ちびくまスケッチ(2001年6月)



6/1

いよいよ、待ちに待った遠足の当日です。ちびくまは張り切っていたのか、普段より早起き。ウキウキ気分で朝食も着替えも済ませ、いつもより10分も早く家を出て、送迎バスを待っていました。

目的地は、小学校最寄のJRの駅から普通で15分ほどのところにある、遊園地。主目的は、「電車での移動を経験する」ことです。
(以下は、担任の報告から)
まず、切符を買うことから。ちびくまは、往復の電車賃を入れた財布を、首から下げていました。事前学習で教わったとおり、160円を自販機に入れて、「こども」と「160」のボタンを押して、切符を買うことができました。

電車の中では、2年生のお兄ちゃんと手をつないで座り、「次は○○駅」と、これも事前学習で教わった駅名を、ひとつずつ確認して、ご機嫌。校長先生も同行していたのですが、「随分落ち着いてるなー。普通学級の子より落ち着いてるんとちゃうか」とおっしゃっていたそうです。

14人の子どもたちのうち、4人は車椅子を使用しているので、目的地のJRの駅(エレベータがない?)のホームには、「どこのVIPが来るのか」と思うくらい、たくさんの駅員さん(介助のため)がずらっと並んで、お出迎えをしてくれたのだとか。

そこから15分ほどの道のりを歩いて、いよいよ到着です。
もう、ちびくまは、乗り物は見たいし、動物は見たいし、売店は見たいし、で舞い上がり状態。とりあえず、全員で、「世界の人形館」へ。
これは、いろいろな国の民族衣装を来た人形が歌ったり踊ったりしているのをボートに乗って見てまわる(ディズニーランドにもあったような…)ものなのですが、「国旗」はちびくまの得意分野。旗を見ては「次は○○」と言って、「よく知ってるなあ」と先生たちに誉めてもらって、ますます得意になっています。

その次に、これも全員で電車の乗り物に乗ったところで、お弁当。ところが、ちびくまは「おべんとう、たべないのー」と言って、ひたすら乗り物を見てまわります。仕方がないので、担任が付き合って、一緒に見てまわってくれました。
ゲームコーナーにあるコインを入れて乗るタイプの乗り物が気に入って、コインを入れないままで、全制覇。そこで、やっと担任の説得に応じて、お弁当タイム。でも、母の手作り弁当には目もくれず、プチトマトを5つ食べただけで、
「ごちそうさまー」と。また、担任の手を引いて、乗り物探索です(可哀想な先生)。

介助の先生たちとゆっくりお弁当を食べた4年生のお姉ちゃんと2年生のお兄ちゃんも合流して、またモノレールとボートに乗って、あっという間に、出発の時間になってしまいました。帰りもご機嫌で、ルンルンと帰ってきました。

夕方、担任から電話。「どうですか?ちびくまくん、疲れていませんか?」
「いいえ、すっかりハイになってしまって、ルンルンしてます」
「もうねえ、すっごく楽しんでくれたみたいで。今日は、一番もとを取ったのは、ちびくまくんでしょうね。時間が限られているから、残念でしたけど、ちびくまくんだけなら、終日でも遊べる感じですね。これだけ喜んでくれると、連れて行く甲斐があります。ご両親にも、よく連れて行ってもらってるんだろうね、とみんなで話していたんです」
「いいえ、これまで何回か連れて行っても、それほど喜んでくれなくて。電車は喜ぶだろうと思ってたんですが、遊園地のほうはどうかなーと心配していたんです」
「ええーっ、そうなんですか?動物園も、すごく興味を持って、じっと見ていましたし、遊園地も、一番、本来の楽しみ方を知ってるという感じでしたよ。また、ぜひ、おうちからも連れて行ってあげてください」

うーん、去年、動物園に連れて行ったときは、入り口からまっすぐ出口まで歩こうとしたんだけどなあ。学校の力というのはスゴイ。


6/2

一夜明けても、まだ興奮さめやらぬちびくま。
いつもなら、学校に着いたら、すぐ自分の持ち物を机の中とロッカーにしまうのに、今日はランドセルを背負ったまま、教室での事前学習のために作ったダンボール製の電車にしばらく座っていたそうです。

さて、今日は、ちびくまが今春卒園したM学園の先生が、アフターフォローのために参観と担任との懇談にM小を訪問する日です。
月曜日から「今週の予定」として、それを知らされていたちびくまは、朝から、
「きょうは、Mがくえんのせんせいが、こられます」と繰り返していました。

