ホームパーティー商法

 

「さぁ皆様、このキャビア、昨日ロシアから空輸させましたのよ。召し上がれ」
「あらぁ、このフォアグラ、良い味でござーますこと」
「おっほっほっほっほ」

ぽっぽがよく開くホームパーティーはこんな感じ。
パーティーにも色々あるけど、家でやるのって、各自の個性が出て、面白いよね。
他にもパジャマパーティー、お誕生日会とか…。
招待した側はゲームとか用意して、来てくれた人を楽しませようってする。
これがホームパーティー。

じゃあホームパーティー商法って?

楽しむのが目的のパーティーに、「お金儲け」がからまっちゃ…。
実例、見てみようか!

志朗とうちゃんは今、働き盛り。やる気満々50歳。
だけど平成大不況。仕事の量が減っちゃったのさ。
終電帰宅、休日出勤が当たり前だったのに、今じゃあごろごろ、テレビばかり。それなのに
「あらめずらしい、出かけるんですか?」掃除機をかけている美津子かあちゃんに、
「ちょっと出かけてくる」と言って家を出た。

実は志朗とうちゃん、最近暇なので、料理に目覚め始めていた。
中華料理屋でバイトした遠い昔から、自分は本当は料理に向いていると信じていたのさ。
前の週末、留守番していたら近所のオバハンが家に来て、
「あら、旦那さん。奥さんは? そう、買物。あ、良かったら、このチラシ、渡しといてくださいな。
来週この近くの家に集まって、ちょっとしたホームパーティーがありますのよ。
色々お料理も教えて貰ったりして。ほほほ。旦那さんもどうぞいらしてかまいませんのよ」
とまくし立てて帰っていった時から、迷っていた。

行くべきか、行かざるべきか…それが問題だ。
奥さん連中の中で一人だけ男ってのも…

結局気になってたし、当日何にも予定がなくて、ふらっと立ち寄ってみた。
外から見るだけ。見るだけにしよう。そう思っていたんだけど…
「あらぁ、単純さんの旦那さん! いらしてくださったのね! 嬉しい!」
例のオバハンに見つかってしまい、家の中に引きずり込まれた。
「奥さんは?」「あ、ああ、用事がありましてね…」
ほんとは、一緒に来たら恥ずかしいので、内緒にしてたって訳。照れ屋なとうちゃんだね。

会場となっているのは、ごく普通の家だった。とうちゃん一人だけ男性。
出された紅茶をソファの隅っこで飲んでいると、ピンポーン。チャイムがなった。
「あら、いらしたわ!」みんなで揃って玄関に迎えに行く。

「みなさーん、お集まり? 遅くなりましてー」
やってきたのは大きな荷物を抱えた若い女性二人。「さあ、始めましょ」
厚化粧の二人は勝手知ったるって感じで台所に入り、荷物を広げ始めた。
とうちゃん、そっと覗いてみると…荷物は食材と、鍋がいっぱい
厚化粧組は慣れた手つきでどんどん料理を作っていく。

見る見るうちに、一品、二品、三品…。
パーティーの名にふさわしい料理が次々と、応接間に運ばれた。
「さあ、どうぞ、皆さん食べてくださいな」
とうちゃん、そっと一口食べてみる。
「…う、うまい。うまいですね! これ!」
隠れシェフ志望のとうちゃん、思わず声をあげた。

料理があらかた片付いた頃には、もう志朗とうちゃん、輪に溶けこんでいた。         
「そうですか、この鍋セットで作ると、こんなにおいしく出来るんですか…」
志朗とうちゃん、ピカピカに磨かれた鍋を手に、感心していた。
「そうですのよ。おまけにこれ、ステンレスですから、短時間で調理できるし、
ビタミンも壊さないし、光熱費だって節約できますのよ」
「アルミやホーローの鍋って、身体に害があるの、ご存知でした?」
口々にまくし立てる厚化粧二人組。
「これいいわぁ」「欲しくなっちゃうわねぇ」とオバハン達も言い出した。
「ほぉ、体にもいいのか」だんだん志朗とうちゃんもその気になってきた。
…そうだ、俺は、定年になったらシェフになるんだ…。今の内から修行せねば…!
「今、この鍋セットを契約なされば、クレジット払いにも出来ますし、
今日お宅にお届けしますわ。古い鍋も引き取らせていただきます」
…俺の門出に、新しい鍋セットは実にふさわしい。
美津子にも新しい鍋を買ってやることになる。
「じゃあ、1セット、お願いします!」

 

ホームパーティー商法

パーティー、料理の講習会などの名目で隣近所の主婦を集めさせ、高額な商品を買わせる商法。
集団心理や義理・見えなどをうまく利用して買わせるのが目的。

踊る3チューリップ

 

ホームパーティー商法ってのは、お友達の家に遊びに行くって感覚でまず集まる。
で、色々商品の良さをみせちゃう。
商品の凄さを見せつけられちゃってるし、周りの人が欲しい欲しいっていうもんだから、
自分も欲しくなっちゃうんだよね〜。

これだけだったら、まあ「悪質」って訳じゃないんだけど。
商品が
通常より高額すぎたりすると、あぶないのさ。

もちろん、「アルミ、ホーローは有害、ステンレスが良い」なんて不確かなことをいうのは怪しすぎる

鍋なんかはこの商法の代表的な商品だね。他にも婦人下着とか、浄水器とか。

その日の内にモノを持ってきて、古いのは引き取ってくれるってのは、とっても親切にみえる。
でも、実はそこがミソ。
例えば今回のケースで、新しく購入した鍋を使わざるを得ない状況に追いこんで、
クーリング・オフをしたい! ってなった時に、
「お客さん、常識で考えてよ。使った鍋、引き取れる訳ないでしょ。売り物にならないんだから」
なーんて、
クーリング・オフを拒否するのが狙いの可能性大。

でも、心配ご無用。
ホームパーティー商法は、「訪問販売」の一種なの。
つまり、商品が
訪問販売法上の指定商品だったら、クーリング・オフが可能なのさ(期間内ならね)。

「もう売り物にならない、大損害だ。賠償してほしい」
なんて言ってきても、お金を払う必要なんてないからね。

もちろんまともな商売だって可能性もあるよ。
まあ、冷静に考えて、場の雰囲気に押されないことだね。

さて、鍋を抱えた厚化粧二人組を連れ、意気揚揚と家に戻った志朗とうちゃん。
事情を説明された美津子かあちゃんの頭から角が生え、シェフの修行はお預けになった、とさ。

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