◆彼岸花の魔力


鮮やかな赤色が印象的な
彼岸花
彼岸花には魔力がある。
小さい頃からそう信じてきた。
彼岸の頃になると突如として現れる。
その現われ方が実に魔法的なのだ。
前日までは確か何もなかったのに、彼岸を迎えようとする朝
田んぼのあぜ道に目を移すと、鮮やかな赤色が目に飛込む。
一体何処に潜んでいたのだろうか?
別名「曼珠沙華(マンジュシャゲ)」と言うが、これは「赤い華」という
意味があるのだそうだ。
その赤い色が実に田んぼに映える。

ところで、この彼岸花は人里だけに生えるという。
それはやはり亡くなった先人達の化身なのであろうか?
恋しさのあまり、彼岸になると花に身を変えて現れるのだろうか。
そう言えば、彼岸花は摘み取ってはならないという。
彼岸花は、あれほど赤色が鮮やかで美しいのに、摘んで花瓶に
さしているのを見たこともない。
これも死者に対する畏敬の念の表われなのであろうか。
私は田舎に育ち、田んぼのあぜ道をよく散歩した。
その際、決して彼岸花と目を合わせなかった。
目を合わせると、彼岸が終わり、彼岸花が枯れたとき、私の魂も黄泉の国へ
連れて行かれてしまう恐怖に駆られていたからだ。
そして、何事もなく彼岸が終わり、彼岸花が枯れるとホッとしたものだ。

今私が住んでいる家の窓からも彼岸花が見える。
既に枯れて茎だけが残っている。
花が咲いていた頃、私はやはり見ようとしなかった。
でも写真に撮る必要から一度だけじっと見つめてみた。
よく見ると実に不思議な形状をしている。
まっすぐ伸びた茎の上にあたかも顔のように花が咲いている。
その姿を見ているとやはり人の化身と思えてくる。
私も将来、一輪の彼岸花となって、何処かのあぜ道に咲くのであろうか。
99/10/16