平成 11年 (1999) 10月15日[金] 先負

主張 使命感抱き挑戦を続ける

【新聞週間】
 第五十二回新聞週間が十五日から始まった。今回の標語は「新世紀かわる社会に変わらぬ使命」だが、その「かわる社会」に対応し、日本新聞協会は昭和二十一年につくられた「新聞倫理綱領」を見直すため「倫理特別委員会」の設置を決めた。新聞に課せられた崇高な責務を踏まえ、改めて再出発の機会としたいと思う。

 このところ、異常な無差別殺傷事件や東海村の臨界事故、新幹線のトンネル壁崩落など、“タガ”が緩んでしまったかのような事象が相次いでいる。こうした現象をどう分析すべきか、健全で強靱な社会をめざしていくために新聞が果たす役割は何か、模索していかなくてはならない。

 ことしも、新聞のあり方が問われたケースがいくつかある。二月、臓器移植法にもとづく初めての臓器移植が行われたが、ドナー(臓器提供者)に関する報道をめぐって一部の行き過ぎが批判された。五月の二例目では、脳死確定の要件である二度目の脳死判定が終わる前に報道した新聞があった。

 七月の全日空機ハイジャック事件では、精神病院への入院・通院歴のある容疑者の実名報道をめぐって論議がかわされた。産経新聞は事件の重大性と容疑者の自己責任能力を考慮して、実名報道に踏み切った。

 より多様化し混迷の度を深める現代社会にあって、新聞は、俗論におもねることなく、正確な報道と透徹した評論によって言論機関としての役割を果たさなければならない。

 長い間、新聞と並ぶメディアといえば、ラジオでありテレビであった。いま、コンピューターを使った通信手段の飛躍的な発達により、さまざまな情報が社会を埋め尽くしている。価値観が多様化し、白か黒か、決めつけることのできないグレーゾーンの部分も広がりつつある。それだけ新聞をつくる側にとって、微妙な判断を迫られる場面が増えている。読者の“目”も厳しくなっている。

 新聞は、何ものにも束縛されない独立した立場を堅持している。戸別配達制度の維持ともあいまって、読者の信頼は大きいと信ずる。その信頼を保持し、さらに強固にしていくためにも、従来、タブーとされていた問題にあえて挑戦し、言論性の質を高めていかなければならない。

 日本が直面するさまざまな課題の多くに共通するのは、公的な利益と私的な権利のいずれを優先させるべきかという命題である。産経新聞は国益や公益を重視する立場から、こうした難題に使命感と責任感をもって挑戦していきたい。