◆1月6日付・読売社説

 【新時代に挑む】

 ◇生きがい感じる超高齢社会に◇

 [いびつな「人口ピラミッド」]

 二〇〇〇年代、わが国は超高齢・少子社会が本格化するとともに、人口が減少に転じるという、いまだかつて経験したことのない時代に突入する。

 図は、一九九五年と二〇五〇年の日本の人口ピラミッドを重ね合わせたものだ。国立社会保障・人口問題研究所が一九九七年に推計した「将来人口」をもとに作成したが、ピラミッドの推移は、わが国の人口構成がいかにいびつになっていくかを端的に示している。

 九五年時点でみると、五十歳直前で大きく膨らんでいるのが第一次ベビーブーム世代。さらに、二十歳代前半でもう一つの団塊を形成しているのが、その子供たちにあたる第二次ベビーブーム世代だ。

 だが、その後の世代は急激に減少しており、人口構造は、ピラミッド型とは程遠い不安定な“花瓶型”に移行していく。

 二〇二五年ころには、六十五歳以上の人口の構成比である高齢化率が27・4%と、四人に一人は高齢者という社会が現出する。二〇五〇年にはさらに進んで32・3%で、三人に一人が高齢者という社会だ。

 さらに推計は、少子化に伴って日本の人口は二〇〇七年の約一億二千七百七十万人をピークに減少に転じると予測している。だが、少子化は、推計時の予想をはるかに上回る速度で進行しており、人口が減少に転じるのも早まりそうだ。

 [現行制度では支え切れない]

 そうした中で、年金、医療、介護といった高齢者を取り巻く各種社会保障制度は、大きな曲がり角に立たされている。“先細り”の現役世代で、“多数派”の高齢者を支えきれなくなるのは明白だからだ。

 しかも、現在のわが国の社会保障制度は福祉先進国に比べて高齢者に偏っている。社会保障給付費の64%が高齢者関係に充てられており、全国民平均の年間受給額が五十四万円なのに対し、高齢者一人当たりの受給額は二百三十万円にのぼる。

 給付が高齢者中心になるのはある意味で当然だが、教育費や住宅費など金のかかる子育て世代への再配分所得の低さを考えると、世代間の不公平も無視できない。

 将来にわたる高負担への嫌気や制度への不信から、若年世代に「年金離れ」も起きている。医療保険制度も、高齢者医療制度への拠出金負担で保険財政は悪化の一途をたどっている。超高齢・少子社会の本番はこれからだというのに、である。

 制度をこのまま放置すれば、高齢者の増加にともなって、社会保険料負担はさらに重くなる。現役世代にだけ負担を求める制度では早晩行き詰まるだろう。

 高齢者にも応分の負担を求めなければ、制度自体が崩壊しかねない。

 [広く薄く負担を求めるには]

 もちろん、生活手段のないお年寄りや低所得層にまで負担を求めるのは酷だ。働く意欲のある人には働く場を確保して、“支える側”に回ってもらうのだ。適度な労働と社会参加は、老後の生きがいにもつながり、人口減の社会を活性化させる。

 さらに、財源対策の一つとして、消費税を福祉目的税化し、広く、薄く負担を求めていかざるをえない。その際、食料品などの生活必需品については、税率を軽減するなどの対策も必要だろう。

 社会保障を全額、税によって賄おうという主張がある。しかし、税に依存すれば、「負担と給付」の関係があいまいになり、安易な給付や無駄な給付が横行して財政を悪化させると同時に、モラルハザードを引き起こす恐れもある。

 公平で効率的な給付のためには、相互扶助の社会保険方式を残すことが必要だと考える。

 また、全額税方式では、将来、極めて高い税率を課すことになり、社会の活力を奪うことにもなりかねない。

 高齢者にも保険料負担を求め、利用者には一割自己負担を求めるという介護保険制度は、これからの社会保障の一つの在り方を示していた。

 さらには、市町村を運営主体にすることで、提供するサービス内容と保険料との間に“緊張関係”を持たせ、住民とともに適切な保険制度を模索していくという新たな試みの場でもあったはずだ。

 [改革の先送りは許されない]

 それを、選挙に不利に働くのではないかという思惑から、与党三党は、高齢者からの保険料徴収を半年間猶予した上に、さらに一年間、半額徴収にとどめる特別対策を打ち出し、制度の理念を骨抜きにしてしまった。その穴埋め財源は、将来へのツケ回しである赤字国債だ。

 毎年一兆円規模で増え続ける医療費問題についても、その必要性が叫ばれていたにもかかわらず、抜本改革を行わないまま、診療報酬の引き上げだけが行われた。

 目先の選挙対策でしか物事を考えられない政治では、社会保障制度の再構築は困難だ。そんな政治の現状が、さらに「将来不安」をかきたてる。

 これ以上、問題の先送りを繰り返すことは許されない。

 超高齢・少子社会を乗り切る総合的な社会保障ビジョンを示し、必要な負担増については、国民を説得する気概を持つことが今、政治に求められている。

(1月6日8:50) Copyright 1999 The Yomiuri Shimbun