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どきどきの種類


   中洲は、知らないところに行くときは、心配でどきどきするって言っていたけど、さくらは、知らないところに行くのは、ちっとも平気で、楽しみでどきどきする。
 どきどきには、いろんな種類があるらしい。
 それで、別に迷うのが好きなわけじゃないんだけど、さくらはいろんなものを見ているうちに、道が行方不明になっちゃって、知らないところに行っちゃうことがたくさんある。迷子になる。実は、今日も迷子になって、さっきから誰も通らなくて、ちょっと困っている……。
 誰も通らないと、道が聞けない。道を教えてもらえないと、おうちに帰るには「いんふぉうえぶ」の門を通らないとに帰れない。
「あ、さくらだ」
 知ってる声がした。
「どうしたの?」
 向こうの方から、ミニウサギが来た。みゆさんちのしまいすだった。
 助かった。
「しまいすっ。しまいすっ。さくらのおうちどっちの方へ行ったらいいかわかる?」
 しまいすは、何度かウチに遊びに来たことがあるから、おうちがどっちなのか、知っているみたいだった。みみを、ぴんってのばした。なんか、探査機みたいで、ちょっとかっこいい。
「あっちだけど……急いで帰るの?」
「違うよ。道を忘れちゃっただけだよ」
 しまいすは、「くまとも」の出身で、不思議なことばも使える。それも、おんなじ日本語らしいけど、さくらにはよくわからない。だけど、どことなくナツカシイ感じのすることばなの。変なのって、さくらも思うんだけど、そういうもんかもしれない。
「そうだ! さくらを良かところに連れていったあげる」
 しまいすは、くすくすって笑った。
 そうして、「いんふぉうえぶ」とは違う方向にぴょんぴょん跳ね出した。ウサギは、みんなはねるのが上手なんだ。さくらも、あわててしまいすの後を追いかけた。しまいすはうれしそうにはねているので、さくらもうれしくなってきた。
 どこへ行くのかな?
 きっと楽しいところに行くんだろうなって思ったのに、しまいすは、古くて大きい建物の中に入っていった。コムズカシソウなところだなーって思ったけど、さくらもその中に入った。
「わっ」
 中は、いろんな色でいっぱいだった。かべがみんな色の付いたガラスでできていて、それが絵になっていた。女の人があかちゃんを抱いている絵が一番大きかった。
 まんなかに変な形の×(バツ)がある。
 きれいすぎて、さくらは口を開けたまま、上とか、かべとかを見てた。
「ステンドグラスって言うんだって。きれいでしょ?しまいすもこの間発見したんだ!でもこれだけじゃないんだよ。もうじき始まるから、すみっこに行こう」
 しばらくしたら、たくさんの人が入ってきて、そしてお歌を歌い始めた。海の向こうの国のことばで、意味はちっともわかんなかったのに、どきどきした。
 どうしてだろう。
「ね?ね?すごいでしょ」
 ってしまいすが聴いた。さくらは、とってもどきどきして、なんにも声が出なくなってうんうんってうなずいた。
「しまいすね、いろんな国のいろんなお歌が聴いてみたいって思ったの」
「それを聴いたら、やっぱりおんなじみたいなどきどきがあるのかな」
「もっと、違うどきどきがあるのかも!」
 本当にそうかもしれない。お歌はすごいって思った。未知のどきどきをいっぱい持ってる予感がした。
 いつかさくらも、どきどきできるお歌を歌ってみたい。


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