べてるの家で

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2002年7月10日〜11日に浦河べてるの家へ行ってきました。
グループホームの世話人3名+病院スタッフ1名で行ったのですが行きも帰りも車の中であれこれしゃべり通し…片道約4時間の道のりがとても短かったです。
北海道の浦河町にある『べてるの家』は精神障害者が地域で活動するためのいろいろな施設や会社を含んだ地域の「共同体」です。本を出したり、TVで報道されたりしています。精神保健ボランティアに関わるようになってから、その名前をよく耳にするようになりました。そしていつか見に行きたいと思う「あこがれの」場所でした。

べてるへ行った感想を書こうと思いながらなかなか進んでいませんでした。感想が複雑だったわけではありません。正直に言うとても楽しく、おもしろく、興味深く、自分自身が癒される場所でした。ほめことばはつきません。でもそういうほめことばだけでは全然べてるを表していない気がしたのです。
べてるは不思議なところです。キャッチフレーズは「安心してさぼれる会社」「利益のないところを大切に」「弱さを絆に」など、私たちの常識を裏返してわかりにくくしたような、逆さまから世界を見るようなことばが並びます。それらのキャッチフレーズは、みなべてるの家のメンバーの経験から出てきたものなのだそうです。それぞれのことばに歴史があり、物語があります。べてるでは偏見や差別をなくそうとはしません。偏見も差別も誤解もあります。あって当たり前です。「…ですからみなさん大丈夫です。あまり無理して誤解や偏見をもたないように努力したり、自分を責めたりもしないほうがいいんです。体をこわしますから」(『べてるの家「非」援助論』 P53より)
べてるでは昆布の販売や、紙おむつの宅配など、作業所や有限会社を設立して「商売」をしています。それは”障害者の自立とか社会復帰”のためではありません。商売をするというのは、大変なことです。苦労の多いことです。商売をすることは、「苦労をとりもどす」ことなのだと向谷地生良さん(ソーシャルワーカー)は言っています。”不安や悩みと出会いながら生きるという人間的な営みの豊かさと可能性”をとりもどすことだと。
ふだん会社で働いていて、毎日さまざまな問題が起こり、人間関係のトラブルがあり、他人に対しての不満やいらだち、意見の対立があります。自分はこんな中で苦しい思いをして、いったい何をしているんだろう…と思うことがあります。思うことばかりかもしれません。
そんな私に、その悩みこそが人間的なものなのだ、OK!とべてるは言ってくれるようでした。SST(※)やミーティングを見学させてもらいながら、私はなにか「ほっとする」気持ちを味わっていました。
やっぱりきれいごとを書いているようです。べてるは天国のようなところではけしてありません。だけど心から応援したくなる、魅力をたくさん持ったところです。今日札幌の丸善(南一条店)へ行ったら今週の売り上げランキングで、ノンフィクション部門に『べてるの家「非」援助論』が3位になっていました。この本をおもしろいと思う人がたくさんいるんだ…と驚き、そしてうれしくなりました。私が今読んでいる「べてるの家「非」援助論」はべてるへ行ったときに買ったもので、そのときたまたまお店に顔を出していた早坂潔さんが「サインしてやる!」と言って、さらさらと書いてくれた早坂さんのサイン入りです。ちょっぴり自慢です。(わたしの本ではなく、グループホームの本ですけど)[27.July.2002]

※SST(社会技能訓練)…日常生活でのさまざまな場面[主に自分が苦手なことや、課題を克服したいと考えていること]を想定してみんなの前でその場面を演じるもの。

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