■謎の洞窟


謎の洞窟。今では遠くから眺めているだけです。
その方が夢が広がって楽しいですものね。
今でもそうかもしれないと思っていることがあります。
何かって?
それは少年の頃の冒険にまつわる話なんです。
冒険といってもロビンソンクルーソーのような本格的なものでなく、せいぜい半径数百メートルほどのごくごく近所のお話なんです。
もったいぶらずに話せって?
わかりました。ではお話しましょう。

実は私の家の近所には盗賊の宝物が隠してある洞窟があるのです。
もっと具体的に場所を教えろって?
そんなこと言えるはずはないじゃないですか。
ましてインターネットで情報を流したら、人が殺到して大変なことになります。
そんなこと言ったって、誰もアクセスしないじゃないかって?
まあまあ、そんなことおっしゃらないで聞いてください。

「遠い忘れ物」でもふれましたが、私は河原を散歩するのが好きで、子供の頃には時間があれば近所の河原を散歩したものです。
ある日、川沿いに歩いていたところ不思議な岩に突き当たりました。
その場所は川の流れが緩やかで、深さを象徴するかのように濃い緑色をしています。
問題の岩はその川面に姿を映していました。
岩はそのまま背後の崖に続いており、その表側には扉と思われる平らな岩が張りついています。
しかもその入口に向かって階段までついていたのです。

これが本で読んだ「アリババと40人の盗賊」の洞窟に違いないと子供心に思いました。
この中には宝物が沢山あるに違いないとも思いました。
そこで覚えていた呪文を高らかに唱えたのです。
「開けごま!!」
これにどんな意味があるのか未だに解らないのですが、一生懸命唱えました。が扉は堅く閉ざしたままです。
扉は古くなって錆付いたのか、あるいは違う呪文が必要なのかもしれないと思いました。
私は思いつくまま様々な言葉をならべてみました。
「う〜や〜た〜!!」(これを知っている貴方は年齢が○○歳以上ですね)
「お前の母さんでべそ!!」
いろいろ叫びましたがそれでもビクリとも動きません。
こうなったら実力行使しかないと思いました。
家に急いで帰るとハンマーやペンチなど、それに木刀まで持って(これに何の意味があったのか未だ思い出せません)急いで岩場に戻りました。
 石の階段を上り入口の前に立ってよく見ると、岩の扉の真ん中に裂け目があります。
「ここを開ければいいんだ。」
早速ハンマーで崩し始めました。
「トントン、カンカン、トンカチ!!」と岩を打つ音が周囲に響きます。
近くでバサバサとキジが飛び立つ気配がしました。
それから2時間程経ったでしょうか。
突然大きな岩がポロっと剥がれ落ちました。
「アッ!!」
何とそこに直径1メートルあまりの穴が出現したのです。
どのくらい深いのかわかりませんが覗き込むと中は真っ暗です。
「ホウホウ」と得体の知れない声まで聞えています。
この中に宝物があるに違いないと思いました。
私は早速穴に入ってみることにしました。
恐る恐る進んで行くと突然顔を目掛けて何かが飛んで来ました。
「キィー!」とそのものは声を発して外に飛び出して行きました。
どうやらコウモリのようです。
尚も進んでいくとブーンブーンと地面に響くような低い音が聞えています。
私は少し怖くなりました。
それと迂闊にも懐中電灯を持って来なかったため、それ以上前に進めなくなってしまったのです。
私は冒険を断念しました。
日を改めて続きを行おうと思い一旦家に帰りました。

家に帰り今日あった一部始終を親に話しましたが、「そんな馬鹿な!」と信じてくれません。
「本当だよ!」と私はなおも食い下がりましたが、一向に埒があきません。
そこで私は友人を誘ってもう一度行くことにしました。

翌日曜日、私は友人を伴って出かけました。
川沿いに歩いて問題の岩に着き早速階段を登りました。
「エッ???」「そんな!!!」私は唖然としました。
何と入口が塞がっているのです。
そこには岩を崩した跡も全く残っていませんでした。
「雨で土砂崩れでもあったのだろうか?」とも思いましたが、ここ一週間雨も降っていません。一体どうなっているのでしょうか。
「何もないじゃあないか!!」友人はすっかり呆れ返っています。
私は泣きたい気持でした。
「確かに入ったのに・・・・・」

話はここまでです。
「遠い忘れ物」でもおわかりのように、この付近には不思議なことがあまりにも多いです。
メタセコイアの化石が発見されたことと何か関係でもあるのでしょうか?
問題の岩は今でもあります。
近くを車で通るたび、その事を思い出すのです。
99/11/5