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自分の心の中には、大きくて真っ暗な穴がある。穴はとても深くて、そこには、たくさんの悲しみや、暗い考えごと、自分の中の醜い部分が沈んでいる。心の闇、と呼ばれるものなのかなと思う。
悲しみや、暗い考えごとを持ちながらも、生きていくことができることがこのごろになってわかってきた。子どもの頃は、人生に暗い面があるなどと考えたことはなかった。(何不自由ない生活を送っていたということでしょう)世の中に悲しいことが存在することは知っていても、自分にそれが起きるなんて、想像することもなかった。実際は起きていたのに、気付いていなかった。このときは。
いつからだろう。人は決してすべてが幸せで生きているわけではないって思い始めたのは。
松谷みよこさんという作家がいる。「ちいさいモモちゃん」シリーズや、「龍の子太郎」、「直樹とゆう子」シリーズなど、たくさんの児童文学を書いているひとだ。
小さい頃に読んだ「ちいさいモモちゃん」や「モモちゃんとプー」などは、ほのぼのとした、幸せな生活そのものだったと記憶していた。大人になってから、もう一度その気持ちに浸りたくて、読み返したとき、記憶とはちがう世界を感じて、びっくりした。そこには、明るい面だけではなく、実は人生の暗い面も描かれていたのだ。子ども向けにやさしい文章になっているので、小さいときに読んでもそうとは気付かなかったのだろう。
松谷みよこさんが書いた文章の中で、彼女の中の暗い闇の部分について書かれていることをあとから知った。
それは、夫との離婚とその後の死別、ご自分の病気のことなど、いろいろな事柄から成り立つ、深い闇の話であったと思う。わたしは人がそういった闇をもちながらも、なお明るく、人を楽しませ、和ませる物語を書くことができるということに、驚いた。人ってすごい力をもっているのだと思った。
心の中の闇は、誰にでも存在する物かもしれない。そして闇とともに、必ずそれを照らす光の部分を人は持っていると思う。光とは、勇気とか、希望とか、そういったもののことである。
光の存在は闇を消す物としてではなく、闇があって、そして光もあるのだと私は思う。
私は自分の中に暗い部分を持っていることを否定しようとは思わない。 そういうものを持ちながら、人は生きていくのではないかと思う。
そして、光があることをいつも信じていたい。
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