ヨハネの誕生 聖書研究 ルカ1:57〜66

 聖書研究のための、原書構文解析です。品詞の色分けは 緑が名詞、青緑が代名詞、ピンクが動詞、紫が分詞、 青が形容詞、濃黄が冠詞又は指示代名詞、赤が前置詞、黄緑が接続詞、グレーが副詞ほかです。
 黒の長い縦線はSVOCの区分、黒の縦二重線は文節の終わり、赤の下線が前置詞句あるいは前置詞、 青の縦線は前後どちらかを修飾する言葉です。もっとも、厳密なものではありません。
 本来の構造解析であれば、もっと要素をバラして、入り組んだ線を用いるのですが、今回も出来るだけ行数を減らし、  画像幅を小さくするために、簡略化しています。なお、英語の逐語訳を付けていますが、各語はいろいろ多様な 意味があり、必ずしも訳語と一致している訳ではありません。

 時制(時称、アスペクト)は「ヨハネ序文」15節で解説しています。 詳しくは専門書をご覧下さい。

 プリントして用いる場合、画像の右端が切れる場合があります。その場合は、一旦HTMLファイルとして保存し、 WORD、一太郎ほか、HTML対応のワープロソフトで開いてみてください。

ルカによる福音書1:57

Luke_Grek
A そして エリサベツ(へ)の/満了させられた(受動態)/期間は
B 妊娠の/彼女の
C  そして [彼女は]産んだ/男子を
「時(期間)」が主語で、「エリサベツの妊娠期間が満了させられ、男の子を産んだ」
* 格:主格(彼女が/は)、属格(彼女の)、与格(彼女に対して)、対格(彼女を、彼女に関しての)
(他に 奪格、位格、具格、呼格)
* アオリスト:動詞の時称 点的、昔は「不定過去」と呼ばれていた。過去とは限らない
動詞には人称が含まれているので、主語が略されることが多い
* "de"は接続詞で、2番目に置かれているが、先行文との接続を示す。
* 冠詞"ho"には定冠詞/不定冠詞の区別はなく、形容詞にも付く。名詞と同じ格を持つ。

ルカによる福音書1:58

Luke_Grek
A また[彼らは]聞いた
B 隣人と親族は/彼女の
C 〜ということを/豊かに与えられた/主は/慈しみを/彼の
D 彼女に対して
E また [彼らは]共に喜んでいる/彼女の(喜ぶのと)
「彼女の隣人や親族は聞いた。主が豊かな慈しみを彼女に与えられたことを」
「また彼らは彼女と共に喜んでいる」
* "emegalyunen"(基本型megalyuo)は「大きくする」が原意、「大いに慈しむ」はヘブル的用法
* "perioikoi"、"sungeneis"共に形容詞の名詞的用法
* "kyurios" 主、この場合はヤハゥエを指す。

ルカによる福音書1:59

Luke_Grek
A 〜になった
B 8番目の日に
C [彼らは]来た/割礼をするために/赤子に対して
D そして [彼らは]/呼び始めた/彼に対して
E 〜のように/その名を/父の/彼の/ザカリヤに対する
「八日目になって、(彼らは)赤子に割礼をするためやって来た」
「そしてその赤子を、彼の父の名ザカリヤで呼ぼうとした」
* 未完了形 大雑把にいえば現在進行形(この場合)
* "ekalun"(kaleo) 名付ける、呼ぶ
* "ザカリヤ"という名は、祭司職の「屋号」みたいなもので、嗣子がその名を代々受け継ぐ

ルカによる福音書1:60

Luke_Grek
A すると [彼女は]発言し
B すなわち 母は/彼の/言った
C 「決して(ザカリヤでは)無い!
D むしろ 彼は呼ばれるべきだ(未来時称)/ヨハンネと」
「すると彼の母は彼らを遮って(意訳)言った、『断じてそうではなく、ヨハネと呼ばれるべきです。』」
* "apokritheisa"( apkrino 発言する) の分詞、この場合は形容詞的用法
* "ukhi"(副詞) 決して(断じて)そうではない(強い否定)
* 未来時称 直後に行われることも「未来」で、アスペクトは点的もしくは不確定
この場合は文脈からいって最直近時(今から)将来に向かって(ずっと)。

