SF(催眠)商法

 

SF? ああ、Science Fictionね。なーんてとぼけているそこのあなた。
他人事みたいに考えていると、ひっかかっちゃうんだから。

催眠療法。最初にこの方法をとった業者の名称から、SF商法、と呼ばれているんだ。

人間ってさ、普段は大丈夫でも、興奮したら何がなんだか、分からなくなっちゃうこと、あるよね。
「自分はそんなことないさ」なんて言わない方が良いよ。完璧な人間はいないからね。

SF商法ってのは、そこのところをついてくるんだ。
最初に考えた奴って、心理学やってたんじゃないかなぁ。

とにかく、実例を見てみれば、どんな商法か納得がいく筈。

我らが単純家の五右衛門じいちゃん、なーんかおかしなモノ、買って来ちゃったよ。
ぐうぺんさんの投稿をベースにしました

ぽかぽか。小春日和。
五右衛門じいちゃんは、近所に住むGF、小梅ばあちゃんとデートをしていた。
お互い連添いに先立たれて早10年。周りも認める町内のベストカップルである。
「小梅ちゃん、どこ行こうか? 駅前の和菓子屋で、いつもの、どうかね?」
「あら、素敵。五右衛門さん。行きましょうか」
二人、日差しを楽しみながらのんびりのんびり、とことこ、とことこ。
と、前の方で、何やら配られている。
「はい、スピードクジですよ! 豪華賞品が当たっちゃうよ!」
小梅ばあちゃん、派手なジャンパーの男から思わずクジを受け取ってしまった。
「おばあちゃん、開けてみて。…す、凄いよ! 特賞だよ! おばあちゃん運がいいねぇ。
あっちで特別に賞品が用意されてるよ! はいこれ引換券!」
どうぞどうぞ、と言われた二人は、連れて行かれるがままに近くのプレハブの建物まで。

会場となっているプレハブは既に近所のジジババでいっぱい。
入り口で券をぬいぐるみと交換して貰った二人に、ステージが見えた。
その上では、はっぴの男が、マイク片手に叫んでいる。
「さあさ、お次はこの時計! 早いもの勝ちだよっ! 手を挙げて!」 
「はい! はい!」周りのジジババ、片手どころか両手を挙げている。
「はい、一番元気が良かった、あなたにあげよう」
男はステージの上から、髪を振り乱していたバーサンに時計を渡した。
「まあ、すごい…。タダでモノが貰えるのね」
小梅ばあちゃん、うっとりとした顔。五右衛門じいちゃん、思わずドキッ。
「お次はこのジャンパー! 今の季節にぴったりだ!」
「はい! はい!」五右衛門じいちゃん、思わず叫ぶ。
「おやぁ、いいねえ、その意気だ」男は五右衛門じいちゃんにジャンパーを渡す。
「五右衛門さん、ス・テ・キ…」「小梅ちゃん…」
ステージでは次のモノが出てくる。ネックレスらしい。
よし、麗しの小梅ちゃんにプレゼントだ! 五右衛門じいちゃん、すっかり張りきってしまった。
…そして、鍋、卵、本立てと貰ううちに、さすがに息切れしてきた。
「さあ、これが最後! 本日の目玉商品! 50万円の高級布団が、なんと
たったの18万円! 特別価格、半額以下! 五名様までだよっ!」
目玉商品! 特別価格! しかも五名まで! こんないいモノ、逃す手はない!
小梅ばあちゃんにいいトコ見せたい五右衛門じいちゃん、最後の力を振り絞って両手を挙げた。

 

SF(催眠)商法

安売りや講習会、景品配りなどの名目で人を集め、
閉め切った会場で限られた数の日用雑貨を無料で配り、
雰囲気を盛り上げて興奮状態にし、最後に高額の商品を売りつける商法。

踊る3チューリップ

つまりSF商法ってのは、いろんなモノをタダでまずくれちゃう。
貰えるもんは貰っちゃえ、とみんなどんどん欲が出てくる。
そこで! 最後に目玉が飛び出ちゃうほどの商品を出してくるのさ。
今までモノ貰って得してるから、
商品を買っても、それがすごーくサービスしてもらってると勘違いしちゃうんだなぁ。

 

え? 五右衛門じいちゃん、その後どうなったかって?
誰もいなくなった夕方の会場で、重い布団を前に途方にくれて、家に電話したのさ。
「あー、美津子さん。すまないけど、ちょっと車で迎えに来てくれないかね?」
美津子かあちゃん、仕方ないわねと愛車を運転して、駅前へ。

車を止めてじいちゃんを捜したら、いたいた、駅から少し離れた空き地だ。
「こんなところ、いつの間にプレハブが建ってたのかしら…。あら? あれは何?」
美津子かあちゃんの目に映ったのは、五右衛門じいちゃんと、沢山の紙袋と…大きな包み。
「???」かあちゃん、首をかしげながらも、とにかく荷物を乗せた。
家に帰って、「…お義父さん、この、大きな包みは?」
「いやあ、美津子さん。高級羽毛布団なんだよ。18万円になっていてね」
「まあ、お布団?」美津子かあちゃん、包装を少し開けてみる。
…中身は、確かに布団なんだけど…あの上等羽毛の、ふわふわ感がないような。
カバーの手触りも何だかざらざら。
似たような布団が、先日ディスカウントストアで2・3万円程度で売っていたような…。
「なんか、特別な布団だと言っていてね…」照れくさそうに言う五右衛門じいちゃん。
美津子かあちゃんはただただ、呆然とするばかりだった…。

五右衛門じいちゃん、見事に引っかかっちゃったよ。
布団なんて、普通に買ったらいくらだと思う?

五右衛門じいちゃんだってその位は知ってたよ。
でもさ、会場の盛り上がりが異様にすごくてさ。ついのっちゃうんだよね、勢いに。
小梅ばあちゃんや、周りに人に、「俺はすごいんだぞ」って、見せたかったのもあるんじゃないかな。

今回のケースは、大丈夫。クーリング・オフ制度がちゃんと使える。

呼びとめられて連れて行かれたし、布団は指定商品に入っているし…。
分からないあなた、チェックポイントをおさらいしてくれぃ!

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