小小説 アメリアにて‥‥‥2(マリモってなに?)
匿名希望:2000年4月4

これは、ある一組の男女が身分の違いに悩み、苦しみ、湖に身を投じるまでを描いたドラマであるということはない。

出演 CAST

ティアナ ピァ ソレル

ムンレイス女王、キエルンとそっくり

ローラン セアック(ロウラ ロウラ)

ミリシアのパイロット、ムンレイス

キエルン ハイム

ソシエンの姉、ティアナとそっくり

ソシエン ハイム

キエルンの妹、ミリシアのパイロット

パリー オード

ムンレイス親衛隊長

クエン サン ラインフォード(名前のみ)

ミリシアの偉い人

フイル アッカマン(名前のみ)

ムンレイスの偉そうな人

それは、アメリアの空が澄んでいた1日から始まった。

ソシエン 「ローラン。ローラン! いるの?」

そう大声をあげながら、ソシエンはローランの部屋にずかずか入ってきた。

ローラン 「何ですか? ソシエンお嬢様」

ソシエン 「『何ですか?』じゃないでしょ! なによその格好。全然準備ができてないじゃない」

ローラン 「今日は、ティアナ様に招かれてソレヰユへ行くんですよね。ですから、運転手の格好に着替えましたが変ですか?」

ソシエン 「ソレヰユのパーティーには、あ・な・た・も・よ・ば・れ・て・る・の! 早く姉さんの所へ行って「ロウラ」のドレスに着替えてらっしゃい!」

ローラン 「は、はい」

ローラン 「キエルンお嬢様、遅くなりまして申し訳ございません」

キエルン 「やっときましたね、ローラン。さぁ、着替えましょう♪」

ローラン 「は、はい(このコルセットって窮屈なんだよなぁ)。キエルンお嬢様、今日のパーティーにはボクも呼ばれていたんですか?」

キエルン 「そうですよ。ティアナ様にそっくりのわたくしと、その妹ソシエンと、白いヒゲの麗しきロウラの3人と、あとはパン屋、ブン屋他、ですって(よいしょっと)」

ローラン 「(うぐぅ、きつい)クエン様は参加しないのですか?」

キエルン 「ええ。今回は政(まつりごと)無しの内輪なものですから、あちらも執政官は遠慮するそうですよ(よいしょっと)」

ローラン 「そ(あうー、きつい)、そうですか」


そして3人は、ソレヰユへと赴いた。

ティアナ 「今日はよくお越し下さいました(やっぱりそっくりね)」

キエルン 「お招きいただき、光栄です(こうして改めて見ても、瓜二つだわ)」

その他のみなさん
「<(_ _)>」

ティアナ 「今日は、わたくしの招きを快く受けて下さったこと、ありがたく思います。わたくしは、地球と月の人々の友好的な共存の一助となればと思い、このパーティーを催しました。 そもそも、我々ムンレイスは地球のみなさんと同じ‥‥10分経過‥‥。 それでは、みなさんにお見せしたいものがあります。パリー、あれを」

パリー 「はい。(今日もローランはあの格好だ、やはり趣味か?)」

ローラン(ロウラ) 「(なんだろう? 水槽? 緑の丸いものが入ってるぞ。)」

ソシエン 「(なによあれ。まっくろ*ろすけ?)」

ティアナ 「この緑色の植物はマリモと言います。月ではこれを愛と平和の象徴として、とても大事にしています。今日は、マリモを披露するためにも、みなさんを招いたのです」

キエルン 「ティアナ様、このマリモというものは、つまりどのようなものなのでしょうか?」

ティアナ 「マリモは分類学的には、原生生物界 緑色植物門 アオサ藻綱 シオグサ目 シオグサ科 シオグサ属(PROTISTA-Chlorophyta-Ulvophyceae-Cladophorales-Cladophoraceae-Cladophora)に属し、種はサウテリ(Sauteri)ミニマ(Minima) とあるそうです。緑歴史(ミドレキシ)の頃からの情報そのままなので、確かなことが言えないのが残念です。 大昔のわたくしの先祖が、マリモを崇拝する宗教を後ろ盾にし、地球圏を統一したという言い伝えもあるほど、このマリモはムンレイスにとって大切なものなのです。 ちなみに、みなさんにお見せしたこのマリモは通称「田代の箱」と呼ばれ、盗掘の悲劇を繰り返さぬように初代女王が祈ったものです」

キエルン 「もともとは、地球にいた植物なのでしょうか?」

ティアナ 「そうです。緑歴史の頃の日本という国には、阿寒湖のマリモ左京沼のヒメマリモ山中湖のフジマリモ、と色々なマリモが有り、(特別)天然記念物としてとても大事にしていました。 また、アイスランドという国のミーヴァトン湖(?マリモ)等、地球中の多くの淡水湖に棲息していたのです」