ルカによる福音書1:61

Luke_Grek
A [彼らは]言った
B 対して/彼女に
C すなわち
D 誰もいない
E 内には/親族の/あなたの
F 誰か/呼ばれている/そのような名で/それで
「しかし、彼らは彼女に言った。『あなたの親族の内には、そのような名で呼ばれている人は誰もいない』」

ルカによる福音書1:62

Luke_Grek
A そして [彼らは]合図した
B 父へ/彼の
C どちらを/望んでいるか/呼ばれるべき/彼(赤子)に対し
「そして彼らは彼の父に対して合図をした。彼はどちらの名で呼ばれるべきか」
* 希 希求法。接続法より可能性の薄い場合に使い、新約ではルカとパウロのみ使う文語的(古い?)語法
この場合は、「まさかヨハネと呼ぶのか」というニュアンス。
* "kaleisthai"(kaleo)不定詞 名詞化した動詞

ルカによる福音書1:63

Luke_Grek
A すると [彼は]求めた/書き板を
B 彼は記した/示すため(分詞)
C ヨハネです/名は/彼の
D すると びっくりした/一同皆は(形容詞の名詞的用法)
「すると彼は書き板を求め、書き示した『ヨハネが彼の名だ』」
「それで一同誰もがびっくりした」

* ヘブライ語での表現「ヨハナーン シェモー」
ザカリヤがギリシャ語で記したとは考えにくいので、ヘブライ語新約聖書を調べてみました。たった2語でした。 右から左へ読みます(ローマ字の読みは左から右です)
Luke_Grek
wayshal luah waykhthov alayn lemor yohanan shemo waythemehu khulam

ルカによる福音書1:64

Luke_Grek
A すると [それは]開いた
B 口は/彼の/たちまち
C また/舌も/その
D そして [舌は]語り始めた(未完了形)
E [舌は]誉め讃えている(分詞、現在形)/神を
「するとたちまちほどけた。彼の口と、その舌は」「そして[その舌は]神を讃美し始めている」
* ポイント DEの主語をどう解釈するか。
"elalei"(laleo 「話す」の未完了形三人称単数)の主語となるものは、文脈から「ザカリヤ」、「口」、「舌」の 3つが考えられます。この節で主格の名詞(主語となりうるもの)は口と舌ですが、「舌が語る」という聖書独特の言い回しから、 また述語に一番近いことから、「舌が語り始めた」と捉えるのが自然だと思います。 参考:詩編35:28,37:30,39:2ほか、使徒言行録2:26,ローマ14:11,フィリピl2:11,ヤコブ3:5-9

ルカによる福音書1:65

Luke_Grek
A そして
B [それは]来た(アオリスト)/上に/全ての人の
C 畏れが/隣人たちに対し/彼らの
D また
E 全ての民へ/山地の/ユダヤの
F 聞かされている(未完了)/全ての[人]/出来事は/それらの
「そして彼らの近隣全ての人々に畏れがやってきた」
「そしてユダヤの丘陵地域の全ての人は、一連の出来事を聞かされている」

ルカによる福音書1:66

Luke_Grek
A そして
B [彼らは]思った/全ては/知らされた者
C 〜で/心/彼らの
D つぶやいている(未完了)
E 「どのような者/赤子は/その/なるのか」
F また
G 真に/力が/主の/存在している(未完了)
H 共に/彼と
「そして知らされた者全ては心の中で思い、(心の中で)つぶやいている『その赤子はどんな者になるのか』と」
「また確かに主の力が彼とともに在る」

Readings

Luke_Grek
Luke_Grek


2005/11/23
引用聖書:
"NESTLE-ALAND NOVUM TESTAMENUM GRAECE" 6.Druck 1999: (c) DEUTSCHE BIBLEGESELLSCHAFT, 1898 and 1993
聖書(新共同訳:(c)共同訳聖書実行委員会)
"Holy Bible": New International Version

参考文献:
J-Bible 2nd (c) 日本コンピューター聖書研究会 1996-1998
新訳ギリシャ語辞典 岩隈 直著 増訂6版 2000/05/10 (株)山本書店
新約聖書のギリシャ語文法 織田 昭著 2003/05/20(有)教友社
ヘブル語大辞典 名尾 耕作著 1982/07/20 (株)聖文社
聖書語句大辞典 7版 日本基督教協議会文書事業部 コンコーダンス委員会 (株)教文館