【防災訓練】
防災週間中、全国各地では防災訓練が繰り広げられている。訓練参加者は七百五十四万人という。毎年この時期になるとにわかに盛り上がる防災運動だが、パターン化された訓練のやり方には疑問がある。何のために訓練をやるのか、実際の災害に役立つためにはどんな訓練をすればいいのか、原点に戻って防災訓練の在り方を再考すべきである。
「マグニチュード7クラスの直下型地震が発生し…」−防災訓練は、こうしたシナリオに従って進められる。そして、河川敷に自治体、警察、消防、自衛隊などが集合し、自治体首長が見守るうちに、消火・放水、救急、誘導、炊き出しなどが行われる。場合によっては、ヘリコプターからロープ伝いに降下するデモンストレーションなども披露される。
いま防災週間中ですよ、と住民の防災意識をいささか喚起することはあっても、こんな訓練が実際の災害に役立つとはとても思えない。防災訓練の目的は大別して三つある。第一は住民の意識を高めることだが、自治体のいわばパフォーマンスでは効果など望めない。住民レベルでいえば、地域の訓練でサバイバルを体験する。自分を守るのは、まずは自分自身、次いで家族、地域社会の協力だと分かってもらうのである。
第二はすでにある防災計画の検証である。どこの自治体でも一応の防災マニュアルを作っている。しかし、それが正常に機能するかどうかは、マニュアルを実際に動かしてみなければ分からない。救援ヘリコプターの着陸場に指定されている広場が、実は付近住民の避難場所になっている、といった不都合はいくらもある。いいかえれば、訓練を通じてマニュアルの欠点、問題点を洗いだし、それを是正する。同時に担当者が関連機関との連携に習熟し、相手の気心が知れるような域にまでならなければ、防災訓練の真の目的は達成できないのではないか。
第三は指導者のトレーニングである。災害は国や自治体にとっての緊急事態といえる。緊急事態では入ってくる限られた情報を首相や首長が直接判断し、どこに救援の重点を指向するか即断しなければならない。複雑な幕僚機構を通じたために救助、救援のタイミングが失われた事例はいくらもある。防災訓練での首長の役割は単なる視察ではない。防災訓練は、首長の判断、決心トレーニングの場であるはずだ。しかも、これがもっとも大事な訓練の目的なのである。
来年は様変わりした防災訓練を全国各地で見せてもらいたいものである。
主張 日本文化発信する武器に
【英語教育】
来春から、小学校でも英語の授業が可能になる。文部省は異文化理解を目的の中心にすえているが、日本の文化や学術を世界に発信するためにも英語が必要であるという視点を忘れてはならない。
小学校での英語教育は、新学習指導要領の目玉授業「総合的な学習の時間(総合学習)」の中で、国際理解に関する学習の一環として、こう位置づけられている。「児童が外国語に触れたり、外国の生活や文化に慣れ親しんだりするなど、小学校段階にふさわしい体験的な学習が行われるようにすること」。初めからアルファベットや単語を覚えるのでなく、英会話などで耳から覚えさせようという趣旨だ。
教育には「習うより慣れよ」という側面があり、この趣旨は正しい。しかし、新指導要領はもっと大切な視点を見落としている。それは、日本の子供たちが自国の歴史や文化を学び、それを外国の子供たちに英語で発信できるような力を身につけることだ。
明治以来、英語を含めた外国語教育は、主として欧米の進んだ文化や学術を効率的に取り入れるために行われてきた。しかし、今の日本はそうしたキャッチアップ型社会を脱し、自ら文化や学術を発信して世界に貢献することを求められている。
そのためには、小学校だけでなく、中学や高校の教科書も含めた英語教育の抜本的な改革が必要である。これまでは、どちらかというと外国の小説や生活を題材にしたものが多かったが、今後は、日本の文化や先人の活躍などを英訳した教材も取り入れるべきだ。そして、日本の子供たちが交換留学やホームステイなどで外国の子供たちに接した際、胸を張って自国の文化や歴史を語れるようにしてほしい。
また、日本文化の原点である国語教育は、英語教育以上に重要だ。最近の学力調査では、国語の文章力に極めて乏しい現代っ子の弱点が浮き彫りになった。敬語を正しく使えない子も増えている。英語力といっても、その意味を正しくとらえ、分かりやすい日本語にする国語力が基本である。
これからの情報教育の主流となるインターネットのホームページの八五%は英語が使われている。日本の科学者の論文数が増えているのに、引用頻度で欧米に劣るのは、英文で発信した論文が少ないからだ。南京事件や慰安婦問題などで誤った事実が英文で独り歩きしているのに比べ、それを正すための英文での発信は十分とはいえない。日本が世界から孤立せず、真の相互理解を深めるためにも、英語教育はますます重要になってくるのである。