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<2002年のみちこの句> |
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☆ 新年会(兼題:去年今年、悴む、寒月) 棄てきれぬ夢なほ多し去年今年 初句会名句生まるる夢の中 手をとれば悴みをりぬ酩酊夫 悴みてここはソウルのど真ん中 初舞台滲む涙の「あ・うん}かな ☆ 二月勉強会 (兼題:熱燗、その他) 熱燗を酌めば老父は饒舌に (亡父との思い出) 熱燗やちびりちびりと父娘なる ブランチのバゲットかじる春隣り ☆ 二月句会:嘱目 半月の梢にかかる余寒かな 春めきてことに姦し薮雀 もの言はずしばし惜しめり春夕陽 ☆ 三月吟行地:ウオーカーヒルとその周辺 たおやかに芽柳揺れて風のなか 握る手の温もり嬉し木の芽風 黄沙晴れ大漢江に風渡る ☆ 七月勉強会 少し照れ 「Be the Reds」 の夏を着る やはらかき雨の匂ひや夏木立 頑なに歩くは暑き街の中 ☆ 七月吟行地:ソウル歴史博物館 古時計止まりしままの酷暑かな 涼しさや硝子の中の古書の文字 五枚羽すこし曲りし扇風機 ☆ 九月勉強会 窓枠の中が絵になる朝の秋 ブラームス聴き惚れなほす夜半の秋 「里の秋」歌ひて暮れし山の秋 ☆ 九月合宿吟行地:バスにて雪岳山・束草 おはようの声も爽やかバスの旅 朝立ちの旅や漢江秋意満つ 山肌に朝日映ゆるや今朝の秋 詩心を波に遊ばせ秋の海 秋夕(しゅうせき)や星に灯ともる海の町 句の友の寄贈瓦や寺の秋 潮騒に九月の海のことば聞く 「幸福」(ヘンボク)という名の漁船秋日中 鈍(にび)色に海原光る秋気かな ☆ 十月勉強会 秋霖や漁火消ゆる夜明け前 身に沁むや酔ふて恥かく旅の宿 やや寒や星に灯点る夕まぐれ ☆ 十月吟行地:国立科学博物館・昌慶宮 漣(さざなみ)の立ちて湖畔の秋気澄む 秋さぶや雨のち晴の空青し 太陽の化身となるや赤もみぢ ☆ 十一月勉強会 部屋に灯を点し人待つ暮の秋 ひんがしに二十三夜の月の舟 降り止みて宵の路面の暮秋なる ☆ 十一月吟行地:ソウル競馬場 藁匂ふ厩舎(うまや)の午後の冬ぬくし 馬の吐く息の温さや冬厩舎 小春日や黒光りする馬の尻 ☆ 十二月句会 (兼題:韓国の季語;オンドル、氷板キルなど) オンドルに馴染み過ぎたる異邦人 オンドルや故里だんだん遠くなる オンドルやアボジオモニの恋し夜 (韓国語でアボジは父、オモニは母のこと) 越え来しは氷板キルの峠なる (氷板キルはピンパンキルと読む、凍った道のこと) パッジュクを食べてアリラン聴きに行く (パッジュクは小豆粥のこと) < 2002年、その他諸々の句 > 淡雪や言葉少なに酒を酌む 酒好きの人と惜しめり春夕日 残照に染まる磯辺の春の雪 リンゲルの音無く落つる日永かな (三月上旬、可楽入院中の病室で) ひと捌けの雲浮かびたる木の芽晴 日長閑や光溢るる大漢江 木漏れ日のこの道が好きバラ薫る 万緑や指の先まで夫婦なる 紫陽花や昔の恋の一途なる つばくらめ来てよ病の夫癒えむ 薄衣(うすぎぬ)をまとひて吾も女なる 今生の旅の終わりも夕焼けて 中天に海月のごとく夏の月 赤シャツで笑って泣いて六月尽 (ワールドサッカーを応援して) 韓半島ビーザレッド(Be the reds!)で夏燃ゆる 街の灯の河面に揺れて遠花火 ガスパッチョ硝子の鉢で涼を呼ぶ (ガスパッチョはスペインの冷たいスープ) 永東橋(ヨンドンキョウ)渡るよ右は虹の橋 暮れなずむ西空今日もトマト色 無口なる男の料理初秋刀魚 (石川信一郎君の手料理) 初秋刀魚刺身におろす手際良さ 野花摘む山の湖畔の朝の秋 水引や富士の頭は雲の中 秋時雨峠越へれば海の町 どんぐりを五つ拾ひて父母の墓 (義父母の墓参り、韓国の墓地は山にあることが多い) 夕星(ゆうづつ)や稜線淡き紅葉山 言の葉のリズムの妙や身に沁みて 冬隣り老眼鏡を二つ買ふ ふたり居てなほ独りなる暮の秋 健やかにあれよと枸杞の実を数ふ 哀しみの底泳ぐごと枯葉踏む 夕なずむ窓辺に冬の鳩一羽 病院は嫌ひと小春日のなか歩む 青空やキーンと寒き街に住む 手渡さる郵便物も凍えをり 冬晴や夕雲染まる西の空 冴え冴えと三日月のある夜更け哉 有明の月薄れ逝く枯山に 聖誕の祈り済ませば今朝の雪 数へ日や赤子抱きし若夫婦 (生まれて丁度三ヶ月の子が我家にやって来た) |