ソシエン 「植物でまんまるいのってヤチボウズだけかと思ってた」

ティアナ 「はい。マリモは、球形という表面積が最も狭く光合成に不利な形をしています。マリモは、光合成に不利だからこそ、光の当たる場所を譲り合うことでそれぞれが枯れないのです。 また、水草などの力の強い植物がマリモの生息地を襲うことがありますが、その生息地を協力し合い覆い尽くすことで、水草に光を届けず、根を張られないようにするのです。マリモは協力し合って自分たちの土地を守っているのです」

ソシエン 「ねえ、ローラン。光合成って何よ?」

ローラン(ロウラ) 「よく知りませんけど、植物にとっての御飯みたいなものじゃないんですか? ボクよりもキエルンお嬢様に聞いた方がいいと思いますよ?」

ソシエン 「いやよ。はずかしい」

ティアナ 「他にも、身分の高い女セトナと、身分の低い男マニペが、その身分の差故に叶わぬ恋に悩み、永遠の愛を誓い、その身を聖なる湖に投じ、 そして2人の想いがマリモへと姿を変えた、という悲しくも美しい伝説があります」

ソシエン 「ふぅーん」

キエルン 「とても神秘的ですね」

ティアナ 「はい。マリモは神秘のエメラルドなどと呼ばれることもありました。あまりに美しく儚いため、学術的に研究しようとしたときには、その湖のマリモは姿を消していたということもあったそうです」

ローラン(ロウラ) 「それならば、マリモを護ろうという動きは起こらなかったのですか?」

ティアナ 「いいえ。しかし、マリモへの急ぎすぎた保護活動が原因で、かえってマリモの数を減らしてしまう過ちをおかしたことがあります。 今我々も、マウンテンサイクルを日に夜を次いで掘り返し、緑歴史の遺産を傷つけているのかもしれません。‥‥‥いえ、この場で話すことではありませんでしたね」

ソシエン 「あの、カプルみたくて小さいの、1つくらい貰えないかしら?」

ローラン(ロウラ) 「カプルじゃなくマリモですよ。貰うのは、珍しいものみたいですから難しいと思いますけど、ティアナ様に聞いてみたらどうですか?」

ソシエン 「いやよ。はずかしい」

ティアナ 「みなさんにはいくつかお分けしますので、毎日共に平和のため、マリモに祈りましょう。 パリー」

パリー 「はい。皆さま、料理の方も準備ができたようなので、簡単な立食形式ではありますが、くつろいでいって下さい。 お帰りの際は、お土産に「マリモ一式」を用意しておりますので、忘れずにお持ち帰るようお願いします」


パーティーは、そこそこの盛り上がりを見せているその頃、 ティアナとパリーは2人密かに今の会合について話し合った。

パリー 「良いのですか? あの様にムンレイスの大事を公表なされてしまって」

ティアナ 「構いません。それに、ムンレイスをマリモの下に一枚岩にするため、月の女王はわたくしであることを内外に知らしめるため、フイル少佐ら軍の者に武力で建国する事の愚かしさを問うためにも、この様な催しは必要なのです」

パリー 「そうでしたか。しかし、軍部を無視して刺激するようなことは慎んでいただかないと。御身のことも少しは大事にして下さい」

ティアナ 「わかっています。パリー、今後も側にいて下さい。あなただけが頼りなのですから」

パリー 「はっ」


同時刻、 ローランがテラスでぼーっと月を眺めていると、いつの間にそこにいたのか、キエルンが声をかけてきた。

キエルン 「ローラン。何を考えているのですか?」

ローラン(ロウラ) 「あ、お嬢様。‥‥‥あのマニペとセトナの話、ボクとティアナ様みたいなのをいうのかなって」

キエルン 「ローランは、ティアナ様のことを『そのように』想っていたのですか?」

ローラン(ロウラ) 「はい‥‥‥。でも、身分の違いというのは大変なことです」

キエルン 「ローランのその気持ち、わたくしは嬉しく想いますよ」

ローラン(ロウラ) 「えっ?」

キエルン(だと思ってたけど‥‥‥) 「繭はいつしか蝶となり、赤い花の蜜を我がものとするために青い羽根でソラを舞うでしょう。 それに比べ、マリモは遅いですが確実にゆっくりと、姿を変えることなく生長します。たとえ自身が壊れても、仲間の一部となり、共に助け合い、譲り合い生きていきます。月の民も、地球の民も、そのようにありたいものです」

ローラン(ロウラ) 「!?」

その後、各々は裏切りと戦いの湖にその身を投じていくのであった。 ローランが身分の差を越えられたかどうかは、また別のお話‥‥‥。

おしまい。


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