【東ティモール】
住民投票の結果を発表後、無政府状態に陥っていた東ティモールに対して、インドネシア政府が戒厳令を布告した。現地情勢の悪化を見ると、遅きに失する感もあるが、軍が全権掌握の強い措置を取った以上、インドネシアは効果的に行使し、一刻も早く治安を回復しなければならない。
東ティモールのインドネシアからの独立の是非を問う住民投票は、多くの憂慮や懸念の中、投票日までは予想よりは順調に推移しているかに見えた。それが「独立支持・残留拒否」が圧倒的多数という結果が判明するや、併合派民兵による蛮行が始まった。
国連と関係国との合意事項であった「治安の責任」を果たすべきインドネシア警察や応援の軍部隊も騒乱を傍観しただけでなく、一部には民兵と警察・軍の共謀説さえある。
現在の無秩序状態は、独立派と併合派との衝突によってではない、併合派民兵の一方的な暴走で引き起こされている。武装しているとはいえ、民兵と警察・軍では、兵力は比べ物にならないはずだ。事態をここまで悪化させた警察・軍の責任は大きい。
軍は威信をかけて平定に当たるのはもちろん、戒厳令によっても事態を収拾できないとなれば、すでに失われかけているインドネシアの国際的信用が地におちてしまうことを、同国政府は厳しく認識する必要がある。
一方、国連は、もはや軍が民兵をおさえ切れない最悪のシナリオへの対応に着手すべきだろう。また混乱が当局によりたとえ沈静化しても、それは一時的なものと考えた方がよい。国連として、東ティモール独立へのプロセスを万全なものとするための準備に、早急に取りかからなければならない。
独立を承認するための国民協議会の開催問題や、国連平和維持軍(PKF)の早期派遣構想、国連による暫定統治など問題は多い。それらはまたインドネシア政府の協力が不可欠でもある。当事国の合意や協力なしに、国連活動が成功することは難しい。急きょ、ジャカルタ入りする国連代表団とインドネシア政府は事態の重大性を考え、率直に協議することを期待する。
こうした一連の動きに、日本政府の顔がまだあまり見えないのは残念だ。インドネシアへの国際的批判は高まり、援助停止や経済制裁の声も出ている。東ティモールの混乱は首都ジャカルタにも波及しつつある。日本はインドネシアへの最大の援助国であり、政府は再三、「インドネシアの安定は日本外交に重要」と明言してきた。同国の置かれた状況と対応を、もっと踏み込んで直言すべきだ。