父とともに

[兆し] [不安] [悲しみ] [知らせ] [HOME] [父に関する話TOP]

4.知らせ

その日は仕事で遅くなり、ひとりで残業をして帰ってくると、留守電が入っていました。再生すると、母の友人からでした。『お母さんに電話してください』という伝言でした。「なぜ母が自分で電話しないのだろう。母に何かが?」不安になって家へ電話すると母が出ました。母は父が自殺をしたと告げました。「あしたすぐ帰るから」と言って電話を切ってから「帰りたくない」と思いました。いやだ。絶対に帰りたくない。帰ったら父の死が事実になってしまう。このまま札幌にいればいままでどおり父は千葉にいて、わたしはここにいて会えないだけの、今までと変わらない日常を続けられる。帰るのはいやだ。
でも帰らなくてはいけないことはわかっていました。のろのろと支度をし、眠ると朝が来るからいやだと思いながらそれでも眠り、次の日が来ました。その晩は11月にしては早い雪が積もり、朝になると大雪でした。猫を親戚の家へ預かってもらい、わたしは家へ帰りました。
それからの数日間は現実とは思えないほど早く過ぎ、家族のひとりがいなくなってしまうのがこんなにあわただしいものだと初めて知りました。弟はバイトがあるため京都へ帰り、わたしはしばらく家にいて片づけたり、山ほどあるこまごましたことを母とこなしたあと、札幌へ戻りました。父が亡くなった夜に積もった雪はまだとけずに残っていました。その冬は雪が早くて、それが根雪になったのです。わたしの心の中のようだとぼんやり思いました。

父とともに:終わり

[兆し] [不安] [悲しみ] [知らせ] [HOME] [父に関する話TOP]