作品名:『ペンギンのペンペンちゃん』(外伝)
製作 : 97/09/13(10KB)
作者 : 瞳夢 氏
形態 : 連載短編(コメディ)
超 世 紀
PPPP EEEEE GGGG III N N GGGG EEEEE L III OOO N N
P P E G G I NN N G G E L I O O NN N
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P EEEEE GGG G III N N GGG G EEEEE LLLLL III OOO N N
ペギンゲリオン
1999年に全世界を巻き込み、その人口の半数を死滅させた大災害。
通称――セカンドコンセント。
それは風力発電所を起点として起こった、単なる事故だった。
そして16年――。
壱 誰もいない部屋の中で −An das Zimmer
ペンギンのペンペンちゃんは新種の温泉ペンギンである。
冷蔵庫に住み、温泉に入る可愛らしいイメージが視聴者の間には伝わっているの
であるが、実際の現物はと言うと……、
「ぁあ? 何見てんだよ!」
かなりヤサグレているのであった。
スラリとした身体に加え、上の方に突き立った赤いたてがみ。そしてその凶悪な
目からは、テレビで見たような脚色された可愛さは微塵も見られない。頭の上に乗
ったフライングブイのサングラスと、黒い制服の下にはセクシー&ワイルドのドク
ロTシャツがお洒落である。
「あ〜、退屈だ……」
冷蔵庫の前には《ビーン=バンデット》と書かれた表札が掲げられている(ペン
ペンちゃんの魂の名である)。
その冷蔵庫から出、彼は外に行くことにする。
「かぁぁ〜、外はもっと暑かったぜ……。迂闊……」
照りつける太陽が、ペンペンちゃんの肌を焦がす。
ペタペタとアスファルトを歩いていると……。
『うぃん! うぃん! うぃん!』
けたたましいサイレンの音と共に、『第398765432新東京市に305発
生! 住民の皆さんは非難を……』
という放送が聞こえてきた。
「おいおい、そんなにあるのかよ。日本中《東京市》しかねーじゃねーか」
とペンペンちゃんが呆れ声を出していた矢先、
『ぎゅいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!』
けたたましいエンジン音と共に、赤いオープンのコブラがこっちに突っ込んでく
る。
「うわぁ!」
ペンペンちゃんが慌てて避けると、車はスピンターンして急停車し、中からボデ
ィコンの女性が顔を出した。
「乗って!」
言って彼女は、ペンペンちゃんの腕を引っ張った。
「うわっ! いててて! 何しやがる! レイコ! 放せ!」
レイコ。――ペンペンちゃんの飼い主であった。
「時間がないの! とばすわよ!」
「とばすって……おい! ペンギンひっつかまえて何しようってんだ!」
と、ペンペンちゃんが叫んだ瞬間。
『どかん!』
巨大なウナギの尻尾のような物が、たった今彼らのいた場所に打ち付けられる。
「うわぁ! 何なんだありゃ!」
「ちっ! こんな所まで来てたのね……。精霊石!」
言って彼女は、イヤリングを耳からねじ切って投げつける。
『どかん!』
周囲が大きな音を立てて、その尻尾を巻き込んで爆発を起こした。が、尻尾はビ
クともしていない。
「やっぱ手榴弾じゃ効果はないわね」
「おいおい、仰々しい名前つけて手榴弾かよ……」
ペンペンちゃんは顔に縦線を書く。
サイレンの鳴り響くと市内を、コブラは進んでいく。既に人影は周囲にはなかっ
た。
「んで。あいつは何なんだ?」
ペンペンちゃんが訊ねると、
「みんな使徒と呼んでいるわ。でもあれの正体は誰も知らないの。謎の怪物ってト
コね」
「謎の怪物だぁ!?」
突然、ペンペンちゃんは笑いこける。
「このご時世にかよ! おめえら気でも触れたんじゃねーのかぁ!?」
「あんただってあれみたでしょ!?」
「どう見たってでっかいウナギの尻尾だったけどな……」
と彼は一人肩をすくめる。
「で、俺をどこに連れていこうってんだ?」
「ここよ!」
車が止まった場所は、市街地のピラミッド型ビルの前。
「《有限会社エルフ》。元はエッチゲーム会社だったのが、今は先取防衛のための
最前線基地よ」
「……エッチゲーム会社に何があったんだよ、おい……」
ペンペンちゃんは、でっかいバニーガールの看板が掲げられたそのピラミッドを
見、ゲッソリとなったのであった。
弐 人の居場所、心の座 −Ich mich allein setzen