M学園の先生には、M小訪問の許可を求められたときに、ちびくまが入学を機に、随分変わったことは伝えてありました。でも、たいして本気にもされていなかったのか、「最初から最後まで『えーーーっ』とビックリした顔でごらんになっていましたよ」と後で担任に聞かされました。

まず、表情が違っていたはず。授業中、きちんと着席している、というのも意外だったでしょうし、担任や、介助の先生たちに、自分から積極的に働きかけて、遊んでいる、というのも、学園ではあくまで受動的だった彼には、見られなかったことでしょう。

「それ以外にも、『彼はこういうところは駄目でしょう?』『こういう問題がありますよね』といくつか確認されたけれど、どれも思いあたることがなくて、『いいえー、ありませんけどー』、『では入学して変わったんですね』『いいえ、彼は入学式の日からこうでしたよ』と、噛みあわない会話をしてしまいました」と、担任は苦笑しながら教えてくれました。

実は、この日見学に来た先生、通園施設時代には、私の療育方針(というほどのものでもないが)があまり気に入らなかったらしく、「お母さん、もっと躾をきちんとしたほうがいいのじゃないかな」「お母さん、字が読めるとか、勉強みたいなことより、もっと大事なことがあるんじゃないの」と、事あるごとに「アドバイス」をしていたのです。ちびくまが、園であまりのびのびしていないのも、本人の障碍の重さや、親の態度からくるものと思っておられた様子。言葉は悪いですが、ちょっと「ザマーミロー」みたいな気持ちになってしまいました。

反対に、小学校のほうでは、私が入学前に渡していた書類も、学校でのちびくまにはあてはまらないことが多くて、私がちびくまを少し否定的に見すぎているのではないか、と担任が思っている気配が感じられていました。これで、私が「単なる心配性のお母さん」ではないことだけは、証明されたようです。


6/4

あさって、ちびくまの在籍する障級では、「手打ちうどんづくり」の実習をすることになっています。
「放課後、その材料を買いに行くのに、ちびくまくんと、○○くん(2年生のお兄ちゃん)に手伝ってもらいたいんですが」と担任からTEL。

実は、担任の自宅と我が家とは、歩いても10分とかからない距離。
うちのマンションの向かいにあるスーパーは、担任ほか、介助員の先生たちや、障級の上級生のおうちの御用達です。

そのスーパーの入り口で待ち合わせをしました。
担任は、ちゃんと大きな字で書いた「おかいものメモ」を用意してきて、「さあ、二人で、先生がちゃんとお買い物できるように手伝ってね」
先生と子ども2人がお買い物をしている間、母ふたりは、自販機のコーヒーを飲みながらおしゃべり。
「ひとりですれば5分で済む買い物を、わざわざややこしいのを2人も連れて『買い物学習』にあててくれるなんて、申し訳ないみたい」
「そうでしょ。ほんとにいろんなことを考えてくれるのよ。うちは、去年もあの先生が担任だったの。ラッキーだと思うわ」

結局、ちびくまにあっちこっちと引き回されたため、かなり時間がたってから、3人は戻ってきました。でも、「いろいろ教えてあげた」つもりのちびくまは得意顔(^^ゞ。先生とお兄ちゃんが車に乗って帰ってしまうまで、ニコニコ顔で見送っていました。

もちろん、「車種とナンバーのチェック」は忘れませんでした。
もう、「○○先生のクルマは?」と訊いただけで、ちゃんと答えられます(笑)。


6/5

今日は、1年生の遠足の日です。
障級の遠足は、大人の手がたっぷりあるため、電車に乗って遊園地という豪華版でしたが、普通級の遠足は、「校外での集団行動の練習」が目的なので、徒歩20分ほどのところにある公園に行くだけです。
この遠足にも、障級の1年生2人は、それぞれの障担に付き添われて参加します。

通園施設で、毎週ボランティアさんとのお散歩をしていたちびくまは、慣れたもので、先生に指示されたとおり、交流級のお友達と手を繋いで、列を乱すこともなく、歩き続けたそうです。

途中、車の多く通る道も通るので、気に入った車を見かけると足が止まるカーキチちびくまのことがちょっと心配だったのですが、「障級の皆だけで出かけるときはそういうこともあるけれど、今日は場の雰囲気をちゃんと読んでいたようで、一度も足が止まりませんでした。かえって、パートナーになった子があっちに気が散り、こっちに目が行き、っていう子だったので、列から逸れないように引っ張っていってくれていました」とのことでした。

