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●Link 朝日新聞の社説/ 読売新聞の社説/ 日本経済新聞の社説 各新聞社のサーバーへリンクします。 主張 「制度の欠陥」を是正せよ
【防衛庁事件判決】 国がまずしなければならないのは、防衛産業の育成を国策として従来通り継続するかどうかを明確にすることである。 防衛装備品は氷点下五〇度の低温からセ氏七〇度の高温、しかも高い荷重(G)がかかる特殊な環境下で使用される。したがって、絶えざる研究開発は至上命題だが、開発にリスクはつきもの、予算をオーバーする開発計画も珍しくない。その場合、予算制度や会計法などの制約があって、公式的にはオーバーした分を企業が負担しなければならない。もし国がオーバー分を企業に押し付けるなら、企業はリスクの高い防衛産業から撤退し、装備品の国産化などけし飛んでしまう。 これまで、コスト超過は、量産段階でひそかに面倒をみるなど、あうんの呼吸で防衛産業が成り立ってきた。国策として防衛産業を育成し、それによって安全保障上の抑止力を高めようとするなら、こんな綱渡りの制度は見直されなければならない。 防衛庁は事件後、調達の方式を改めるなど改善の努力をしてきたが、防衛庁だけでできる改善には限度がある。調達に当たっての原価計算部門の充実にしても、年間約六千件の契約に原価計算作業担当がわずか百六十人だ。米国は契約件数は日本の七倍だが担当者は四千人である。調達の公正さを保つには、ある種の人海戦術が必要であることを示している。少々の充実では焼け石に水だろう、国家レベルでの対応が求められるのである。 自衛隊の将官や高級官僚の防衛産業天下りも事件の背景になっていたが、自衛官の天下りには早期定年退職という特殊性がある。年金支給開始まで将官は無収入になる。一佐以下には支給されている早期定年退職者給付金(年間ほぼ三百万円)といった救済措置がないまま、将官を社会に送り出すわけにいかない事情もあった。 刑事事件による一罰百戒だけでは、防衛調達の改革は難しい。国が国策として今後とも防衛産業育成を維持していこうとするなら、こうした制度上の欠陥是正は避けて通れない。今回の判決から、そうした教訓と方向性をくみ取ってもらいたいのである。
主張 現実路線へ指導力発揮を
【連合10周年】 この十年間、政治、経済ともに激しく変化した。連合ははたしてこの激変に対応できたのか。指導力の低下がいわれ、政治路線や憲法などをめぐる内部の不協和音も聞こえてくる。長引く不況もあって、来春闘での賃上げ要求づくりも難航している。多くの問題点が指摘される状態なのだ。 連合は総評、同盟などの官民両部門の主な労組により、平成元年に世界でも屈指の大規模組織として発足した。鷲尾執行部は「非自民・非共産」勢力を結集して、自民党に代わる政権交代可能な政治勢力の実現に取り組んできた。新執行部は、定期大会で政治活動の一本化に向けた「連合政治センター」設置も打ち出す。 連合が目指すのは二大政党時代であり、この方針はわれわれも支持する。小選挙区制での投票で常に政権交代が可能になることこそが、政治に活力を生み、健全な議会制民主主義を育てるものと考えるからだ。 このためには、新執行部の前に立ちはだかる政治路線の違いを乗り越え、現実的路線を確立する必要がある。 連合は政治活動を旧総評系の「民主・リベラル労組会議」と、旧同盟系の「友愛会」にまかせていた。いずれもことし五月に解散し、結成以来の懸案である二つの政治組織の統一は、連合政治センターの設立で名目上は達成された。民主党に基軸を置き、協力関係にある政党・政治家と幅広く連携するという。 しかし、旧総評、旧同盟系組織とも、政治活動の内容には依然として変わりはなく、むしろ双方が独自色を強めているのが実情といえる。政治勢力との連携も、民主党に基軸を置くというものの、自由党、公明党、社民党などとの協力関係を重視する産別組織もあり、内実は複雑だ。憲法改正問題がからむと、積極的な改憲論から、俎上に載せることにすら反発する勢力まであり、不協和音はさらに強まる。 政治センターには幹事会が設けられ、産別組織の委員長らで選出された代表幹事、幹事ら約三十人で運営される。政治センターが、本来のねらいとは異なり、旧総評系、旧同盟系の調整の場になる恐れもある。 表面的には政治活動組織の統一は実現した。今後、実効をあげていくためには、強力な指導体制が求められよう。新しい段階を迎えた連合の舵取りを担う新執行部の責任は重い。
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