■ 漢語迷の武漢日記 ■
< 第5回 中国のマスコミ >今日は皆さんに中国のマスコミの現状についてご報告したいと思います。
マスコミは本来、権力を批判・監視する機能を持つ必要があること、にもかかわらず日本のマスコミの場合、記者クラブ制度などによってこの機能が全く骨抜きにされていること、こうしたことは多くの人によって再三指摘されてきていることです。
しかし、中国のマスコミについて言えば、現状は日本とは比較にならないほど深刻だと言わざるを得ません。中国のマスコミの役割―それは、政府の政策の宣伝に他なりません。最近になって「世論による監督」ということが中国でも言われるようになってきましたが、実質的には中国のマスコミはこうした役割をほとんど果たしていないといっていいでしょう。
中国のマスコミの現状は中国の代表的なニュース番組「新聞連播」を見れば端的にわかります。この番組は毎晩七時から中央電視台で三十分間放送されているもので、日本で言えばNHKの七時のニュースに当たるものと言っていいでしょう。
このニュースの内容のほとんどは中国の指導者が誰々と会談した、こういう講話をした、どこどこへ行った、共産党がこういう会議を開いたといったもので占められます。そして、特徴的なのはいいことは報道しても悪いことはほとんど報道しないということです。例えば、鉄鋼の生産がこんなに増えた、といったことはしょちゅう報道されますが、「政府の政策の失敗でこんな問題が起きた」といったことは決して報じられることはありません。
政府の政策を正当化するために極めて恣意的に情報が選択されているということも中国のニュースの特徴の一つでしょう。例えば、日本については最近よく「日本政府がオウム真理教に対する取り締まりを強化した」というニュースが取り上げられます。他に日本についてのもっと大きなニュースはたくさんあるのに、なぜこのようなニュースが取り上げられるのでしょうか?ここには明らかに中国政府の法輪功に対する取り締まりを正当化しようという意図が伺えます。つまり、「先進国」日本でも「邪教」に対する取り締まりを強化している。ならば、我々が法輪功を取り締まることが人権弾圧などとどうして言えようか、というわけです。実際、こうした情報操作は功を奏しているようで、中国の学生の中では法輪功=オウム真理教と同様な極めて危険な宗教、というイメージがすっかり出来上がっています。
ロシアのチェチェン紛争に関する報道が日本に比べてはるかに多いのも同じ意図によるものといえます。中国はロシアがチェチェンの独立運動を鎮圧することを支持しているのですが、ニュースも「ロシアがチェチェンの独立派を見事に押え込んだ」というような論調です。なぜ、こうなるのかというと、中国は新彊やチベットで独立運動が激化することを極度に恐れています。したがって、こうした独立運動を押え込むことを正当化する必要があるわけですね。だから、「ロシアだってやっているんだぞ」ということを言いたいがためにチェチェンのことを頻繁に報じているのだと言えると思います。
台湾の総統選挙について言うと、ほとんど無視に近い状態でしたね。ニュースではなんと各候補者の得票率だけを言って、十秒ほどで終わりました。そして、その後にどこどこの国が再度「一つの中国の原則」を支持したというニュースを滝のように続けざまに流しました。こうした報道の影響もあり、中国では「台湾が独立してもいい」などという人はほとんどいません。というより、まだ出会ったことがありません。かなり柔軟な考えを持った先生でも、この問題では絶対に譲る人はいませんね。それだけ教育と報道の影響は強いということでしょう。
中国のマスコミがこのようになってしまう根元にはやはり共産党の一党支配があります。この部分が変わらない限り、いくら「世論による監督」などと言っても問題は根本的には解決しないでしょう。
さて、随分と中国のマスコミの悪口を言ってしまったようですが、振り返って日本のマスコミはどうでしょうか?中国のマスコミに比べたら比較にならないほど自由な環境にありながら、自分たちの権益を守るために自ら政府に統制される道を選んでいるわけですから、ある意味では状況はさらに深刻と言えるかも知れません。中国のマスコミを批判するのは簡単なことですが、自分たちも似たことをやっていないのか、省みる必要があるのではないでしょうか。
2000.4.1
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