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●Link 朝日新聞の社説/ 読売新聞の社説/ 日本経済新聞の社説 各新聞社のサーバーへリンクします。 主張 徹底的に原因究明はかれ
【初の臨界事故】 放射性物質が構内だけでなく構外にも漏出、東海村内外のモニタリングポストの放射線値が通常の七倍〜十倍を記録した。政府は事態を重くみて小渕恵三首相を本部長とする対策本部を設置し、有馬朗人科学技術庁長官(文相兼務)を事故対策のめどがたつまではずせないとして、一日に予定していた内閣改造を延期した。事故の拡大に備え、周辺住民の搬送と汚染除去のために自衛隊の現場近くでの待機を命じた。 また県・村でも発生当初から同事業所から半径二百メートルを立ち入り禁止にし、三百五十メートル以内の住民には自主的に避難するよう勧告、約百六十人が村が指定した避難所で一夜を明かした。事故を知った直後から小中学校の児童、生徒を教室から出さず、校内に待機させる措置をとった。 わが国の原子力施設の事故で、内閣改造が延期になったのはもちろん、住民が避難する事態になったのは初めてだ。野中広務官房長官も「これまでに経験したことがない事故」と深刻に受け止め、ロシアなどで過去にあった同種事故の経験を参考にしようと同国との情報交換の検討を始めた。 《再臨界状態の可能性も》 「ジ社」は本社が都内港区にあり、気体の六フッ化ウランに硝酸溶液を入れ不純物をとり除いたあと粉末の二酸化ウランに転換、成型メーカーを経て原子力発電所に核燃料を供給する事業所である。事故当時は通常の原子炉(軽水炉)用より分裂性ウラン235の濃度が高い高速増殖炉実験炉「常陽」用(核燃料サイクル開発機構)のウラン転換物を作っていた。設備自体か、作業手順のミスで自然に核分裂の連鎖反応を起こして制御がきかなくなった、わが国初の臨界事故とみられている。 さらに発電用原子炉ならば制御棒の操作で原子炉の外から核分裂を止めることができるが、ウラン転換作業では通常の作業では臨界事故は起きない仕組みになっているため、そうした設備はなく、ウランの分裂が自然に止まるのを待つしかない。ところが今回は一度に処理する七倍近くの量の高濃度ウランの溶液が処理槽に入っている可能性が高く、いったん止まった核分裂が再び起きる「再臨界」状態の可能性も否定できないという。 そうだとすると周辺の放射線汚染が拡大するおそれもあり、自主的な避難勧告から避難命令に格上げされることも想定、自衛隊の待機命令になった。また、国の対策本部は深夜になって半径十キロメートル以内の住民にも、家の外には出ないで待機するよう呼びかけた。 政府・科学技術庁は日本原子力研究所の応援を求め、外部と内部をつなぐパイプを通じて臨界を止める薬剤注入も検討している。 わが国では高速増殖炉原型炉「もんじゅ」など建設中を含めた発電所や原子燃料工場など原子力関係施設で、国際事故評価尺度で「事故」とされるアクシデント(レベル4以上)はこれまでなく、まして重症の被ばく者もなかった。これまでの最高は同じ東海村の当時の動燃東海事業所の低レベル廃棄物アスファルト固化工場の火災・爆発のレベル「3」だった。 《被ばく者治療に全力を》 九月三十日の事故は、モニタリング数値の高さからも外部に放射性物質が漏れたことは確実で、おそらく国際評価で「4」以上のわが国最大の事故(アクシデント)になるとみられる。科学技術庁、原子力安全委員会は同種事故の再発防止を目指して原因の徹底究明を急ぐと同時に、被ばく者の治療に全力をあげてほしい。 さらにこうした事故に備えて国内二カ所の転換工場に発電所なみの十分な放射能遮断機能を持った建屋で覆うことも検討すべきだろう。 この事故は発電所で起きるような原子炉や発電機器自体の事故ではないにしても、国民の原子力に対する不安感を増大させたことは間違いない。エネルギー自給率の低いわが国のエネルギー政策で欠かせないのが原子力の利用である。多少金がかかっても国民の不安を取り除くのは急務である。 原子力発電大国のフランスやベルギーなどでは、万一の事故に備え、不幸にも住民が放射線を浴びた場合でも健康被害が軽減される「ヨード剤」を自治体が住民に配布、住民もなんの疑いも持たずこれを受け入れている。 わが国では「そんなに危険なのか」と反発されるのを恐れて実現していない。この事故を機会にこういう手だても論議されていいのではないだろうか。
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