やはり、というべきだろうか。医療保険制度の抜本改革の柱の一つとして検討されていた薬価制度の見直し案が、自民党の医療基本問題調査会・社会部会合同会議で白紙撤回された。
厚相の諮問機関、医療保険福祉審議会がさる一月にまとめた薬価の「参照価格制」導入案の撤回である。
現行の薬価基準制度は、医療機関に薬価差益をもたらし、それが薬を大量に投与する「薬漬け医療」につながっていると指摘されてきた。これに対し、参照価格制は、成分や薬効によって薬をグループ分けし、グループごとに保険で支払う上限価格(給付基準額)を決め、これを超える高価格の薬を選んで使った場合は、超過額は患者の自己負担とする制度だ。
患者と医療機関双方に、薬に対するコスト意識を持ってもらい、薬剤費の面から増えつづける医療費を抑えようというねらいだ。特に多くの薬が処方されている高齢者医療の現状を意識した制度といえる。
しかし、この案が出された直後から、日本医師会や製薬業界が「患者の負担増につながる」「多額の研究開発費をかけた高価な薬が使われなくなる」などとして強く反発。自民党は、こうした声に配慮して法案化する作業を事実上棚上げしてきた。
そもそも、この参照価格制の導入案は二年前、当時の与党、自民、社民、さきがけの三党がまとめた「21世紀の国民医療―良質な医療と皆保険制度確保への指針」と題した医療保険制度改革案の中に、はっきりと盛り込まれていたものだ。
三党案は、医療保険制度改革にあたっての基本的な考え方として「医療費は増大の一途をたどっており、このまま放置すれば二十一世紀初頭には保険制度が破たんしかねない」とまで指摘していた。
そうした危機感の中でまとめたはずの改革プログラムを、自民党自らが白紙撤回した責任は極めて重い。
自民党は、五月の連休明けにも代案をまとめるとしているが、小手先の制度改変では断じてすまされない。多くの保険組合が財政赤字にあえぎ、企業の健保組合の中には自主解散して、政管健保に移管しようというところも出てきている。その政管健保だって大幅赤字なのだ。
早急に抜本改革を行い医療費の抑制に努めなければ、医療保険制度の維持は困難であることを改めて認識すべきである。
医療保険制度改革には、薬価制度改革のほかにも、診療報酬体系、医療提供体制の各見直しと、高齢者保険制度問題の三つの大きな柱がある。
その中で先頭を切っていた薬価制度改革がとん挫したことで、後に続くはずの改革の雲行きもあやしくなってきた。
三党案は、抜本改革の実施時期を「二〇〇〇年度を目途とし、可能なものからできる限り速やかに」としている。
国民に対する約束は当然守らなければならない。残された時間はあまりない。
自民党は医療保険制度改革の基本理念にそった改革案を早急に示す責任がある。
(4月15日8:56)
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