99/12/9
主張 「九九」は家庭でも教えよう

【数学離れ】
 数学嫌いの中学生が半数を超え、理科嫌いも半数近くに達していることが文部省の調査で分かった。大学生の学力低下とも絡み、科学技術立国・日本の将来を揺るがす深刻な問題であるといわなくてはならない。

 これは、国際教育到達度評価学会(IEA)が数年ごとに行っている数学・理科の平均学力の国際比較に向けた国内調査である。各国のデータが出そろうのは来年末だが、前回調査(一九九五年=平成七年)で世界で中程度の位置にあった日本の中学生の数学・理科への興味・関心度は、さらに順位を下げるものとみられる。

 数学・理科の共通問題の成績は、世界三位だった前回とほぼ同水準で、文部省は「統計上の差はない」と楽観している。しかし、教育立国を目指すシンガポールや韓国、基礎学力の底上げに力を入れる米国や英国などが力をつけてきている。また、最近、日本の小学校で算数嫌いによる学級崩壊が起きていることを考えると、「将来は危うい」といわなければならない。

 まず、学校の先生の力量を高める必要がある。以前、本紙の「理科離れ」をテーマにした連載で、関西の私立女子大の教員養成課程では、かなりの学生が小学校低学年の問題も解けない現実が明らかになった。そのまま先生になって小学校の教壇に立ったのでは、どうしようもない。先生自身が基礎学力を身につける必要があり、そのための教員評価と再教育が求められる。

 教え方の秘けつは、基礎・基本を反復して覚え、理解させることであろう。文部省は「公式や定理の詰め込み教育が数学・理科嫌いに拍車をかけている」というが、これは一部の教育現場に迎合した一面的な見方である。公式や定理を理解せずに、どうして次へ進めるのか。基礎・基本は嫌でもマスターし、分かれば好きになるものだ。それが学問である。

 もちろん、「詰め込み」だけではいけない。実験や自然観察を授業に取り入れ、子供たちが心底から科学に興味を感じるような工夫が必要だ。ときには、江戸時代の和算の大家、関孝和やエレキテルを発明した平賀源内らの偉業を話して聞かせるのもよい。

 また、数学は簡単な知識から順を追って難しいことを学ぶ“積み木”のような学問である。児童、生徒が途中で脱落しないような配慮も必要だ。

 学校だけでなく家庭の支援も大切である。だれでも「九九」や加減乗除の計算くらいは教えることができるだろう。理数教育は最初が肝要である。子供と一緒に風呂に入るなどして「九九」だけは反復練習させてほしい。