JCOの事故から4ヶ月。日本中を震撼させた事故も今や何事もなかったように人々は平和に暮らしている。そこには忘れっぽい日本人、危機意識の希薄な日本人、お上に従順な日本人像が浮かんでくる。日本は、原発五三基を擁する世界有数の原発大国である。唯一の被爆国である日本、及び日本人がなぜ国の安全神話を無条件に信じ容認するのか理解しがたい。原発は危険というより、核そのものが人類の手に負える代物ではないのだ。チェルノブイリ以降、先進諸国で脱原発化が進むなか、日本とフランスが強引に原発政策を推し進めている。
石油枯渇、電力不足、代替エネルギー問題、地球温暖化の詭弁に惑わされてはいけない。原発は不要だ。
核の恐ろしさ
先の臨界事故で従業員だった大内さんが亡くなった。核分裂による放射線被爆が致死量をはるかに超えており、血液を造る骨髄と内臓が破壊した。
核分裂とは、陽子と中性子でできている原子核が、中性子の照射によって分裂を起こすことで、その際、α線、β線、γ線、X線、中性子線などの放射線を放出する。これらの放射線は、生命体の細胞を破壊する。なかでも中性子線の威力は強力で、わずかな被爆で重大な損傷を与えるばかりでなく、たいていの物質を透過する性質をもっている。
元素は、水素からウランまで九四種あるが、ウランには八種類の同位体があり、このうちウラン235が最も不安定で、反応も速く、しかも半減期が7億年ときわめて長い。ウラン全体の0.7%しか存在しないが、これを10%程度まで濃縮して原発の燃料とする。
ウランの分裂の過程でプルトニウム(元素番号95)が生成されるが、これを燃料とするのが高速増殖炉だ。(*長崎に投下されたのがプルトニウム原爆)
ICRP(国際放射線防護委員会)では年間被爆許容量を1ミリシーベルトと定めているが、実は、宇宙線や地球本体からの放射線被爆、食物からの放射性物質(セシウムなど)で我々の摂取量はこの基準を超えている。だが、営々と続く生命の歴史はその程度を許容している。
日本には現在五二基の原発があり、今後十年でさらに二十基を増設する計画だ。世界の潮流に逆行するこの姿勢は、日本の技術は『世界に冠たるもの』『事故は絶対起こらない』といった過信を根拠としている。実はチェルノブイリもそうだった。チェルノブイリ型は各国に輸出されており、設計ミスであるにもかかわらず作業ミスとしてIAEA(国際原子力機関)に報告している。IAEAは原発推進に支障をきたすため、事実を認識しながら報告を容認せざるをえなかった。
日本の技術は、ことさら世界に優れているわけではない。通産省及び資源エネルギー庁では、原子炉本体を岩盤に基礎を打ち込んでおり、すべての地震に耐えるとしているが、日本の国土は複雑な岩盤プレートが入りくんでいいる。また、岩盤こそ危険とする地震学者も少なくないし、万一の場合、安全弁が作動して運転を停止するとのことだが、時速数千キロで進む地震波に対応できるのか?百歩譲って原子炉本体が堅牢だとしても、冷却設備など周辺設備は驚くほどお粗末であることは「もんじゅ」のナトリウム漏れなど、これまでの原発事故がそれを実証している。
地震や冷却機能などの故障で原発一基が崩壊したとしよう。これには関連研究機関により、さまざまなシミュレイトがされている。東海村2号炉が崩壊し、東北東の緩やかな風が都心を襲ったとしよう。放射線障害は急性障害と晩発性障害(発ガンや遺伝子障害など)をもたらすが、少なくみつもっても一三〇万人が急性死し、五百万人がガン死するという。ちなみに、JCOの臨界では、わずか二.五グラムの反応であれだけの被害をもたらしている。
プルトニウムは人の手におえない
原発推進政策は六〇年代末期のエネルギー基本法に溯る。当時、石油の枯渇を背景に、プルトニウムの再利用などそのリサイクル性などが脚光を浴び、共産党までこれに賛成している(共産党の科学主義は評価されるが、自然科学に関する造詣はお粗末)。
