【新株式市場】
ベンチャー企業に資金調達の道を開く新しい株式市場が動き出した。東京証券取引所の「マザーズ」が一歩先んじ、日米連合の「ナスダック・ジャパン」も来年中の開設に向けて準備中だ。企業と投資家への利便性をどれだけ高められるかが、市場間競争での優勝劣敗のカギを握る。
マザーズの上場基準は、極めて緩やかだ。審査は、企業の事業計画をもとにした成長性に重点を置く。赤字や債務超過であっても、過去の業績や資本規模の大小などは問わない。
従来は二カ月以上かかっていた上場申請から承認までの審査期間も、大幅に短縮した。先月十一日の市場開設時に申請したインターネット総合研究所など情報関連二社の上場が一週間後には承認され、今月二十二日に取引が始まる「スピード上場」だ。
政府は先の経済新生対策に、五年後に年間開業企業数を現在の十四万社から二十四万社に増やす目標を盛り込んだ。情報通信やバイオなど先端産業の担い手となるベンチャー企業を生み育てるには、起業家の資金調達を支える新市場の役割が重要である。
全米証券業協会(NASD)とソフトバンクが組むナスダック・ジャパンも、大阪証券取引所との提携交渉が大詰めを迎えた。来年中には、日本証券業協会が運営する店頭株式市場を含め成長企業を取り込む争奪戦が展開されそうだ。国際化や情報化に対応した市場間の競争を歓迎したい。
しかし、企業にとって使い勝手がよければ、市場が活性化するわけではない。市場の成功には、企業の情報開示に加えて、株主資本の効率的な運用で収益につなげていくことが基本だ。また、自己責任でリスクが取れる投資家層の存在が不可欠である。
マザーズは、四半期の業績開示や会社説明会の開催を義務づけた。よちよち歩きの企業は玉石混交だ。約五千社が株式公開する米店頭市場のナスダックでは、毎年五百社近くが登録し、約四百社が姿を消す。株式の引き受け、販売を請け負う証券会社には、審査能力が厳しく問われよう。
同時に、市場を管理・運営する取引所や証券業協会の責任も重い。企業と投資家を市場に呼び込み、流動性(流通する株式の量)を高めていくには、明確な自主ルールづくりとチェック機能の強化、公正な価格形成が必要だ。より高度な電子取引に備える情報技術(IT)投資も求められる。
新市場から次代を担う「金の卵」がどれだけ巣立っていくか。証券市場改革を通じ、起業家と個人投資家をともにはぐくむ環境を整えたい。
主張 若者の無防備な性は危険
【世界エイズデー】
十二月一日の世界エイズデーには、各国とも赤いリボンで亡くなった人を追悼している。日本でもすでに千人以上が死亡し、約五千人がエイズウイルス(HIV)に感染した。とくに最近は国民の警戒心が薄れ、若い女性の感染が目立つ。慎重に行動する自制心と検査を受ける覚悟が必要だ。
昨年の新たな患者・感染者数は六百五十人で史上最高を記録し、近畿地方が大幅に増加した。しかも報告された数は氷山の一角にすぎない。
とくに心配なのは、二十代の女性が増えていることだ。無防備に不特定多数を相手にする性の乱れと、検査を受けない無責任な行動が、淋病など性感染症の急増を招き、エイズの蔓延(まんえん)に拍車をかけている。
もっと若い高校三年の女子も、東京都の場合は四割近くがすでに性交渉を経験し、うち八割は避妊していない。高校の性教育を強化すべきだ。若い女性の感染は本人だけにとどまらず、母子感染の危険が大きい。
一方、保健所の無料・匿名検査を受けた人は、平成四年に十三万六千人だったが、昨年は五万三千人に落ち込んだ。それでも保健所の検査で判明する感染者は急増して年間百人を超える。
若者は保健所の堅苦しい雰囲気を敬遠するようだが、東京都南新宿検査相談室のように、夜八時まで受け付け、入りやすい施設もある。逆に検査目的で献血する不心得者が後を絶たず、毎年五十人以上が感染者と判明している。潜伏期間の献血を通じて手術を受けた患者に感染するケースも出てきた。このため、輸血を受けて不安な人は今年度中に限り病院でも無料の検査を受けられる。
患者・感染者に対する支援も次第に充実してきた。免疫力が低下して通常の就労が困難な場合、診断書を添えて市町村に申し込めば、障害者(一−四級)認定を受けられる。これにより、高額な医療費の大半が国庫負担になり、ホームヘルプサービスや短期入所(ショートステイ)の利用、所得税の控除、運賃の割引などの援助を受けられるようになった。
治療法も進歩し、三種類の薬を組み合わせて投与するカクテル療法が効果を上げ、欧米では死亡数がやや減少してきた。日本も新薬を迅速に承認し、カクテル療法が普及している。最先端の治療を行うエイズ治療・研究開発センターもできた。高度の医療を受け、日常生活を自己管理すれば、必ずしも死に至る病ではなくなりつつある。
それにしても、予防に勝る対策はない。無節操な行動を慎み、心配な場合は必ず検査を受けてほしい。