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〜東京優駿・アドマイヤベガ
 サラブレッドの存在意義。それは、血の存続・繁栄に尽きる。競馬など、優秀な血を判別するための品評会でしかない。
ところが、それに大金を叩いて、大レースに勝つ歓喜に浸る人がいる。さらには、二次元的な部分から「馬券」という名の自分の信念や金をつぎ込み、一喜一憂する人がいる。
馬は生き残るために走り、人は勝つために賭ける。周りから見れば、何と滑稽な姿だろうか。
 だが、例え笑われようと、ダービーが終わった瞬間に、競馬人は世界で最も幸福な人種へ変わる。競馬を好きで良かった。それを実感する瞬間である。

 今年もまた、その思いを強く感じた。勝つべく宿命を背負わされた馬が、騎手が、最高のボルテージを持って、府中を駆けた。その頂点に立った、アドマイヤベガ。
 母ベガ。凱旋門賞馬トニービンの初年度産駒として、牝馬2冠を達成した名馬である。父サンデーサイレンス。アメリカで大レースを勝ちまくり、その後来日。種牡馬として、日本の競馬を大きく変化させた、歴史的名馬。
その血の結晶に課せられた宿命。その重さは、何にも量れまい。だが、走る。種の存続の為に走る。「名馬の仔が勝つ」という、競馬の真理を守るために。そして、アドマイヤベガはまずは第一の宿命を見事果たした。
しかし、まだ終わりではない。これから先、アドマイヤベガには守るべきものができてしまった。「優駿」の称号、サラブレッドとしての「掟」。
いつか来る終わりの時まで、彼はまた宿命を背負い走り続ける。それが、「ダービー馬」だ。

 武豊、橋田満。「20世紀の最後を彩った究極のサラブレッド」が姿を消し、半年以上が流れた。彼の血が残されることはなかったが、彼の意志は二人の人間の中で遺され続けている。いや、過去を持ち込むのは失礼か。勝ったのは、アドマイヤベガだ。サイレンススズカではない。

 さて、来週からまた新たな一年が始まる。北海道が熱くなる。ベガは、11月デビューだった。果たして、来年のダービー馬はいつ出てくるのか。一年後の今に思いを馳せながら、人は新しい出逢いに胸をときめかす。それが、競馬だ。


戦意一刀両断
〜優駿牝馬・ウメノファイバー
 完璧なレース運びだった。誰もが、トゥザヴィクトリーの勝ちを確信した。鞍上の武豊でさえそうだ。
脳裏をよぎるのは、96年ダービー。誰もが、武豊ダンスインザダークの勝利を確信した瞬間に飛んできた伏兵。あの時は藤田だった。
今回は藤田は抜け出しに手間取っている。不利を受けた。あれがなければ、同じシーンが再現されたかも知れない。しかし、その時武は3着になってしまうが。
 勝ったのは、常に武の後ろを見続けた男、蛯名のウメノファイバーだった。一気にぶち抜くその脚は、他馬の繊維・・・もとい、戦意を喪失させるに充分すぎた。
圧巻。そして、今や関東のトップに立つ蛯名にとって、これがクラシック初制覇。今まで足りなかったのは「華やかさ」だ。今後、蛯名は今までとは違う蛯名を見せてくれるに違いない。