でも、さすがにずっと集団行動は疲れたのか、お弁当と自由遊びの時間は、障担の手を引っ張って、単独行動をしたがったそうです。担任は「ずっと皆に歩調を合わせて、手を繋いで歩いただけでも、彼にとっては相当な頑張りだったと思うので、『いいよ、2人で遊ぼう』って言って、2人で別行動をしてました」と言ってくれました。

ちょうど公園で練習をしていた大学生バンドのお兄ちゃんたちの演奏がすっかり気に入って、担任と2人で聞いていたのだそうです。

「でも、集合時間はきちんと守っていたし、帰りもちゃんとパートナーの子と手を繋いで、歩調を合わせて歩いていました。これだけできれば、大したものです」担任は、今日もお褒めの言葉をくれ、褒められ好きのちびくまは、大満足の様子で帰宅しました。


6/6

今日は、ちびくまのクラスと、市内の他の小学校の障級の子どもたち、計13人が集まって、手打ちうどんをつくる実習があります。

障級や養護の特徴として、こうした生活に直結した実習が数多く取り入れられている、ということがあります。「障級は遊んでばかり」と嫌う親御さんもいますが、「見通しを立てながら、ひとつのものを作る」というのも、うどんをこねたり、というのも自閉っ子にとってはきちんとした訓練です。それにしても、いろいろと考えてもらっているものです。

小麦粉に塩水を加えて、こねて、延ばして、切って、ゆでる。
普段は手が汚れることはあまり好きではないちびくまも、事前学習のおかげと、大好きなうどんを作る、とあって、大張り切りで参加したそうです。

できあがると、「いらっしゃいませ〜」と「うどん屋さんごっこ」も。
できたての手打ちうどんをたっぷり食べたちびくまは、その日の給食には見向きもしなかったそうです。


6/8

送迎バスから降りてきたちびくまの手に、でっかい紙袋。
開けてみると、フラワーアレンジメントとカードが入っていました。
カードには「ちびくまより」と、ちびくまの文字。

連絡帳には、「生活単元学習(略して「生単」)の授業で、家族へのプレゼントを作りました。台にスパンコールや色紙を貼ったり、お花をいけたりは、全部自分でやりました。リボンを結ぶのだけ手伝いました」と。

さっそく、デジカメで写真を撮って(トップページ)、玄関に飾りました。


6/11

今日は、障級の保護者会。例によって、ちびくまの教室に立ち寄りました。

実は、今朝、少し咳をしていたし、あまり元気がなかったので、様子を見ようと思ったのです。

すると、ちびくまは、教室の後ろの畳のコーナーで介助の先生の膝にもたれて、くったりと甘えているところでした。
「あ、お母さん、ちょうどよかった。ちびくまくん、ちょっと前から、急にしんどそうになってきたんですよ」

私の顔を見たちびくまは、「おかあさん、きたよー」と言って、ニヤリ。
「あら、お母さんの顔を見たら、元気が出たね。5時間目まで、頑張れるかな?」と担任が言うと、

「…おうちかえる」
「えっ、ちびくまくん、まだ学校終わってないよ。どうしたの?」
「○○○****(車種名)のって、おうちかえる。おかあさん、かえる」
「ああ、お母さんに帰れって言ってるの?じゃ、帰るよ。バイバイ」
でも、ちびくまは母の手をしっかり握ったまま、
「ちびくまくん、おかあさん、かえる」
「えっ、いっしょに帰るの?」
「いっしょにかえるの」

珍しい。今まで、何度も教室を覗きに来てるけど、こんなのは初めてです。担任と話して、「本人がここまで言うのは、そうとう体が辛いのかもしれない」ということになり、そのまま早退することになりました。

帰宅後、熱を測ってみると、やはり37.9℃。「おかあさん、いっしょ、ねんねする。ねるじかん」と言って、添い寝を要求して一眠りしました。


6/12

一夜明けて。今朝はもう、熱は下がっていました。でも、なんとなく、だらだら。「学校へ行く用意をしよう」と言っても、いつものように、はじけるような反応がありません。

べたべたと膝によじ登ってきて、「がっこういかないの」。
ええっ?入学以来、ちびくまがこんなこというのは初めてです。
「学校行かないって、じゃ、バスはどうするの?」
「ばす、のらないの。おやすみする」