そこは、戦闘艦のブリッジのような部屋だった。
「状況は!?」
レイコは周囲の部下達に訊ねる。
「よくありませんね。Y2爆雷も投下してみたのですが、全く効きません」
「何だよその《Y》って……」
「Yokosima、の略よ」
レイコは言う。形は何やらスケベそうな少年の姿だった。
「てめーら何考えてもの作ってんだ……」
ペンペンちゃんが呆れ果てていると、
「まあいいわ」
「よくねーよ!」
「いいから! 時間がないの! 発進して!」
「……発進って、おい! ちょっと待て!」
ペンペンちゃんは、巨大なドックの様な場所に連れてこられる。
そこにあったものは――。
「こりゃあ……!」
ペンペンちゃんは驚いた表情でその《巨大な物》を見た。
「どう?」
レイコは自慢げに、それを見上げながら、「ペグ初号機。――汎用ペンギン型決
戦兵器《ペギンゲリオン》よ!」
確かに、それはペンギン型だった。しかもペンペンちゃんそっくりである。
「おい……。その名前つけた奴呼んでこい。……この場で殴り殺す」
「僕だよ!」
不意に、妙に明るい男の声が聞こえてきた。ペンペンちゃんがそっちの方を見る
と、中肉中背のグラサン・パンチパーマ中年が、遥か彼方のガラスの向こうにいる。
「てめえか! この場で首ちょんぎってやるから降りてこい! この極悪組長!」
その男の顔は、組の組長そのものだった。
男はペンペンちゃんの言葉に反応したのか、
「おうおう! てめえら、『出入り』だぜ!」
とタンカを切ってから、「ちがーう! 僕は園長先生なの!」
と叫んだ。
「え……園長先生がなぜ……」
「とにかく頼まれてくれないかなぁ」
男は拝むように、「それに乗ってくれるだけでいいんだ」
と、ペギンゲリオンを指さす。
「ヤだね!」
が、ペンペンちゃんは突っぱねる。
すると……。
「しょうがないなぁ……」
自称園長の目がきらりと光り、「予備のパイロットを」
「予備って、無茶だわ! 彼女はまだ治療中で――」
「かまわないから! 早く連れてきて!」
すると、数分で包帯に身を包み、点滴を打っているペンギンが病室のベッドごと
連れてこられた。
「レイくん、もう一回お願いできるかなぁ」
と、園長は園長先生が言うと、ペンギンが傷ついた身体で起きあがろうとする。
そして起きあがったその顔は――。
「てめぇ! キョクリュウじゃねーか!」
そう。ペンペンちゃんの専用サンドバック、キョクリュウくんであった。が。
「何を言っているの? 私はレイよ」
と、彼(?)は無表情に言う。
「それはこっちのセリフだ! こんなところで何をしている!」
「私はこのペギンゲリオンのパイロット、綾波レイよ。ペンペンちゃ――」
「俺をペンペンちゃんと呼ぶなぁぁぁぁぁぁ!!!」
『ごかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!』
エルフ本部の壁を突き破って、ペンギンが無表情のまま飛んでいく。
「はぁはぁはぁ……。で?」
ペンペンちゃんが話題を変えようとしたそのとき。
「病人に何をするの」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
真後ろに、たった今殴ったはずのキョクリュウくんがいた。
「はぁはぁはぁ……。もうやだ! 帰る! 帰ってカウチポテトだ!」
ペンペンちゃんが歩きだそうとしたとき、
「あ、あ、あ! ごめん! 僕が悪かった! ね! 乗ってくれるだけでいいの。
後は何にもしなくていいから! ね!」
と、園長はペンペンちゃんの前に、一瞬ダッシュでやってきて言ったのだった。
参 遥かなる戦いの中で −Grob krieg
「本当に乗ってるだけでいいんだろうな!」
ペンペンちゃんはペグ初号機のコックピットから、外部マイクに向かってそうい
う。
コックピット内は割合広くゆったりしていたが、そこにある装備は、前方がフル
レンジで見える巨大なモニターと、戦闘機のスティックのような二本の棒があるだ
けの、簡単な造りになっていた。実際、外部マイクやスピーカがどこにあるかさえ
さっぱり分からない。
「操作方法なんかは考えなくていいの! いつも動いてるとおりに動けばいいんだ
から!」
「……ちょっと待て! それって、自分で操縦しろってことじゃねーか! 約束が
――」
ペンペンちゃんの言葉を遮り、唐突にそれは発射する。
『ばしゅっ!』
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ペンペンちゃんは叫び声を上げながら、上の方へと猛スピードで運ばれていく。
