平成 11年 (1999) 12月23日[木] 友引

主張 犠牲を安全対策に生かせ

【被ばく死者】
 茨城県東海村の核燃料加工会社「ジェー・シー・オー(JCO)」東海事業所で起きた臨界事故で、大量の放射線(中性子線)を被ばくした作業員、大内久さん(三五)が亡くなった。わが国の原子力施設では初めての放射線による犠牲者である。

 原因調査が進むにつれて明らかになったJCOの無責任さ、作業手順のでたらめさは目を覆うばかりだが、大内さんを含む三人の被ばくした作業員は、ウランの危険性も臨界の意味も十分に知らされずに作業をしていて事故にあった。大内さんの死を悼むとともに、尊い犠牲を無駄にしないためにも、JCO上層部の刑事責任を明確にし、今後の原子力関連作業現場での事故防止の教訓にすべきだ。

 大内さんの死で懸念されるのは「だからいわぬことではない」とばかりに原子力発電反対勢力やメディアがまた声を大にすることだ。われわれは、事故直後から「事故を原発否定の口実にさせるな」と主張してきたが、事故原因がはっきりするにつれてますますその思いを強くしている。しかし実際には、今年中に地元と協議を始める予定だった東京電力・柏崎刈羽原発のプルサーマル導入計画が新潟県知事から「早期実施は無理」との申し入れを受けて一年延期された。また中国電力・島根原発3号機と北海道電力・泊原発3号機の増設についての電源開発調整審議会(電調審)の審議が開かれていないなどの悪影響が出ている。

 わが国は一昨年京都で開かれたCOP3(地球温暖化防止第三回会議)で九〇年比六%(実質一五%)の二酸化炭素(CO2)削減を約束した。一年後には原子力発電のシェアが少し上がったために年間排出量がわずかに下がったが、目標にはほど遠い数値だ。

 わが国のCO2総排出量の二三%は火力発電からなので、極論すれば火力を風力、太陽光に転換すれば、それだけで目標は達成できる。だが、発電の五九・六%を占める化石燃料の火力発電を自然エネルギーに置き換えることは、金をいくらつぎ込んでも地勢上不可能だ(ちなみに現在のシェアは〇・四%、米国では二〇一〇年までに五・五%にするのが目標)。それならCO2をまったく出さない原子力発電をもう少し増やそう、という考えが中央環境審議会などでなぜでてこないのか、不思議でならない。

 ところが同審議会では、むしろ臨界事故を契機に原子力発電廃止の意見すらでている。省エネも新エネルギーも大事だが、もう少し地についた議論をしない限り、CO2削減の国際公約が果たせないのは目に見えている。