作品名:『ペンギンのペンペンちゃん』(6)
           〜 ときめき核兵器 ☆  殺人シェフスペシャル! 〜
  製作  : 98/01/22(12KB)
  作者  : 瞳夢 氏
  形態  : 連載短編(コメディ)


                 ペンギンのペンペンちゃん 第6話

                     ときめき核兵器☆
                      殺人シェフスペシャル!

   1

 ペンペンちゃんの住む島は、南アメリカ大陸西岸の沖合い、四百キロメートルの
場所にある。
 本来は自然保護区にあり、人間がおいそれと近づける場所ではないのであるが…
…。
 そこに近づく一艘の船。赤いボディのホバークラフトである。
 そのホバークラフトは、ポンポンポンというボロっちいエンジン音を立て、時速
四キロくらいで島に近づいてきていた。
「くはぁぁぁ! 最高時速はトテモ速いアルねー!」
 と、男は甲板で大きくのびをした。赤と緑のどんぶり帽子、赤い中華服に黒いズ
ボン。キツネのような目と、ポマードで撫でつけた細ヒゲ。
 どこからどう見ても立派な中国人……に見せかけた日本人であった。言っておく
が、中国にこんな奴はいない。
 胸につけられた、へったくそな字の『ちうごくぢん』と書かれた名札は、日本語
だ。しかも『く』の字は左右逆さまである。
「でも最高時速は、機械に負担をかけるアルね。半分に落とすアルよ」
 船は、時速二キロで航行してた。

   2

 ペンペンちゃんとキョクリュウくんが、海岸を歩いていたときのことである。
「ねぇ、ペンペンちゃ――」
「俺をペンペンちゃんと呼ぶなぁぁぁぁぁぁぁ!!」
『バコン! ぴゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……キラン』
 キョクリュウくんはお星様になった。
「はぁ……はぁ……はぁ……。全く」
「痛いよペンペンちゃん」
「うわぁぁ!」
 ……とまぁ、いつもの会話がなされている、ある日の昼下がりのことだった。
「ペンペンちゃん、いちいち殴ってたら話進まないよ」
「うるせ! だったら無理して進めんな」
「…………」
 キョクリュウくんはレベル3の脱力感を覚えたのち、「それでね、ペンペンちゃ
ん」
「何だよ。言うことねーなら話かけんなよ」
 ペンペンちゃんは鬱陶しそうに答える。
「…………」
 キョクリュウくんはレベル12の脱力感を覚える。
「話があるから話しかけたんじゃない」
「……だったら早く言え!」
「…………。あのね?」
 レベル15。
「ああ……」
「あそこに船が浮かんでるでしょ?」
 キョクリュウくんの指す方を見ると、確かに船が浮かんでいる。
「ああ。それがどうした」
「うん、さっきからずっと動かないんだ。何かあったのかなぁ」
 キョクリュウくんのセリフを聞いたペンペンちゃんは、
「なぁ」
「なに?」
「おめえさぁ、そんなこと、いちいち気にしてるわけ?」
「えー? だって、心配じゃない。もし座礁とかしてたら、助けなきゃ」
「いいんだよ! 助けなくても。人間なんざ、この漫画見て、笑ってるような奴ら
ばっかりなんだから!」
「漫画じゃないよ。小説だよ」
「どっちでもいいだろ!」
「全然違う気がするんだけど……」
 ――そのときだった。
 海の中から何かが、浜辺に飛び出した!

