西暦二〇〇〇年まであと五か月。全国で使用中のコンピューターが「二〇〇〇年」の下二けたを読み間違って誤作動を起こし国民生活にまで影響を与えかねないという二〇〇〇年問題が目前に迫っている。
この問題への対応に、政府の高度情報通信社会推進本部(本部長・小渕首相)がアクセルを踏み込んだ。
古川内閣官房副長官を議長とする総合対策会議を先週末に設置し、強力な総合調整機能を持たせた。誤作動によるトラブルの未然防止へ官民の対応を徹底するとともにトラブル発生に備えた国や地方自治体、民間の危機管理体制の確立を目指す。
六月末現在で推進本部がまとめた対応状況をみると、中央省庁や、民間主要分野のうち金融、情報通信、交通、エネルギーなどの大手企業は、重要なシステムの修正や模擬テストなどをほぼ終えた。万一のトラブル発生に備えた要員配置など危機管理計画の策定も完了しつつある。
だが、主要分野でも医療機関や医療機器メーカーの対応は、まだ十分とは言えず、各分野の中小企業や、地方自治体でも、市区町村に遅れが目立つ。
誤作動は、個人や企業の日常活動に影響を与えるだけでなく、対応を誤れば社会的なパニックを起こし、回復の兆しが見え始めた日本経済にも打撃となりかねない。
総合対策会議は、推進本部のもとで、政府自身の危機管理体制に万全を期すとともに、対応が遅れた分野に重点を置いて、システムの修正や危機管理計画の策定を徹底していく必要がある。
医療機関の場合、救命救急センターや災害拠点病院など、都道府県が重点医療機関に定めた全国二千強だけをみても、六月末までに医療機器や医療情報システムの修正と模擬テストを終えた病院は二割。危機管理計画も策定済みは一割に満たない。
住民の日常生活と密接な関係を持つ市区町村も、消防、救急を含むシステムの修正と模擬テストを終えたのは全体の半分。危機管理計画の策定完了は一割のみだ。
家電から運輸、通信、環境関連まで幅広い機器に埋め込まれたマイコン・チップのチェックも安心できる状態には遠い。
通産省が全国の関連メーカー三千社強を対象に実施した六月末現在の調査では、大半の業者が「ユーザーへの情報提供や改修など支援体制を徹底している」と答えたものの、回答率は五割強でしかなかった。
危機回避には、国際的な協力も欠かせない。日米欧など主要八か国は、六月のケルン・サミット(主要国首脳会議)で、二〇〇〇年問題が世界に与える影響を最小限に抑えるための協力を確認し、非常時への対応について特別会議の開催を決めた。
世界百六十一か国を対象にした米国務省の最新の調査によると、新興市場国や開発途上国を中心に、約半数の国々で対応が遅れ、電気通信、エネルギー、運輸などの部門でリスクを抱えている。
危機の連鎖が世界を巻き込むことのないように、国際的なトラブル発生回避、危機管理体制の確立を急がねばならない。
(8月3日8:09)
Copyright 1999 The Yomiuri Shimbun