でも、休ませるほどの体調とも思えないし、もし何かあれば、目の行き届いた障級なら、いつでも連絡がもらえると思い、とりあえず連絡帳に、今朝こういうやりとりがあった、ということだけ書いて、送り出すことにしました。

ああ言っていたわりに、バスが来ると、素直に、というか、嬉しそうにのりこみます。

やがて、10時半ごろ。電話が鳴りました。
「学校からかな。やっぱり駄目だったのか」と思って、受話器を取ると、
「もしもし、おかあさん。ちびくまくん」とちびくまの声。
「ぼく、げんきだよ。ばいばい、おかあさん」
「そう?だいじょうぶなの?」と言っていると、「もしもし〜」と担任の声。
「…というわけで、元気にしております〜。お母さん、心配しておられるといけないと思って」
「電話、本人がかけると言ったんですか?」
「いえいえ、『お母さんにお電話かけようか』と言ったら、ニコニコして一緒に職員室まできました。一応、台本を作って練習したんですが、台本にないことも言ってましたね(笑)」
ああ、良かった.ほっとしました。こういうきめ細かい対応をしてもらえるのも、障級ならでは、という感じがします。


6/13

入学以来、楽しむ絵本の幅がぐーーんと広がった感じのちびくまですが、今のお気に入りはいわむらかずお作の「14ひきシリーズ」です。
美しい自然を、透き通った色彩で描いた、もともとは母のお気に入りです。

今日、学校から帰ってきたちびくまのかばんから、この14ひきのねずみたちが出てきました。画用紙にペンで描いて切り抜いて、色を塗ってあるのです。
連絡帳を見ると、「ちびくまくんのお気に入りなので、介助の○○先生が作ってくれました」とあります。

ちびくまは、さっそく14ひきを廊下にずらっと並べて、お話の世界に浸っていました。


6/18

夜、TVを見ていたときのこと。
ちびくまはいつものように、車のおもちゃで遊びながら、ちょろっと母の膝に座りに来たり、テレビの画面を指差して、何か言ったりしていました。

画面が、乱闘シーンになったとき、突然、ちびくまは、「わーっ、ケンカは、あかん!」と叫んで、TVを消してしまいました。
父と母はびっくり。今まで、ちびくまにはなかった反応、なかった語彙です。

あとで担任にきいたら、「交流級での生活のなかで、自然に身についた言葉でしょうね」とのこと。そういえば、「ようきいとかな、あかんで(よく聞いておかないといけないよ)」「きいつけや(気をつけて)」といった、両親は使わない、べたべたの関西弁もちらほら。「普通の子」の集団に入れればよい、といった考え方には、否定的な母ですが、こうした変化を見ていると、「普通の子」の刺激も一概に馬鹿にはできない気もします。.


6/20

今日は朝から、しとしと降る雨。
学校から帰ったちびくまは、おやつを食べた後、ベランダに寝転がって、向かいのスーパーの駐車場を眺めていました。

と、突然、パニックになって、泣きながら洗面所にダッシュ。どうしたのか、と見に行くと、「だめだよー!」「ソックスは、いらないの!」「もう、おしまいだ」と泣き叫びながら、靴下を脱いで、洗濯機へ。…どうやら、靴下が濡れたのが、許せなかったらしいです。でも、「脱いだものは洗濯機へ」はできている(笑)。

夜、お風呂に入るとき。母が先に入って、頭と体を洗ってから、ちびくまを呼ぶ、というのが、いつものパターンです。いつもは「ちびくまくーん」と呼ぶだけで、素直に飛んでくるのに、今日は覗きに来ただけで、すーっとリビングに戻ってしまう。何回か、それをやって、さすがにイラついてきたので、「ちびくまくん、お風呂にはいります!」と強く言ったら、困ったような顔をして、しぶしぶ「おしりふき」を抱えてきました。

待っている間に、「大」が出てたんですね。だから、いつものように、自分で服を全部脱いで飛び込んでくるわけにはいかない。母に脱がせてもらうにしても、このままではお風呂に入れない、と考えたらしいです。

雨のベランダに出れば靴下が濡れるかもしれない、ということが予測できない。1年生になったのに、いまだに排泄が自立できずに、ムー○ー○ンのお世話になっている。マイナスに考えれば、いくらでもマイナスに考えられるのですが、こういうときは「できたこと」だけに焦点をあてて、褒めることにしています。
「濡れたソックスを自分で替えたのね、エライね」
「お母さんが困らないように、おしりふき持ってきてくれたのね、ありがとう」

