ちびくま、東京へ行く。(その1) |
そもそもの発端は、自然学校が終わった今年7月に遡ります。 自然学校で、これまでずっと家以外の場所では排泄ができない、という問題を克服して、家以外の場所のトイレでおしっこをする、という大きなステップを上がったちびくま。そのことに感動した障担が、息子にこう言っ 「えらいなあ、ちびくまくん。これで、旅行にもいけるよ。ピューロランドにも行けるなあ!」 ちびくまはこの言葉に敏感に反応しました。実は、ちびくま、5年生になった今も、サンリオキャラクターが大好き。TVで時々見るピューロランドは憧れの場所だったに違いありません。その日から、「おかあさん、ピューロランドにいくのはなんがつなんにち?」の質問が始まりました。 先生は「ピューロランドにだって、行こうと思えば行ける」というつもりで言ったことですが、ちびくまは「先生が『ピューロランドに行ける』と言ったのだから、連れて行ってもらえる」と理解したのです。 (K先生、自閉症児相手に滅多なことを言わないように!お願いしますよ〜(泣)) このまま連れて行かなければ、障担も母も嘘をついた、と思い込みかねません。また、叶えられなかった望みとして、大きくなるまで記憶をひきずる可能性もあります。ここは、ピューロランドに行っても浮かない体格のうちに、思い切って連れて行っておいたほうがいいかもしれない。とりあえずは、我が家の懸案事項の1つになったのでした。 |
夏休みはどこにも旅行をしないまま迎えた9月。 地元のバス会社の営業所の一般公開がある、というので、バスマニアのちびくまを連れて見に行きました。 敷地にずらっと並んだバスを見て、大喜びのちびくま。中でも、公開展示されていた4台のバスが大変気に入ったようで、何度も何度も乗って、楽しんでいました。会場には私たちのような親子連れの他にも、見るからにマニアという人々もたくさん。ただバスを見ているだけで幸せ、という人はこんなにいるものなんだなあ、と感心するやら呆れるやら、で、飽きることなくバスを眺め続ける息子にただつきあっていたのでした。 そうこうするうちに、クイズ大会が始まりました。 ○×式の勝ち抜きクイズで、参加賞はバスの写真入下敷き、入賞すれば図書券やバスのチョロQなどの賞品もあるというので、私もかる〜い気持ちで参加してみることにしました。 ところが。あれよあれよという間に勝ち抜いて、並み居るマニアの皆様を差し置いて、優勝してしまったのです。 参加していた大勢の人々とバスの運転手さんたちに囲まれながら、表彰式で営業所長さんから手渡された商品は、神戸〜渋谷の夜行バスの往復ペアチケット。 夜行バス〜? 自閉症児にそんなもんもろて、どないせえ、ゆうねん! そんな私の内心の叫びにも気づかず、バスの運転手さんたちはニコニコ笑って私たち親子の周りに集まり、口々に 「ボク、良かったなあ。これで東京連れて行ってもらい」 「東京ディズニーランドに行けるでぇ」 と声をかけてくれます。 言うまでもなく、その日から、「おかあさん、バスでとうきょうにいくのはなんがつなんにち?」が始まったのでした。 |
当初、私はもらったチケットを換金して、それで別な路線の切符を買って、ちびくまを乗せてやろうかと考えました。 ところが、テキもさるもの。渡された封筒に入っていたのは目録で、指定された方法でバス乗車の予約をすれば有効な乗車券と引き換えてもらえるが、換金・譲渡した場合は無効、とはっきり書かれていました。しかも、有効期限は11月末。ということは、来年の夏、学会へ参加するための足として使う、という手段も使えないことになります。 あ〜あ、せっかくもらったのになあ。このまま無駄にするしかないのかあ。 諦めかけた私に、ふとある考えが閃きました。 本当に、ちびくまには無理、なのか? 今のちびくまはとても行動が落ち着いています。 特に、バスに関しては、車内では動き回らない、大声を出さない、などのマナーも身に付き、単独での路線バス下校もすっかり危なげなくなりました。昼間の便であれば、多少の長距離でも全く問題なく乗れるでしょう。 また、学校では、教室にお客さんが来ているときには自主的に静かにしようとするなど、場を踏まえた行動もだいぶ増えてきました。 確かに、賭けではあるけれども、きちんと夜行バスに乗るためのルールを教えて、準備を整えておけば、なんとかなるかもしれない。そして、なんとかなったときには、本人にとっても大きな自信になるに違いない。 普段新しいことにとりかかるのには慎重なわりに、時に人が驚くようなぶっ飛んだ行動をとる、と定評のある私。かくして、ちびくまと2人で夜行バスで東京に行き、彼のかつてからの念願のピューロランドに行ってみよう、という、無謀とも言える旅行計画が成立することになったのでした。 |