  『ざばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!』

「うわぁぁぁ!」
 二人が同時に叫び、ペンペンちゃんはその何かを殴った!
「化け物!」
『バコン! ぴゅうううううううう……ザパーン』
 それは、百メートルくらい向こうまで飛んでいき、海の水の中へ落ちた。
「な……なんだったの? ペンペンちゃん」
 怯えて訊ねるキョクリュウくんに、
「わ……分からねぇ……」
 と同じく怯えて答えるペンペンちゃん。
 しばらくすると、何かが落ちたポイントから、何かがザバザバザバッと泳いでき
た。
「うわぁ! また来たよ!」
『ざばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!』
『ばこん!』
 また飛んでいき、もう一度戻ってくる。
『ざばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!』
『ばこん!』
『ざばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!』
『ばこん!』
『ざばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!』
『ばこん!』
「永久ループにハマってるアルよぉ!」
 五度目の上陸の際、その何かは何か叫んだ。
「あ?」
 そして、それは陸に上がってくる。
「な……なんだおめぇ……」
 とペンペンちゃんが訊ねると、それはこう答えた。
「わたし、四千年の希代と呼ばれた中国料理人、珍 宝孔アルねっ!」
 と、珍と言うらしい中国風の日本人は、明後日の方向に向かって力んだ。
 そして、ペンペンちゃんとキョクリュウくんを、レベル28の脱力感が襲う。
「…………」
「…………」
 二人が黙っていると、
「お客さん、なんか突っ込んでくれないと、わたし悲しいアル」
 言って彼は、救いを求めるような目で二人の目を見た。が、彼らはすかさず目を
そらす。
「……まあいいアル」
 珍は軽く咳払いし、「わたし、この島に新しい食材、探しにきたね。豚の鳴き声
さえ食材にする、このわたしの実力持ってすれば、使えない食材などないねっ!」
 とまたもや力んだ。
「豚の……」
「鳴き声?」
 ペンペンちゃんとキョクリュウくんは、それぞれセリフを割って訊ね返した。
 すると珍は自慢げに胸を反らし、
「そうアル! 中華は豚を、骨の髄まで食材として利用するね。使えないの、鳴き
声だけアルよ。……しかし! このわたし、その鳴き声をスープの食材とすること
に、成功したね! これ成し遂げたの、わたしだけアルよっ!」
 と、明後日の方向に向かって叫ぶ。
「…………」
「…………。まあ、いいけどな、なんでも……」
 脱力レベル34。彼はまだ明後日の方向を見続けている。
「…………」
「…………」
「お客さん、何か突っ込んでくれないと、わたし、次のリアクションできないアル」
「この状況で何を突っ込めっつーんだ……」
 ペンペンちゃんが訊ねると、またもや彼は懇願するような目で、
「豚の鳴き声を何に使ったか、訊いて欲しいアルよ」
 と言う。
 ペンペンちゃんは一瞬困った顔をした後、
「……じゃあ、どうでもいいけど訊いてやる。なんだ」
 すると珍は大きく胸を反らし、
「飲もうとするとブーブー鳴くあるよ」
「…………」
「…………。えーと……」
 二人はレベル100を越える脱力感に飲み込まれ、しばし言葉を失う。
 そののちペンペンちゃんは、キョクリュウくんにこう言った。
「なぁ、こいつと付き合ってると、『人生の浪費』て言葉が身にしみないか?」
「だ、ダメだよペンペンちゃん。あんまりホントのこと言っちゃ」
 キョクリュウくんは、ペンペンちゃんをたしなめる。あんまりフォローになって
ない気もするが。
「…………。そ、そこまで言われると、わたし悲しいアルよ」
 珍は言って肩を落としたが、
「心配するな。お前は落ちてっとこまで落ちてんだから」
 とペンペンちゃんは、それをさらにどん底に叩き落とす。
「…………」
「…………」
 珍はしばらく黙った後、
「今日は新しい食材を捜しに来たアルよ」
 と言った。
「は? あー、そうかい」
 突然の会話の転換についていけず、ペンペンちゃんは曖昧に頷いた。
「…………」
「…………」
「言うことはそれだけアルか?」
「……いや、まぁ……別にどーでもいーことだし……」
「…………」
「…………」
「もっと質問して欲しいアルぅぅぅぅ」
 ペンペンちゃんが白けていると、珍は泣きついてきた。
「……おい、どうする? これ」
 いい加減、ペンペンちゃんがキョクリュウくんに相談する。
「困ったね。読者の脱力レベルが150を超えてるよ」
「……そんなこった、どうだっていいが、話が進まねぇのはいけねえ」
「だったら、無理に進めなきゃいいじゃん」
「…………。そういうわけにもいかねーだろうが? これ、こんままにしとくのか
よ」
「それもそうだね」
 二人の会話を聞いた珍は、
「えらい、言われようアルな……」
 と呟く。
 ペンペンちゃんとキョクリュウくんは、しばらく二人で話し合っていたが、
「よし! こうしよう! お前は何をしたいんだ? 言ってみろ。それがもし、俺
にできることであればやってやる。できなきゃ殴る。これでいいだろ?」
「…………。何でそこで殴らなきゃいけないのか、よく分からないアルが……」
 珍はレベル160くらいの冷や汗をかきつつも、慎重に言葉を選びながら、
「よ、要は簡単なことアルよ。わたし、今までにない食材が欲しいだけアルね。と
言って、生き物を食材にする、これ良くないね」
「ほほう。ギャグ漫画のゲストキャラにしては、まともなこと言ってんじゃねーか」
「ペンペンちゃん、これ漫画じゃなくて小説だよ」
「いいんだよ! どっちでも! うるせーな!」
「よくないよ。こんな小説を漫画だなんて言ったら、漫画家に失礼だよ」
「おまえな……。自分で自分をけなしてどーする」
「……つ、続けていいアルか?」
 二人の会話についていけず、恐る々々訊ねる珍に、
「何だよ! さっさと続けろよ!」
「…………」
 珍は一瞬沈黙し、「じゃあ続けるアル。……食べられる物を食材にする、これは
わたしのモットーに反するね。そこでっっっ!」
「おい、ちょっと待て! おめーは食えねーモンを食材にする気か!」
 すると珍は指を顔の前でチッチッチと動かし、
「甘いアルね。基本アルよ」
「……………………」
「……………………はぁ」
 脱力レベル200。
「いいアルか? ……究極の料理人であるわたし、究極の食材を狙うアルよ! こ
れ、世のことわりね」
 言って彼は、またもや明後日の方向をビシィィィィと指さし、
「その食材とはズバリッッッッ!!!!」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
 次の言葉を待つ二人。
「…………」
「…………」
「…………」
「お客さん、そこで『すばりぃ?』とか何とか、わたしのセリフ、復唱してくれな
いと、話続かないアルよ」
「…………。注文の多い料理人だな、おい」
 ペンペンちゃんはいい加減呆れて、「ほらよ。ずばりぃ?」
 と、いかにも鬱陶しそうに答える。
 珍は多少不満げであったが、それでも次の言葉を続ける。
「ずばり!」
 とここでポーズを変え、「『不良ペンギンの使い古した靴下』アルよっっっ!」
「俺、靴下はいてねーぞ」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
 沈黙レベル1000。
「こんだけ引っ張っといてこーゆーオチかよ……」
 ペンペンちゃんはうんざりと呟いた……。

