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アイルが語る、日々暮らしや エピソード。 こんな生活しています。 |
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| +++ 新生活 +++ |
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| この狭いゲージの中で、いったいどの位の月日を過ごしたことになるだろう。 何人もの人が、入れ替わり立ち代り訪れて、可愛いとか、でも家では飼えないとか・・・いろんな事を言いながら去っていった。 しかし、今日に限ってこの人は良く来る。 私の頭をなで回した後、隣のゲージに移動してラブラドールやグレートピレネーズの方へ行くも、再び戻って来て何やら言っている。 やがて難しい顔をしてお店から出て行き、しばらく経つとまた戻ってきた。 そして、いつも私の世話をしてくれているお兄さんとしばらく話し込んだあと、私はゲージから出され、車に乗せられた。 私の座ったのは助手席と言われるところだったようだ。 まだ小さいのに、一人でそこへ座った、いや、座らされた。 後で知ったことだが、どうやら、膝の上に載せた私がおもらしでもしたら困ると、ちょっと警戒したらしい。 車の中で、私の名前も決まった。 アイリッシュ・セターは、アイルランド原産の犬だから「アイル」にしようと。 なんと言う単純さ!! でも、今までは名無しで、このコなんて呼ばれてから、まぁいいとするかな。 そうこうするうちに、何処かに着いたようだ。 これからは、ここがアイルの家だよ、だって。 良く分からないけど、狭いゲージ暮らしから思えば、ここは別世界かもしれない。 |
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| +++ 初めての散歩 +++ |
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| 私は、いつも外で暮らしている。 賑やかなのが大好きなお調子者の私のこと、いつもみんなと一緒に居たいのは関の山だ。 しかし、これからお話をする、私の諸々の遊び心のせいで、それは実現しなかったようなのだ。 私の犬小屋の斜め前に、物置小屋がある。 そこには、私がお散歩に行くときのリードや、その時ご主人さまが必ず携帯する袋、 それより何より、私の一日の内での最大の楽しみ、ドッグフードも大きな袋に入ってしまわれている。 私にとって、そこはまさに宝の家も同然だ。 いつも暇だし、遊びたいし、あそこが開いたらなぁ・・・・そんな気持ちで日々を送っていたら、 何時の間にか私の身体も大きくなっていたらしい。 前足が、何とか扉に届くようになっているではないか! 無我夢中で、何度も扉にアッタクした。 やってみるものだ、扉がするすると右に移動して開いたのだ。 やった! 手当たり次第、手が届くものは全て引きずり出した。 途中で、袋が破れて何かが転がり出てきた。 それは、近くに住むおじいちゃんが丹精したジャガイモのようだった。 たくさんもらったからと、ご主人さまは取りあえず倉庫にしまっておいたらしい。 もちろんそれも、ひとつは口にくわえ、他のは何度も蹴散らして遊んだ。 ドッグフードの袋も、食いちぎってこぼれ出したものは残さずいただき。 一通り遊んで気が済んだ私は、デッキでうとうとしていた。 やや・・・かすかな足音。 そうか、遊びに夢中で気が付かなかったけど、辺りも暗くなってきたし、そろそろ私のご飯の時間だったのだ。 その後私がどうなったか、それはもう言うまでもない、 私はしこたま怒られ、物置小屋には鍵を掛けられてしまった。 それから、何度か物置開けにチャレンジしてみたけれど、私の力でそこは二度と開くことは無かった。 私には、かねてからもうひとつ気になっていたものが有った。 それは、レンガ敷きが途切れた向こうに植えてある、無花果の苗木。 あれを食ちぎりたい、めちゃめちゃにしたい。 私は頑張った、前足に渾身の力を込めて前進する。 少しずつ少ずつ、繋がれたハウスと伴に、無花果に近付いている確実な手ごたえを感じた。 OK!届いた! 葉っぱは全て食いちぎり、心ゆくまでたわむれた、これで気が済んだ。 今でもご主人さまは言うのだ。 あの無花果が育っていたなら、今頃いくつの実を付けただろう・・と。 