◆谷川連峰秋深し


魔の山 谷川連峰一の倉





一の倉 案内看板





沢の紅葉
国境の長いトンネルをぬけると雪国であった・・・。小説「雪国」で知られる清水トンネルの上、群馬と新潟の県境にそびえ立っているのが谷川連峰である。
太平洋側と日本海側とを隔てる天候の分岐点のため、気象の変化が激しく、冬には度々登山者を飲み込み、魔の山とも云われる。
 その日、私達は国道17号を北上し、やがて車は沼田市に入った。
沼田市を抜けたところで新潟方面に向かう17号に別れを告げ、国道291号へと進路を変える。
ここは月夜野町。なだらかな丘陵地帯で周辺には小高い山々が見える。
月夜野町・・なんとも響きのよい町名であるが、同町のホームページを拝見すると、平安の昔、京の歌人源順が東国巡行の途中でこの地を訪れたとき、東の三峰山から昇る月を見て「オオよき月よのかな」と詠んだのが町名の由来という。
町名そのまま静かな町で自然が美しい。
 やがて車は水上温泉に到着した。
水上温泉は山間の温泉であるが、町の中央を川が流れ、その渓谷美が温泉湯気と相俟って独特の情緒をかもし出す。
そこから谷川連峰は目と鼻の先だ。
車は山道へと入る。
道を進むにつれ周囲の山々が山肌を赤く染め始める。
15分程行くとロープウェー乗り場に到着する。広い駐車場には観光バスがひしめいている。ここで観光客はロープウェーを利用して天神平展望台に登っていく。
 私達はロープウェーに乗らずに更に車を走らせた。
細い道沿いには老若男女が思い思いの格好で歩きながら紅葉を楽しんでいる。
5〜6分程走らせただろうか、突然視界が開けた。
真っ正面に大きな岩肌がそびえ立っている。ここが一の倉沢だ。
別名「魔の山」という異名をもつこの山は剣のように鋭い山肌を見せていた。日本の三大岩場の名に恥じない堂々とした風貌である。
この岩肌が多くのロッククライマーを魅了してきたのだ。
観光客達も皆一様に息を凝らして見上げていた。
全く距離間が掴めない程の広大さ、あまりに急傾斜の岩肌。
今まで話には聞いていたが聞くと見るでは大違い。
「百聞は一見に如かず」とはまさにこのことだ。
時折吹いてくる山風はヒンヤリと冷たく肌を刺す。その風の中に早くも冬の訪れを感じていた。
 間もなくこの辺一帯は雪に覆われるだろう。
その時この山はどのような表情を見せてくれるのだろうか?
僅かな沢の水音を聴きながら、すでに冬景色に想いを馳せていた。
                               11/08/1998