ成功させて範を示してほしい。
大阪府の場合は、郊外の駅前スーパーを拠点にした「パーク・アンド・ライド」の実験を行う。駅前までマイカーで行き、近くのスーパーの駐車場に車を置いて、そこから勤務先までは電車を利用するシステムだ。休日の人出に合わせてつくられた駐車場の場合、平日は約三割が空いている。こうした駐車場を遊ばせずに活用しようというものだ。
具体的には、五店で計約四百台の駐車スペースを通勤用に確保し、十月から来年三月まで実験を行う。月額七千−一万五千円の利用料金を設定、採算性や周辺の民間駐車場に与える影響などを調査して、本格導入の道をさぐりたいとしている。
大阪府の場合、毎月二十日をノーマイカーデーに指定してマイカー通勤自粛キャンペーンを展開してきたが、手ごたえは芳しくなく、排ガスによる大気汚染も「依然として厳しい状況」(十年度の大阪府調査)だ。府下の交通事故は、今年上半期(一−六月)で二万七千三百九十八件にのぼり、昨年同期より七百二十九件増えている。全国で最悪といわれる迷惑駐車の追放にもつながる実験だけに、関係者の期待は大きい。
マイカーは、たしかに便利であるには違いないが、歩いていける場所にも安易にマイカーを走らせてはいないだろうか。自転車の活用もさらに進めたいところだ。今回は、一台の電気自動車を複数の市民が共有して通勤などに使う実験も行われる。こうした試みを、二十一世紀のクルマ社会のあるべき姿を考える契機とすべきである。