「速すぎる……。気持ちわりぃ! おぇぇぇぇぇ〜」
『ちょっと! コックピットに吐かないでね!』
レイコが無責任にそう言う。
「だったらもうちょっと緩やかに発射しろ! 三秒で高山病じゃねーか!」
ペンペンちゃんの言葉は終わるか終わらないかのうち、
『がくん!』
一瞬、重力が遮断されたかのような感覚の後、唐突に視界は開けていた。ストッ
パーが外されて機体が自由になると、ペンペンちゃんの乗ったペグ初号機はまず頭
を押さえてフラフラした。ペンペンちゃんが操縦したのである。
「くぁぁぁぁぁぁ……」
気持ち悪さに倒れそうになりながら、前方を見る――。
「へ……?」
瞬間。ペンペンちゃんの目は点になった。
「な……なんだありゃ?」
それは、先ほどペンペンちゃん達が見た巨大な尻尾の、全身像である。
『あれが使徒。私達の敵よ』
《それ》は、やたら細長い身体をくねらせ、辺りの建築物を壊しまくっていた。
「あれが……使徒?」
ペンペンちゃんは驚愕の目で《それ》を見、「どーみたってありゃあ……」
そして、《それ》は言葉を発する。
「ウナギイヌです。わんわん!」
「…………」
そのとき。彼の思考は停止した。
『どうしたの、ペンペンちゃん?』
「おい! なんだありゃ! 何でウナギイヌがこんなところにいるんだ!」
ペンペンちゃんは怒鳴る。
『ウナギイヌじゃないわ。使徒よ!』
「あのなぁ……。さっき自分で、ウナギイヌです、って言ったじゃねーか……」
頭を抱え、コックピットにうずくまる。
『でも、PEGIは解答を否定しているわ』
レイコの言葉にペンペンちゃんはうずくまったまま、どこにあるか分からないカ
メラを睨み付け、
「…………。一応訊いてやる。そのPEGIってのは、ペギー葉山とは関係あるの
か」
『あら、よく分かったじゃない。PEGIはエルフが誇る最強の人工知能。ペギー
葉山の脳をそのままコピーした超コンピュータよ。カスケード、ヤンキードゥード
ゥル、クッキーの三つに別れてるわ』
「……ハナっからウィルスそのものなんじゃねーか」
ペンペンちゃんは既に呆れ果てていた。
『ちょっと待って!』
不意に、レイコが叫ぶ。
『PEGIが解答を出したわ。あの使徒は……そう。あれはウナギのもう一つの進
化の形。もしかしたらウナギかも知れなかったモノ。ウナギになり損なったイヌな
のよ!』
「だからどうしてウナギイヌなんだと訊いてるんだ!」
『…………』
しかし、返事は来なかった。
「ウナギイヌです。わんわん!」
相変わらず使徒は元気だった。
四 最期の定め −Das ist nur ein Scherz
「ちっ! しょうがねぇ! さっさと片づけてカウチポテトと行くか!」
ペンペンちゃんが、ペグ初号機を前に進ませたその時だった。
『ずぅぅぅぅぅん!』
突然、地響きが起こり、ペグ初号機はお尻から転倒する。
「なんだ!?」
そして、彼の目の前に落ちてきたモノは――。
「……………………」
今度こそペンペンちゃんは開いた口がふさがらなくなる。
『あれは……! 量産型! KA機関内臓タイプがもう完成していたの!?』
レイコが叫ぶ。
その機体は、刑事の形をしていた。無精ひげを生やした、筋肉質の刑事である。
「おまえなぁ! ありゃ、量産型じゃなくて、両さん型じゃねーか! 今回はいく
つパロれば気が済むんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ペンペンちゃんはコックピットをバンバンと叩く。
『ちなみにKAはKameAriの略よ』
訊いてもいないのにレイコは解説する。
「もういい! 俺は帰る! 今すぐ戻せ! もう知らん!」
ペンペンちゃんが叫んだときだった。
「ん?」
不意に、ウナギイヌと両さんが上を向く。
「誰かが僕を呼んでいる……」
と二人で呟いた。
「あ? ついに頭トチ狂ったか?」
「君は誰だワン?」
ウナギイヌが誰とも無く訊ねた瞬間――天が光った!
「なんだっ!」
そして天に浮かび上がる文字!
Gakken
「学研かぁ……」
「納得すんじゃねーてめえらぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
『ぴゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……キラン☆』
ペンペンちゃんのアッパーパンチは、二匹の使徒(?)を天高く飛ばし去った。
本当の映画版はこうなる予定だったのである。(←ホントかよ)
おしまい