   3

「甘いアルね」
 不意に珍は、フッフッフッと意味ありげな言葉をあげる。
 時に、おやつどき。ペンペンちゃんとキョクリュウくんと、それからなぜか珍は、
ペンペンちゃんちで、お菓子タイムの真っ最中だったりする。
「?」
 ペンペンちゃんは頭にはてなマークを書きつつ、  「何でおめーがここにいるん
だ?」
 と訊ねる。すると横からキョクリュウくんが、
「僕が呼んだんだよ。なんだか、みじめで可哀想だったから」
 その言葉にペンペンちゃんは明らかにムッとし、
「おめーはどうしてそう、いつもいつも、話を勝手に進めんだよ! 第一話からず
っとじゃねーか!」
「だって、ペンペンちゃんがいると話が進まないんだもの」
「…………」
 それはまぁ、事実ではある。
「あの……。ちょっといいアルか?」
「何だよ!」
 怒った顔で振り返るペンペンちゃんに、珍はビクッと身体を振るわせ、
「あ、あの……。何が甘いのか、訊いてくれない……アルか……?」
「訊いてやらん!」
「…………」
「…………」
「…………」
「ペンペンちゃん、可哀想だよ。訊いてあげようよ」
「あの〜、そう言う風に言われるとよけいみじめになるアルが……」
 キョクリュウくんは珍の呟きは気にせず、
「それで、何が甘いの? 僕、ショートケーキがいいなぁ」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
 脱力レベル2000。
「……お、お前はそーゆーお約束なギャグを言うか……」
「え? 違うの?」
「…………」
「…………」
「…………」
「まあ、いいアル」
 珍が最初に気を持ちなおし、「要は、ペンペンちゃんが靴下をはいていなくても、
わたし、予備の靴下を持ってるって、ことアルね」
「……要は別に俺の靴下でなくても、何でもいいんじゃねーかよ」
「そ……それは言わない約束アルよ」
 珍はその場に立ち上がり、「さぁ! この靴下をはくアルよ!」
 と、いそいそと自分の靴下を脱ぎ始めた。