ウランを燃やせばプルトニウムを生成する。その実験炉が「もんじゅ」などの増殖炉だ。プルトニウムは単独では核分裂が困難なため、0.2%ほどの劣化ウラン235を混ぜたMOX燃料として使用する。プルトニウムの分裂はウランよりはるかに高温を発生するため、冷却に熱伝導の高いナトリウムが使われるが、これも不安定な性質の物質で、そのコントロールは精緻をきわめた完全性が要求される。各国でしのぎを削って実用化をめざしたが、最も熱心だったフランスもスーパーフェニクスと呼ばれる計画を断念し、今では日本だけが計画を進めている。プルトニウムは人智で扱える代物でない。早急に開発をやめるべきだ。それでなくとも稼動を停止している「もんじゅ」に毎年莫大な維持管理費を費やしている。
ちなみにプルトニウム燃料を日本で作ることは禁じられている。原爆開発を懸念するアメリカの圧力である。そのため、今はフランスやイギリスに燃料加工を委託している(両国ともプルトニウムを断念したため、国外からの受注で製造している)。
原子炉だけでなくあちこちに潜む危険性
所沢市も例外ではない
核の危険性は原子炉だけではない。JCOの事故で明らかになったように、その存在はほとんど知らされていないが燃料加工・製造や処理施設など全国に一六六カ所の核施設がある。
あちこちに人知れず核の危険性が存在している。
所沢市も例外ではなく、関越道を核燃料を積んだ輸送車がひんぱんに通過している。もちろん事前通告もなく、事故がおきたときの周辺住民へのマニュアルもない(詳細は次号で)。核関連施設や核輸送に関する大部分は国の管理、監視が十分に行われているとは限らない。第二のJCO事故の可能性は否定できない。
核のゴミ
原発問題で最も重要な課題が廃棄物処理だ。核廃棄物には、使用済み核燃料などの高レベル廃棄物から燃料製造過程などで生じる低レベル廃棄物まで膨大の量の廃棄物がある。
六〇年代は科学万能主義の時代だった。科学の可能性は無限で、人類を究極的に幸福にするものと信じられていた。核の無毒化もその幻影の一つだった。いつかいつかと念じながら四十年が経過したが、もはや核の無毒化は不可能と判明し、廃棄物問題を先延ばしにしている。先述のようにウランの半減期は二億年。国は、使用済み燃料をガラス固化し地下数百bに埋設する考えだが、地震や地下水汚染などのリスクに対応できず、候補地すら決まっていない。赤字国債同様、次世代、次々世代にまでそのツケをまわし知らん顔を決め込んでいる。低レベル物質も特殊ステンレスなどで被膜されているが、二億年に耐えられるわけがない。有効な解決策もなく、核廃棄物は処理できずに日々蓄積されていく。 (次号につづく)
= 原 発 関 連 =
★福島でのプルサーマルも延期
MOX燃料のねつ造問題で東京電力は、人類最強の毒物プルトニウムを原子力発電所に使うプルサーマル計画の実施延期を決定。浜原発4号炉用M0X(ウラン・プルトニウム混合酸化物燃料)のデータねつ造問題(詳細は当通信のNO.5に)の再調査が進行中のため。
★福島原発労働者が労災申請
福島原発で12年間働いていた男性が「急性白血病」の疑いで抗ガン剤治療を受けたが死去。遺族が労災申請。89年の福島第二原発3号炉の事故の時に、高い被曝を受けていた。
★ 第5回高レベル廃棄物輸送開始
日本の原発廃棄物の再処理を引き受けているフランスから、処理済みの高レベルガラス固化体をのせた輸送船が、むつ小川原港にかえってくる。
ー原子力資料情報室通信NO.308よりー
電話03-5330-9520
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