poem


私は、ふと見上げた月に懐かしさを覚えた

遠い昔、野良仕事を終え、牛車の荷台に横たわり眺めた月に良く似てる

しんしんとした風景の中に覗く月に疲れをも忘却させる力を感じた

思えば、草野球に遊ぶ友を横目に野良仕事に向かう己に嫌悪感はなく

日が暮れ、野良仕事から帰る叔父ちゃんに「今からですか?」と問われる言葉を背で聞き畑に向かう

月明かりと耕運機の明かりを頼りの野良仕事

耕運機の放す騒音に会話は聞き取れず、

過ぎてゆく時の流れ
と流れ作業に徹するカンコロ切りとカンコロ干し

親父の罵声も耳に届かず

過ぎて行く事に思いを馳せる

作業の終業に安堵を覚え、疲れ果てた体は荷車に安らぎを求める

あの日、見た月は消えず

今夜の月が、あの時の月と同じと感じられぬ己の存在を寂しく思う

月は微笑を称える

やはり今夜の月はセピア色にかすみ望郷へといざなう

この40年の時の流れは己に何を問う

焼酎のお湯割に酔いを覚え

遠き日々の月に嫌悪を感じる

「東海の小島の磯の白砂に我泣きぬれて蟹と戯る」

啄木の詩だ

今夜の私は啄木そのものになったつもりか

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