空間の記憶 (成田空港、8月)

Fragments of Voices
and sleepless night.


午前11時、成田空港に着く。

第1旅客ターミナルのSouth Wingへ。

定刻通りのUA884便を、少し恨めしく思う。

あの人を見るのは、これで最後かも知れない。

チェックインカウンター Aに、あの人の姿を見つける。

「見送りは、なしね。」

前にあった日に、その人はいった。

悪いが、その約束は守れない。

少しはなれた柱の影に、隠れるようにたたずむ。


不意に、背中を叩かれる。

振り返ると、いつもの連中。

「どうするの?」

別れをいうべきか否か、迷う。

「ねぇ!」

一人が、私の袖を引っ張る。

その人は、じっとこちらを見ていた。

何か言うまもなく、カウンターに入っていく。

自分とその人を隔てる、20mの絶対的な距離。

一度だけ振り返ったその顔に、

少しの笑顔を期待する。

少しだけ口を動かすと、

走ってエスカレーターを降りていった。


送迎デッキに向かう足取りが、妙に重い。


その他の「声」