でも、正直、「わかっているんだかいないんだか」って思っちゃいます(笑)。


6/21

きょうは、学校では一日「動作法」の学習会でした。
動作法というのは、もともと肢体不自由児のために編み出された、心理療法的なリハビリテーション技法のひとつですが、感覚統合同様、自閉症やLD、ADHD等にも応用できると言われているため、ちびくまの学校では、障級全体で、専門の先生を招いて指導していただく機会が作られているようです。

ちびくまは、学校ではすごく「頑張っている」ため、「低緊張で、姿勢保持が難しい。ボディイメージも把握しきれていない。微細運動能力は著しく遅れている」という、私の観察は、なかなか担任には「実感として」わかってもらえなかったのですが、「先生に見ていただいたら、やはりお母さんのおっしゃるとおりだとおっしゃっていました」とのこと。

ところで。この先生の指導を受けるために、障級の子どもたち、障担、介助の先生など30人あまりが円座になって待っていたところ、ちびくまがすすーっと輪の中心に進み出て、「ひとまねこざる」のお話を暗誦したのだそうです。
担任からそれを聞いて「あっちゃー」と思った母でしたが、担任は、「それが、もう、びっくりするくらい上手で。皆で聞き入っちゃったんですよ。ストーリーテラーの素質がありますよね!」とどこまでもポジティブな評価だったのでした(笑)。


6/23

きょうは、学校はお休みなのですが、個人的にお世話になっている、教育大学の教育相談に、担任が同行してくれることになっていました。
でも、朝、突然電話が入り、教授に急用ができたため、来週にして欲しい、とのこと、すぐ、障担の自宅に電話を入れました。

「わかりました。じゃ、また来週ご一緒させてください。あの〜、だったら、ちびくまくんの今日の予定はどうなるんでしょうか?」
「今日は、大学に行くことだけを考えていたので、他には何もないんですよ。お天気も悪いし、家で遊んでもらうことにします」
「お母さん、私、かねがね、ちびくまくんと図書館に行ってみたいと思っていたんですが、今日、午後から、ちびくまくんに付き合ってもらってもいいでしょうか?」
「ええっ、ちびくまは喜ぶと思いますが、先生、今日はせっかくのお休みなのに…」
「いいえ、どのみち、今日はちびくまくんと半日一緒のつもりでしたから。お許しいただけるんでしたら、バス停でちびくまくんをお預かりして、2人でバスに乗っていきます」

ちびくまに「○○先生が、バスで図書館に連れて行ってくれるんだって」と言うと、「○○せんせい。オレンジバス。としょかん。ちびくまくんと、せんせいと、としょかんいきます」と言って、大ニコニコ。

昼食後、バス停で先生と待ち合わせ、2人でニコニコ手を振りながら、出かけて行きました。「だいじょうぶかな〜、図書館で走り回ったり、パニックになって、先生を困らせていないかな〜」とやきもきすること、約2時間、やっと先生から電話がかかってきました。
「今、マンションのエントランスのところにいます」

慌てて降りていくと、そこには、得意気なちびくまと、ニコニコ顔の先生。
「図書館、初めてだったんですね、なんかすごく興奮して、ぐるぐる走り回って観察していましたよ」
「ひえ〜、すみません…」
「そんなそんな、もっと騒がしい子がいくらでもいたので、ちびくまくんなんて、大人しいほうです。それに、ちゃんと自分で読みたい本を選んで持ってきて、カウンターへも自分で持っていって借りてきたんですよ。バスの中でも、とてもおりこうさんでした。ちびくまくん、お母さんに、借りてきた本、見せてあげて」
ちびくまの手提げの中には、「14ひき」シリーズが3冊。
それに、途中で先生が書いてくれたものでしょう、図書館までのバスルートとバス代を書いたメモ。
ちびくまは「おかあさん、おうち、ほんよむの」と早速催促にはいります。
「ちびくまくん、本を返すときは、また先生と一緒に行こうね」
そう担任に言ってもらったちびくまは、ご機嫌な顔でバイバイと手を振りました。


6/24

去年、公文の「かきかたカード」というのを買っておいてありました。
カード1枚1枚にひらがなが1画ごとに色分けされており、ホワイトボードマーカーで何度もなぞって書いたり消したりができるというものです。
1年近く、ちびくまの目につくところにおいてあったのですが、時たま出して並べて眺めているほかは、手にとっていることがありませんでした。

