【オウム特別法】
各地の地方自治体や住民と転入をめぐってトラブルを起こしているオウム真理教対策に、政府がようやく重い腰を上げた。同教団の活動を規制する「特別法」を立案し、次期臨時国会で成立させる方針を固めたのである。
住民の不安を背景に、七日の全国都道府県知事会議では、政府に具体的対策を求める声が相次いだ。しかし、小渕恵三首相が「破壊活動防止法(破防法)適用の再請求」を示唆したのに対し、野中広務官房長官が定例会見で「与党の議員立法でオウム特別法の制定が妥当」との考えを示すなど、政府の方針が統一されていない感があった。
このような政府の対応は、自治体に政府不信の声を増大させ、場合によっては自治体自身が住民登録法などに違反しかねない状況にあった。こうした事態を打開するため、政府が方針を固めたという点では評価できる。
しかし、われわれはかねてから主張しているように、破防法適用の再請求がオウムの団体としての活動を封じる最善の方策であるとの考えを変えるつもりはない。仮に対象団体にオウムを据えた特別立法を制定するにしても、オウムの団体としての活動を禁止、あるいは団体の早期解散を実現できる法律にしなければ、現在オウムの転入問題を抱え、対策に苦慮している各地の自治体や住民は安心できないからだ。
オウムはいまだに麻原彰晃被告(本名・松本智津夫)を教祖とあがめ、殺人をも“救済”と称して認める教義と絶縁していない。そんな団体を、特別法で監視を厳しくし、運営が“ガラス張り”になったからといって、簡単に受け入れる自治体はないのではないか。自治体が受け入れる条件は、オウムが団体としての非を認めた上で団体を解散することだ。その後なら信者個人の住民登録も認められるだろう。
破防法適用の再請求に疑義をもつ人もいるが、同法のもともとの趣旨は、制定当時、武力革命を志向していた日本共産党に対する国民の不安を除く行政法だった。つまり司法手続きによらず、団体を解散させる行政手続きによる緊急避難的な法だった。
だが、平成九年のオウムに対する団体の解散指定を求める公安調査庁の請求に対し、公安審査委員会は刑事訴訟法に準じた厳密な手続きに従った。
行政には国民の不安を早急に取り除く責務がある。それなのに「将来の危険性が証明できない」として請求を棄却した審査委員会の審査および判断は、緊急措置を求める法の趣旨を誤解している。その結果が、解決のめどが立たない現在の事態を招いたのだ。