そうそう、こんなことも有った・・・ あの晩、暇を持て余した私は、ジャンプしたり通りすがりの散歩中の犬に吠え付いてみたり、ひとり時間を潰していた。 やがて、垣根の向こうにこちらの様子を窺っているネコの姿を発見。 ネコという生き物は、私がひと睨みしたり吠え付いたりすると、、逃げる素振りは見せるのも束の間、 数歩進むと立ち止まり、もういいでしょ?とでも言いたげ振り返り再び座り込む、その仕草が、 何だか馬鹿にされたような気がしていまいましいのだ。 私は、鎖に繋がれいてる事も忘れ思わず駆け寄ろうとした。 すると、ガツンとした強い衝撃を首に感じた直後、なんと自由の身になれたのだ。 やった! ネコは何処かへ行ってしまったが、もうそんなことはどうだっていい。 いつもは行けない庭に回ってみたら、ご主人さまの匂いのするサンダルを見つけた、取り合えずくわえてと。 花壇も掘らなければなるまい! まだまだやることはたくさん有るのに、ご主人さまのアイル〜と、呼ぶ声に思わず駆け寄ってしまった私。 束の間の、自由だった。 どうやら、歩く時ガチャガチャと鳴る鎖の音で、私の脱走が感付かれてしまったようだ。 私の、日頃からの引っ張りのせいで、小屋と鎖を繋ぐ留め金が壊れかけていて、 それが、今日ついに壊れてしまったようだとご主人さまは言っていた。 それから、こうも・・・ 「本当にバカ力が有るんだなぁ・・・、ソリを引くといいかもね」 「しかし、脱走しても庭にいたなんて、小心者の犬かもしれないよね」 そうかもしれない・・・ |
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| +++ 私の遊び場 +++ |
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| 私は、いつも外で暮らしている。 賑やかなのが大好きなお調子者の私のこと、いつもみんなと一緒に居たいのは関の山だ。 しかし、これからお話をする、私の諸々の遊び心のせいで、それは実現しなかったようなのだ。 私の犬小屋の斜め前に、物置小屋がある。 そこには、私がお散歩に行くときのリードや、その時ご主人さまが必ず携帯する袋、 それより何より、私の一日の内での最大の楽しみ、ドッグフードも大きな袋に入ってしまわれている。 私にとって、そこはまさに宝の家も同然だ。 いつも暇だし、遊びたいし、あそこが開いたらなぁ・・・・そんな気持ちで日々を送っていたら、 何時の間にか私の身体も大きくなっていたらしい。 前足が、何とか扉に届くようになっているではないか! 無我夢中で、何度も扉にアッタクした。 やってみるものだ、扉がするすると右に移動して開いたのだ。 やった! 手当たり次第、手が届くものは全て引きずり出した。 途中で、袋が破れて何かが転がり出てきた。 それは、近くに住むおじいちゃんが丹精したジャガイモのようだった。 たくさんもらったからと、ご主人さまは取りあえず倉庫にしまっておいたらしい。 もちろんそれも、ひとつは口にくわえ、他のは何度も蹴散らして遊んだ。 ドッグフードの袋も、食いちぎってこぼれ出したものは残さずいただき。 一通り遊んで気が済んだ私は、デッキでうとうとしていた。 やや・・・かすかな足音。 そうか、遊びに夢中で気が付かなかったけど、辺りも暗くなってきたし、そろそろ私のご飯の時間だったのだ。 その後私がどうなったか、それはもう言うまでもない、 私はしこたま怒られ、物置小屋には鍵を掛けられてしまった。 それから、何度か物置開けにチャレンジしてみたけれど、私の力でそこは二度と開くことは無かった。 私には、かねてからもうひとつ気になっていたものが有った。 それは、レンガ敷きが途切れた向こうに植えてある、無花果の苗木。 あれを食ちぎりたい、めちゃめちゃにしたい。 私は頑張った、前足に渾身の力を込めて前進する。 少しずつ少ずつ、繋がれたハウスと伴に、無花果に近付いている確実な手ごたえを感じた。 OK!届いた! 葉っぱは全て食いちぎり、心ゆくまでたわむれた、これで気が済んだ。 今でもご主人さまは言うのだ。 あの無花果が育っていたなら、今頃いくつの実を付けただろう・・と。 そうそう、こんなことも有った・・・ あの晩、暇を持て余した私は、ジャンプしたり通りすがりの散歩中の犬に吠え付いてみたり、ひとり時間を潰していた。 やがて、垣根の向こうにこちらの様子を窺っているネコの姿を発見。 ネコという生き物は、私がひと睨みしたり吠え付いたりすると、、逃げる素振りは見せるのも束の間、 数歩進むと立ち止まり、もういいでしょ?