ネガティブ・オプション

 

「おい、このタワシ、買ってくんねぇかなぁ。俺はよ、ついこの間までやっかいになってたんだぜ」

サザエさんに出てくる押し売りって、こんな感じだよね。
でも今は、「訪問販売法」ってので規制されているし、こーんな売り方はトンと見かけない。

これで商売出来た古き良き時代よ、いずこ?
負けるもんか、と押し売りの方もあの手この手でやってくるのさ。奴らも馬鹿じゃない。

今回紹介するケースは、ネガティブ・オプション。

おおっ、横文字じゃないか! なーんて敬遠せずに、まあ、読んでみて。
ぽっぽ自身の体験をベースにしました

単純家の長男、治郎だって19歳。いわゆる、お、と、し、ご、ろ。
最近通っている予備校に、気になる女の子が出来たのさ。
彼女の名前は大川ユイちゃん。
いつもがみがみ言う美津子かあちゃんや、ぼぉっとしている姉・市子と比べると
…天使だぜ…なーんてうっとりしてしまう。
治郎は今、勉強より大事なものを見つけたのだ。

普段へらへらしていても、恋をすると途端に純情少年に変わってしまうもの。
なんとかユイちゃんとお近づきになりたい治郎、予備校に着くなり彼女を捜してきょろきょろ。
教室の一番前に座っているユイちゃん発見!
さらさらの髪を耳にかけ、きらきらの瞳でプリントを読んでいる。
…おお、カワユイぜ…。治郎、さりげなーく横に座る。
「ねぇ、何読んでんの? 見せて」
治郎が覗きこんだその紙に書いてあったのは−「お手玉ボランティア?」
「そう。私、ボランティアでお手玉を作っているの。施設の子に贈るのよ」
ボランティア。いつもなら鼻にも引っ掛けないこの言葉。
不思議なもので、ユイちゃんの口から出ると、神聖な響きを持ってくる。
「やっぱり、ボランティアをする人って、素晴らしいと思うの、私」

自慢じゃないが、生まれてこのかた人の為に何かした憶えのない次郎。
ボランティアなんて、そもそもどうやって参加すれば良いのかさえ分からない。
「俺、お手玉なんて、作れないしなぁ」
意気消沈、肩を落として帰宅した治郎。郵便受けに押し込まれている包みを見つけた。
「何だこれ?」軽い包みだ。治郎、家に入ってから開封してみる。
中身は、ダンボール紙に包まれた歯ブラシ数本。手紙が付いている。
「何々…この歯ブラシを受け取ったらすぐに振り込みを?
あなたの心が愛の福祉へ繋がる? おおっ!」
この歯ブラシを購入して、指定されている振込先に2500円支払えば、
な、なんと、アフリカの子供達に食料を贈る資金となるのだっ!
まさに天の啓示! 何たるグッドタイミング!
治郎は時計を見た! まだ銀行は開いている!
「ユイちゃん、俺はやるぜ!」
治郎は財布を握り締め、鉄腕アトムも驚くスピードで銀行へ一直線。

無事に振り込み終わり、ニタニタしながら家路につく。
明日、ユイちゃんに会ったら言わなきゃな。俺、アフリカの子供、助けてんだぜ。
「ただいま〜。腹減った〜」
家に入った治郎は、美津子かあちゃんが先ほどの歯ブラシを手にしているのをみた。
「お帰り。これ、開けたの、治郎なの?」
美津子かあちゃん、歯ブラシを箱ごと箪笥の上に置いた。
「まったく、困っちゃうわよね、こんな子供だましの商売。治郎も気をつけなさいよ。
福祉への寄付なんていって、嘘っぱちなんだから。ま、こんなのに引っかかるのも、馬鹿だけど」

 

 

ネガティブ・オプション

注文(申込)していない商品を一方的に送り付け、消費者が受け取った以上、
支払わなければならないと勘違いして支払う事を狙った商法。

踊る3チューリップ

つまりネガティブ・オプションってのは、まずモノを家に送りつける
受け取った人が、「おお、これを受け取ったら、お金払わなきゃダメなのかなぁ」
なーんて誤解しちゃえばしめたもの。
お粗末なモノと郵送代だけで、ガッポガッポ儲かっちゃうって訳なのだ。

モノを買うってことは、お硬くいうと「売買契約」。
売買契約はつまり、「売ります」「買います」って意思が
お互いにちゃんとあって初めて成立する
んだ。
今回の場合、送ってきた業者の「売ります」はあるけど、
いきなり送られてきた単純家に、「買います」の意思は、当然なかったよね。
だから、そもそも
売買契約なんて、成立すらしてないって訳。
とーぜん、お金なんか払う必要はなかったのさ。

だったらどうすればいいのかというと…。

モノを受け取った日から14日間、ほっとくだけでいいんだ。
この間に業者から「返してくれ〜」って連絡がなければもう捨てても大丈夫。
とにかく
14日間だけは保管しておこう。

逆に、「邪魔だから取りに来てよ〜」とこっちから言った場合。
連絡した日から7日間モノをとっとけば、あとは煮るなり焼くなりお好きなように。

「購入しないなら一週間以内に返送してください。その間に返送しなければ購入したものとして扱います」
なーんてずうずうしいことを書いて送ってくる輩もいるけど、そんなの気にしない。無視していいよ。

おっと忘れてた。返送料とか負担する必要はないからね!

最近は相手も賢くなっちゃって、代金引換郵便制度を悪用するケースも増えてきているんだ。
代金引換郵便制度っていうのは、郵便局が、郵便物を差出人の指定した額のお金と引き換えに
名宛人に渡し、そのお金を差出人に渡すというもの。

例えば美津子かあちゃん宛てに送られてきて、かあちゃんが留守だったとする。
留守番していた治郎が、「かあちゃんが頼んだものなのかな?」って思って、代わりに払っちゃう。
美津子かあちゃんが帰宅して、「何これ、知らないわよ」って怒り出すって訳さ。

今回のケースはお金を払っちゃうと、取り戻すのは難しいよ。
消費者センターとかに相談して、話し合いをしなくちゃいけない。

単純な商法だけど、気をつけようね。

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