    ――瞬間!

    ぷぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん…………。

 突然!
「…………っっ!!!!」
 この世の物とは思えない、黄色みを帯び、そして『ぷううん』という音さえ伴っ
た異臭が、二人の鼻に突き刺さる!
「ぐぁぁぁぁっっっ!」
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
 ペンペンちゃんとキョクリュウくんは、それぞれ三万ポイントの物理ダメージを
受け、のたうち回りながら家の外へ飛び出した。
 また、ペンペンちゃんとその周辺の家が、合計六万ポイントの物理ダメージを受
け、ミシッと音を立てる。
「ん? どうしたアルか?」
 急に家から飛び出した二人に疑問を感じた珍は、靴下をブラブラさせたまま、家
の外へ出て来た。
 珍が歩くと、手の中で靴下が揺れるたびに、謎の臭い物質が、靴下からパラパラ
と落ちる。
「うわぁぁ! 待て! 俺に近づくな!」
「何を言ってるアルか。さぁ! この靴下をはくアル!」
「イヤだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 言ってペンペンちゃんは、珍の手をバシッと叩いた。
「あっ!」
 珍が叫ぶのと同時に靴下は珍の手を放れ、謎の物質をまき散らしながらヒュルル
ルルルと飛び、ポトリと地面に落ちた。
「なんて事を!」
 珍は靴下に駆け寄りながら、「靴下が汚れてしまったアルよ!」
「…………」
「……百歩譲ったとしても、地面の方が清潔だと思うぞ……」
 だが、珍はペンペンちゃんのそんな言葉など聞いておらず、
「わたし、靴下洗ってくるね! ちょっと待ってるヨロシ!」
 と言いながら、どこへともなく駆けていってしまった。
 それを見たキョクリュウくんは、
「ねぇ、あの人どこで靴下洗うのかな」
「そりゃおめえ……。――!!」
 瞬間、ペンペンちゃんの脳裏に悪寒が走った。
「あいつ! 海で靴下洗う気だ!」
「大変だよ! 海が汚れちゃうよ!」
「よし! 行くぞ!」
 二人は駆けだした。


 二人が再び海岸にたどり着くと、案の定、珍はそこで靴下を洗っていた。
「……ふぅ! やっと綺麗になったアルね!」
「…………」
「…………」
 ただ問題は、その周囲に、ペンペンちゃんの近所に住むペンギン達が、プカァァ
ァと浮いて、痙攣していることであった。
「……海が汚れる、どころの話じゃなかったね」
「……そだな」
 ペンペンちゃんは覚悟を決めたように、「こうなったら、強引にお帰りいただく
しかないな」
「どうやって?」
 キョクリュウくんが訊ねると、
「まぁ、見てな」
 と言ってペンペンちゃんは、珍に近づいていき、
「おい、珍!」
「何アル?」
「俺の名前を呼んでみな」
「え? どうしてアル?」
「いいから!」
 ペンペンちゃんが急かすと、珍はいぶかしみながらも、
「じゃあ……。ペンペンちゃ――」
「俺をペンペンちゃんと呼ぶなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
『ぴゅうううううううううううううううううううう……』
「呼べって言ったアルよぉぉぉぉぉぉぉぉ………………」
『……キラリン☆』
 こうしてまた一人、夜空のお星様が増えたのであった。


「結局、あの人なにしに来たんだろうね」
「…………」
 その後。ペンペンちゃんの住む島近郊は、核汚染地域に指定されたそうだ。
 おそるべし、謎の物質……!!

                                 おしまい