とでも言いたげ振り返り再び座り込む、その仕草が、 何だか馬鹿にされたような気がしていまいましいのだ。 私は、鎖に繋がれいてる事も忘れ思わず駆け寄ろうとした。 すると、ガツンとした強い衝撃を首に感じた直後、なんと自由の身になれたのだ。 やった! ネコは何処かへ行ってしまったが、もうそんなことはどうだっていい。 いつもは行けない庭に回ってみたら、ご主人さまの匂いのするサンダルを見つけた、取り合えずくわえてと。 花壇も掘らなければなるまい! まだまだやることはたくさん有るのに、ご主人さまのアイル〜と、呼ぶ声に思わず駆け寄ってしまった私。 束の間の、自由だった。 どうやら、歩く時ガチャガチャと鳴る鎖の音で、私の脱走が感付かれてしまったようだ。 私の、日頃からの引っ張りのせいで、小屋と鎖を繋ぐ留め金が壊れかけていて、 それが、今日ついに壊れてしまったようだとご主人さまは言っていた。 それから、こうも・・・ 「本当にバカ力が有るんだなぁ・・・、ソリを引くといいかもね」 「しかし、脱走しても庭にいたなんて、小心者の犬かもしれないよね」 そうかもしれない・・・ |
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| +++ 臨死体験 +++ |
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| 今日の散歩は、初めてのコースだった。 いつもは何気なく通りすぎてしまう道を、左へと曲がり坂を登って行くという。 初めての道はワクワクするものだ。 はやる気持ち抑えきれず、ついご主人さまを引っ張ってしまう。 みっともない歩き方をするんじゃない、右隣をきちんと付いて来いと、いつもおこられる。 わかっちゃいるけど、すぐに忘れてしまうのだ。 坂道を登って行くと、小高い丘の中腹にうらびれた小さな工場が見えてきた。 どうやら、このところの不況により工場の借主が夜逃げしたらしい、その場所はひどく荒らされていて、 隣に墓地も有り一人で行くと昼間でも怖い。 そんな噂を聞きつけて、ならば行ってみましょうと、好奇心旺盛なご主人さまは思ったに違いない。 しかし、ひとりで行くには怖いし、もし誰かに会っても犬の散歩だと怪しまれることも無いから、私も連れて行ったのだろう。 だがそこで、私こそが本当に怖い経験をしたのだ。 廃工場に着くと、窓ガラスは割れデスクは引っくり返されており、備品は散乱し、噂どうりひどく荒らされた形跡が有った。 二階はもっとひどいと聞かされていたご主人さまは、そこへ登るための外階段へと私を連れて行った。 外階段は、建物の裏側にひっそりと付けられており、その辺りは私の背丈を越える程の草が一面に覆い茂っていた。 しかも、一階は工場になっている為天井が高く、よって階段は長い、普通の家の3階分位の長さは有ったと思う。 おまけにその階段は、赤錆が一面に噴出した、鉄製の踏み板しか無い簡易かつデンジャラスなもの。 踏み板の間の大きな隙間からは下の景色が存分に望まれ、いくら探検が大好きな私でも、躊躇せずにはいられない趣があった。 しかし、ぐんぐんリードを引っ張られるので、仕方無く登り始めたけどやっぱり怖い。 戻ろう・・・と、振り返るともっと怖い、右往左往する私に、ご主人さまの「引っ張るんじゃない、落っこちるじゃないか!」の声。 怖いわ、怒られるわで、パニック状態に陥る私。 その時、私の足から踏み板の感触は突如として消え失せ、強い力で引っ張られる首。 そう、私は2階へのドアを目前にして、踏み板の隙間から脱落、今や命綱代わりとなったリード一本で、 地上約7メートル辺りの上空から釣り下がっていたのだ。 一瞬、何が起こったのか分からなっかた。 必死にもがくも、宙を切る私の両足、それがどの位続いたことだろう、私には永遠とも感じられる長い時間だった。 が、ご主人さまは顔色ひとつ変えず、私をぐいと引き上げると、やれやれと言った表情で頭をひと撫でした。 これは、まるで低レベルな臨死体験だった。 廃墟の工場に遊びに行き、犬死したんじゃシャレにもならない。 |
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| +++ おやつの時間 +++ |
