pikachu★
3.英語版ポケモンのできるまで その1「翻訳」

アメリカの英語版ポケモン制作スタッフは、1つのお話を英語版にするのに、なんと4〜5週間もかけているそうです。
おかげで再放送ばっかりやってる‥‥なんて不満の声がアメリカのHPに書かれていました(^-^;
「なんでそんなにかかるの?セリフを日本語に吹き替えるだけじゃないの??」と普通なら思うかもしれません。しかし、英語版はたしかに大変な手間ひまをかけているようです。

作業はまず、日本語をすべて英語に翻訳することから始まりますが、これがいきなり大変!
何故って、ご存知の通り、日本語版ポケモンは「ダジャレ(英語はpunといいます)」があまりにも多いからです。
日本語のダジャレは、もちろん英語では通じません。「パジャマは邪魔」や「虫は無視」といったダジャレは、そのまま直訳しても面白くも何ともないので、全然違う、たいていはごく普通のセリフに変えられています。
問題なのは、映像が伴うダジャレです。映像は変えられないわけですから、単に適当なセリフをあてがうだけではワケがわからなくなってしまいます。
そんな場面では、英語版では苦労のあとが見られる(^-^; 吹き替えがなされています。

例えば、第1話でサトシがピカチュウに言うことを聞いてくれと頼む場面。
サトシ「一応、君は俺に飼われているポケモンなんだから、少しは話を聞いてくれてもいいん
    じゃない?」
ピカチュウ「ちゃ〜」と言いながら口を大きく開ける。
サトシ「歯はある、歯なしじゃない?話したくないってこと?」
ピカチュウ「ピカピカ」とうなずく。

「歯なし」と「話」のダジャレですが、これを英語に直訳しても意味が全然通じません。
そこで、英語版では下記のように変えられていました。

Ash : Since you are the pokemon I'm training , don't you think you could be a little
   nicer ? And just open your mouth and tell me what's wrong.
  (君は俺のポケモンなんだし、もうちょっと仲良くしてもいいと思わない?口を開けて、
   何がいけないのかはっきり言ってよ)
Pikachu opens his mouth wide.(ピカチュウ大きく口を開ける)
Ash : Ah,that's not exactly . What I meant is , your name all you can say ?
   (そういう意味じゃなくて‥‥つまり、君は自分の名前しか喋れないの?)
Pikachu nods.(ピカチュウうなずく)

意味的にはまぁ、当たらずとも遠からず、って感じですか?(^-^;
ちなみに、open one's mouthには、そのままの意味の「口を開ける」だけではなく、「(相手にわかる言葉で)話し始める」というニュアンスが含まれています。
サトシはピカチュウに、「ピカとかチュウだけじゃなくて、ちゃんと俺にわかる言葉ではっきり話せないの?」と言っているわけですね。(無理だっちゅーに(^-^;)

そして、このシーンにはもう一つの微妙な問題があります。
もし、ピカチュウが口を開けるシーンがなかったとしても、日本語のセリフの直訳はできなかったのです。
何故なら、サトシに「俺と話したくないってこと?」と聞かれたピカチュウが「うなずいている」からです。
「○○したくないの?」と聞かれた場合、日本語では「はい、したくない」と答えます。ピカチュウも、サトシと話したくないから「うん、話したくないよ」とうなずいたのです。
しかし、こういう場面では、英語では「ううん、話したくない」と答えるのが普通なのです。
相手にどんな風に質問されようとも、自分が「したい」時は「はい、したい」と答えるし、「したくない」時は「いいえ、したくない」と答えるのが英語の考え方なのです。
だから、もしサトシのセリフをそのまま英語に翻訳してしまった場合、ピカチュウがうなずくのはおかしい。だから、たとえピカチュウが口を開けるシーンがなくても、サトシのセリフは変えなければならなかったわけです。
英語と日本語における文化の違い‥‥翻訳は簡単な作業ではないわけです。

他の例も紹介してみます。
第4話で、カスミがトキワの森で「虫〜!虫〜!」と大騒ぎしているところへ、サトシが牛の格好をして、「牛!」と言うシーン。英語では、虫はbug(バグ)だし、牛はcow(カウ)なので、ちっとも関連がありません。
そこで、サトシのセリフは、"Maybe it's a 'Cowterpie!'"(そりゃたぶんカウタピー(キャタピーのもじり)だね!)と変えられていましたが‥‥かなり苦しいですよね(^-^;
もう一つ、「ハナダシティのすいちゅうか」で、カスミが水に流されながら「美女がビジョビジョ〜!」と言うと、お姉さんの誰かが「それは私のセリフー!」とつっこむというシーンは、カスミが「みんな自分のポケモンをしっかり守ってー!」と言い、お姉さんが「私は自分の髪の毛の方が大事よー!」と言うという、よくわからないけどとりあえず普通?(^-^;のセリフに変えられていました(^-^;

英語版プロデューサーのNormon Grossfeld(ノーマン・グロスフェルド)さんいわく「この日本語のダジャレの吹き替え版を考えるのが一番大変で、何日もかかることもある」そうです。
ご苦労様、ですよね(^-^;(すべては首藤さんの責任です〜(;^_^A)

   


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