平成 11年 (1999) 10月14日[木] 友引

主張 感染症の逆襲に備え必要

【予防接種】
 これから冬にかけてインフルエンザが流行し、亡くなる高齢者も少なくない。結核の集団感染も続発して、厚生省は緊急事態を宣言したが、感染症の逆襲から国民を守る社会防衛の切り札として、予防接種の役割が見直されている。ワクチンの安全性を高め、感染症対策を強化すべきだ。

 高齢者の場合、インフルエンザの予防接種は発症予防や重症化防止に効果が確認されている。昨冬の大流行を教訓に、今年はワクチンを二倍の三百五十万人分用意している。

 さらに、公衆衛生審議会の小委員会は、高齢者に対する予防接種を法制化するよう求めた。実現すれば、個人の負担はかなり軽減される。

 子供のインフルエンザについては、副作用続発を受けて平成六年に廃止したが、有効性、安全性を調査研究した上で検討していく。再開する場合でも、健康状態が人や時間によって異なることから、集団接種は行わず、かかりつけ医が診察した上で個別接種する。

 ただし、予防接種は弱毒化・無毒化したワクチンに感染させて免疫をつくる方法だけに、健康被害を完全になくすことは困難である。安全性と有効性を極限まで追求し、体調を見極めて慎重に接種する以外に方法はない。

 一方、結核の予防には、乳幼児のBCG初回接種と、ツベルクリン反応が陰性の小学生、中学生に対する再接種を行っている。しかし、BCG初回接種の効果が十五年以上持続するため、公衆衛生審議会の結核予防部会は、小学生の再接種を見直し、代わりに初回接種の徹底と、初回接種もれの乳幼児に対する再接種の検討を提言した。

 もっとも、保育所や小学校で集団感染が発生すると、深刻な事態に陥る。小学生の再接種をやめるなら、乳幼児の接種もれ解消を徹底し、親の不安を解消しなければならない。また、急増する高齢者の結核を防ぐには、毎年健康診断(胸部X線検査)を受けることが重要だ。医療費は自己負担分の大半が公費で賄われるので心配はない。

 予防接種によって、多くの人に免疫ができると、その病気は流行しなくなる。体が弱く予防接種を受けられない人も、周囲の人が防波堤になってくれるので病気にかかりにくい。予防接種が感染症に対する社会防衛の切り札たるゆえんである。

 ところが、予防接種を受けない人が多くなると、再び病気が増え始める。防波堤がなくなるだけでなく、病気に対する警戒感が薄れ、医療技術も低下するからだ。インフルエンザや結核がその道をたどらないよう留意し、理解と認識を深めておきたい。