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| 私の食事の時間は夕方だ、どんなに空腹感を覚えようと、その時間が来るのを待つ他無い。 メニューは、毎日お決まりのドッグフードときている。 私が生まれてこの方口にしたことがある食べ物は、これ以外、水入れに張った氷、 ご主人さまが、以前飼っていた犬はこれが大好きだった、 前足で上手に押さえてサクサク食べる姿が可愛かったのだと言って、戯れに与えられたスイカの切れ端くらいだろうか。 世の中には、もっと色々な食べ物があるのらしいことは薄々分かっている。 私が幼少のみぎりの頃、散歩途中の公園で遊んでいた小さな子供が、目の前に投げてくれたビスケットの甘美な味を、 今でも決して忘れる事は無い。 しかしご主人さまときたら、ドッグフード以外の人間の食べ物をむやみに与えると、拾い食いの癖が付きかねないといった、 ペット雑誌に書いてある忠告を真に受けているようなのだ。 そんな私の食生活に、僅かながら変化をもたらしてくれる人が最近現れた。 その、でっぷりと太った中年の女性は、朝やって来る。 最初は、恐々と私に近づきちょっと頭をなでたりする程度だったのだが、 そんな日が何日続くと、やがて小さく千切った干し肉のかけらを差し出すようになった。 その美味しさと言ったら、頭の中が真っ白になるほどだ。 私は、噛むのももどかしく飲み込むと、早くもっとおくれと、思わず情けない声が何度も口を伝ってしまう。 しかしその人は、まだだめ!ほらいい子にして!などと言って、なかなか次をくれないのだ。 私は、ますますエキサイトしてしまう。 そんな私の不審な気配を感じ取ったご主人さまが、一度様子を見に来た事があった。 私が、一心不乱におやつのおねだりをする姿を見つけ、あきれた顔していた。 もはや、ご主人さまなんてどうでも良い、私は美味しいものが食べたいのだ。 |
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| +++ おふろ +++ |
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| ご主人さまが、真冬にもかかわらず短パンとTシャツ、髪を後ろに結わいて現れれると、 私は反射的に小屋の中へと駆け込んでしまう。 何故なら、その後に始まることがありありと予測できるからだ。 小屋の隅で、体勢を低くし上目がちに様子を窺う私の鎖を、有無を言わさぬ強さで引っ張り、 引きずり出された私は抱きかかえられる。 ご主人様は、「どうにかまだ運べる重さね」などど言いながら、私をバスルームに連れて行く。 私は、この部屋の中で、羊よりも従順な振る舞いを強いられるのだ。 全身にシャワーのお湯を掛けられた時は、驚いたがまだ我慢が出来た。 シャンプーを顔に塗りたくられた時、泡が目に染みて思わず低い唸り声を上げそうなった。 しかし、その声が喉まで出かかり、まだ声にはならない瞬間に、私は殴られた。 水を含んで重くなった身体を振るわせると、まだだめだ!と言って、首をつかまれ押さえ込まれる。 こうされると、私は身動きがとれなくなるのだ。 さて、後は拭くだけと、布切れを身体に巻きつけられた時、新しいおもちゃをもらったのかと、 思い切りじゃれついて遊ぼうとして怒られた。 私は、この布に身を任せていれば良かったようだ。 ここでは、なすがままにされているのが得策だと、私は学んだ。 しかし、この部屋での時間にじっと耐えていると、その後散歩に連れて行ってもらえる。 楽有れば苦有り。 人生に必要なことは、すべて風呂場で学んだ・・・と、言えるかもしれない。 |
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| +++ 散歩 +++ |
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| 私は、今や散歩が大好きだ。 まだ、世の中のことを余り知らない小さな頃、風に舞う落ち葉を生き物だと思い、 鳥獣犬だった祖先の血が騒ぎ追いかけた事もあった。 信号が赤に変わって走り出すバイクに、付いて行こうとダッシュして怒られたことも度々だった。 地面に有った小さな水溜りが、とても気になり触れてみたら、それは車止めの柵を差し込むために小さく深く開けられた穴で、 右前足が、いきなりすっぽり30センチ近くもはまり込んでしまい、ご主人さまに大笑いされたことも有った。 表目に落ち葉が載っていてよく分からなかったのだ、うかつだった。 今では、そんな過ちを犯すことも無く、日々の散歩を楽しんでいる。 それにしても、散歩の途中で出くわす人間が、私を見つけて先ず口にする言葉は、決まって「大きいわんちゃんだね」だ。 なんと言われても、私は基本的に人間が大好きだ。 それが、赤ちゃんでも老人でも誰でもかまわない、遊んでくれるなら大歓迎である。 だから私は、人間を見つけると、有りっ丈の思いを込めて尻尾を振り接近しようと試みる。 しかし、ご主人さまは、そんな私の姿をあまり喜んではいないようである。 出会いの嬉しさに、見ず知らずの人に駆け寄り手を差し出そうとする私を、いつも決まって阻止しようとするのだ。 大きな犬に、なめたり飛び付かれたりすると、きっと迷惑に違いないよ・・・と、ぶつぶつ言いながら。 私は、走るのが得意だ。 散歩道の途中には、道路は出来ているが、まだ車を通していない道が有り、そんな所では時々リードを外してもらえる。 この前は、ご主人さまと競走をした、楽勝である、私は全力で走っていないのに、軽く追い越してしまった。 簡単に勝てる勝負はつまらない。 そんなある日、近くの公園を通りかかると誰も居ない。 ご主人さまは、今なら大丈夫だろうと、私のリードを外した。 嬉しさのあまり、四方八方を飛び回っていると、4、5歳位の子供達が歓声を上げながら公園の中へと駆け込んできた。 大歓迎である! 早速仲間入りしようと、その後に続いたことは言うまでも無い。 ご主人さまは慌てた顔で、「アイル、こっちにおいで!」と叫んでいる、私は聞く耳を持たなかった。 今、お友達を見つけたばかりなのだ。 しかし、楽しそうに走っていた子供達中で、一番小さいと思われる子供の声はすぐさま泣き声へと変わっていった。 他の子供達は、大丈夫だよ、怖くないよ、などと慰めている。 どうもおかしい、私のせいなのだろうか・・・ 一緒に遊べると思ったのに、一緒に遊びたかっただけだったのに。 ご主人様は、切羽詰った顔で私を捕まえると公園を後にした。 以来、その公園の近くを通り掛かっても、2度とリードを外してもらえたことは無い。 |
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| +++ 横浜 +++ |
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| 私は、何を隠そう車に乗るのが大好きだ、しかし、車に乗れることはめったに無い。 みんなが出掛けそうな様子を見ると、私の気持ちは弾む。 心の準備はいつでも出来ている、さあ、早くお出かけ用のリードに換えて頂戴。 しかし、そんな期待はいつも決まって裏切られる、車庫から出て行く車の後姿を見つめながら私は吠える。 普段、無駄に吠えては近所迷惑だと戒められている私も、この時ばかりは、落胆の思いを鳴き声に託さずにはいられない。 私はいつもこう叫ぶのだ、また留守番なのかと! しかし、そんな私にも年に数度は車に乗れる日がやってくる。 それは、ご主人さまの実家、横浜へ出掛ける日だ。 そんな日、私は車に飛び乗り、そこでの定位置、助手席の足元にお行儀良く座る。 ここは狭いけど、家でお留守番をしてることを思えば何でもない。 ご主人さまは、「アイルがもう少し大きかったら、この車には乗れなかったね」と、いつも言う。 私の身体が、このサイズで本当に良かった。 横浜の家は、私にとって天国だ。 普段、玄関から離れた、家の脇に置かれた小屋で暮らしている私には、人の出入りは気配でしか知ることが出来ない。 しかし、ここでは玄関の脇に、おじいちゃん手造りの犬小屋がしつらえて有り、私はこの家の関所だ。 おまけに、ご主人さまが留守の時、 私が野良猫を見つけて吠え立てていると、「そうか、お腹がすいたんだね」と、えさを与えてもらえたりもするのだ。 横浜の家にやってきたお客さんが、いつもは居ない私の姿に驚くさまも愉快だ。 また、ここでの散歩も、私の楽しみのひとつである。 小高い丘に、芝生が敷き込んである公園に行った時のこと。 私は、リードを外してもらい、心軽やかに遊んでいた。 程なく、黒いラブラドールが飼い主に連れられやって来た、もっと自由に遊びたかったのに、私は再び繋がれてしまった。 すると、その飼い主はこちらまで来て、何やらご主人さまと話し始めた。 飼い主と伴にやって来た黒ラブは、初めて会ったにもかかわらず、私にとても馴れ馴れしく接近してくる。 身をかわしても、ぴったりと寄り添ってくるのだ。 私は、この犬友達に心がときめくことは無かった、それより、再びリードを離れて自由に走り回りたかったのだ。 しかし、その黒ラブの態度は、私よりもご主人さまの方が気に入らなかったようだ。 そそくさと話を切り上げると、さぁ行くかと、私は公園を出て行く羽目になってしまったのだ。 横浜は、犬の多い街だ。 ご主人さまと、良く通りかかるスーパーの前には、つやつやした毛並みのコリーや、 今お風呂から出て来たばかりですといった、シャンプーの香りを漂わせたゴールデンなどが、 大人しく、飼い主のお買い物が終わるのを待っている。 ご主人さまは、そんな犬を見る度に決まって、「きちんと待っていられる、なんておりこうな犬なんだろうと」うっとりした目をし、 私には、やれやれといった視線を向けるのだ。 私も、以前待たされたことがある、しかし吠え続けてしまったのだ、それに飽きると、植え込みも掘り返した。 そのことを、思い出しているのかもしれない。 そうして、数日間を横浜で過ごすと、家に帰る日がやってくる。 その日は、車に乗り込む数時間前より、私の元から水入れは消える。 私が、車中で粗相をしないようにと、水はお預けになるのだ。 私も、本能の赴くままにしか行動の出来ない犬ゆえ、それは仕方ないかと納得しております。 |
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| +++ 夜の散歩 +++ |
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| その夜、今日はもう散歩も食事も済んだし、これで朝まで何も楽しみは無いと、 いつものようにデッキに横たわりウトウトしていた時、玄関の開く音が聞こえた。 こんな時間に、ご主人さまがやって来ることは滅多に無い。 しかし、鍵が擦れ合いカチャカチャする音もかすかに聞こえてくる、この音が聞こえると私は嬉しい予感にわくわくする。 それは、物置小屋の鍵が付いているキーホルダーを持ち歩く時の音で、 多くの場合、その後餌にありつけたり、散歩に連れて行ってもらえるのだ。 私はすぐに起き上がると、ご主人さまが何かにつけて私に要求する、”お座り”のポーズを早くもとっていた。 こうすると、ご主人さまは機嫌が良く、よしよしいいコだと言って満足の笑みを浮かべる場合が多いのだ。 やはり、嬉しい予感は当たっていた。 今日は、夜の散歩にでも行ってみようかと、お散歩用のリードを物置小屋から取り出したのだ。 リードを付け替えてもらう時も、お座りのポーズを崩してはならない。 「じっとしてないと、全然ちゃんと出来ないよ!」と、ご主人さまはたちまちイライラし始めるからだ。 それが済んでも、すぐさま走り出すようなことをしてはならない、「OK、さぁ行こう」の言葉を聞くまで、 はやる気持ちを精一杯我慢する。 その夜も、OKの声を聞くと同時に大きく前に踏み出した、すると何の抵抗も無く私の身体は前へと進んだ、何処までも。 こんなことは初めてだ、私の心は開放感で満ち溢れ、足は自然に駆け出していた。 しかし、いつもと違う状況に一抹の疑問を感じた私は、ひとたび家に取って返すと、 暗がりに佇んだご主人さまが、アイルおいでと手招きをしていた、とりわけ怒っている様子も無い、私は再び走り出した。 どうやら暗さに手元が狂い、付け替えた筈のリードがきちん止まっておらず、 誤りに気付いた時には、私は既に走り出していたらしいのだが、 私にそんな事情が分かるはずも無い、私は明るいお調子者なのだ。 道端に、鼻腔をくすぐる芳しい匂いの何かが落ちていた、いつもはそんな物にかまっていると強くリードを引っ張られる。 しかし、今日はリードを引っ張る人は居ない、存分に匂いを嗅ぎ、咥えて運ぼうと思ったが、この先散歩の邪魔になるので捨てた。 しばらく行くと仲間の匂いを感じた、時々淋しそうな声で鳴く犬に違いない。 その犬は、いつも入り組んだ通路の奥に居て、声は聞いても姿はほとんど目にしたとは無かった、だから余計に気になっていた。 私は、挨拶でもと思い、そろそろと通路の奥へと進んで行った、この機会に仲良くなっておくのも悪くないかと思ったのだ。 しかし、実際に見たその犬の姿は、白くむくむくとした中型犬で、私の趣味ではなかった。 この時、イメージと実像とのギャップの大きさをを実感した私である。 おまけに、挨拶に来た私に向かってがんがん吠え立てるのだ。 その騒がしさのせいで居場所を勘付かれた私は、迎えに来たご主人さまと一緒に帰途についた。 ご主人さまは、家へと向かう道の途中で「何で私がこんな時間に犬探しをしないといけないの、とか、 はぁー疲れて怒る気もしない、とか、このことは忘れよう」などと言っていたようだ。 |
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