それが、なんと今日、自分で取ってきて、「おかあさん、ちびくまくん、ひらがな、べんきょうする」と言って、自分からひらがなを書く練習を始めたのです。

実はちびくまは、小学校に入るまで、字がまったく書けませんでした。
ひらがな・数字は2歳半までに完璧に読めるようになっていたのに、です。
彼は、自分の腕や指を、自由に動かすことができないからです。6歳半になった今も、Vサインができないのです。指を折ってモノを数えることはわかっていても、指を折ることができないのです。

そんな彼ですが、障担が彼の興味やこだわりを上手に生かして課題を与えて指導してくれたため、今では「ひきつけを起こしたミミズ」のような線ではありますが、「頑張ればなんとか判読できることもある」程度のひらがなが書けるようになりました。

でも、家で練習させようとすると、嫌がります。「苦手なことなのに、学校できちんとしているのだから、家では強制するのはやめよう」と担任と話し合って、彼が自分からやる気になるのを待っていました。やっと「その日」が来たらしいのです。

ちびくまは1字書くごとに、私の顔を見て、褒め言葉を要求します。母は、心の中でガッツポーズしながら、「上手上手、うまく書けたね」と褒めちぎります。とうとう、50音全部書けました。ちびくまは、並べたカードを一瞥してから「もういっぺん、おべんきょうする」と言って、今書いた文字を消して、また「あ」から練習を始めました。

彼がきちんと字を書けるような感覚を身につけるのはまだまだ先でしょう。でも、障担が上手に育ててくれた彼の「やる気」と、「ぼくにはできる」という自信は、今すぐに役に立つ力です。


6/25

プール開き以来、ずっと悪天候が続いていたのですが、今日は梅雨明けを思わせるような、ギラギラの晴天。M小でのプール初体験となりました。

朝、先生に、「ちびくまくん、今日はプールにはいれるよ」と言われると、「は〜〜い!」と飛び切り良い返事をしたそうです。
もちろん、プールの中では大喜び。
ちびくまは、1年生のプール授業と、障級単独のプール授業の両方に参加するため、普通学級の子の倍、プールに入れるのです。
相変わらずオイシイ生活(笑)。

ちびくまの、学校に行く楽しみが、またひとつ増えました。


6/28

ちびくまは、食べ物の色、形、食感にものすごく、こだわります。
今まで、パンは「5枚切りの食パンを硬めにトーストして、ネ○○○トといちごジャムを重ねぬりしたもの」しか食べられませんでした。
これでは、外出したとき、とても困るので、バターロールが食べられないかと思って試したら、これはあっさり食べてくれるようになりました。
ちびくまは、偏食で給食が少ししか食べられないのに大食漢、おまけに甘いお菓子を食べないので、毎日、帰宅後に軽食が要ります。
これにも、バターロールが使えるようになったので、助かります。

さて、今日は帰宅後すぐ軽食を食べたのに、夕食を作っている傍らで、ちびくまの「おなかすいた」が始まりました。
「もうすぐ、ご飯ができるよ」
「ちびくまくん、おなか、ぐーぐー。おなかぺこぺこ、まてないよ」
「うーん、じゃあね、丸いパン、食べて待っていて」
「まるいパン、たべる」
ちびくまは、バターロールを袋ごととりだして、ニコニコ。

今日は、夕食の用意にとりかかるのが、だいぶ遅かったし、まあ仕方ないな、と思いながら、パンを食べさせたことに安心して、パソコンのところにいって、メールチェックをしていました(なんたる母親だ)。

そして、リビングへ戻ってみると、そこには、バターロールの空き袋が…。あれ、これ、今日8個入りのを買ってきたばかりなのに…。リビングの床には、パンクズがあちらこちらにちらばっています。まさか…。
「ちびくまくん、丸いパン、8個あったのに、全部なくなってるよ」
ちびくまの顔色がさっと変わります。やっぱり。
「ちびくまくん、丸いパン、8個も食べたの?全部食べちゃったんだ」
「あ、あ、あ、ごめんねー。ごめんねー」
さすがに、ヤバイ、と思ったようです。床に散らばった、パンくずを、慌てて両手でかき集めています。
「ちょっと、食べすぎじゃないかな?」
「ごめんねー、ごめんなさーい、これでぜんぶだよー」
そう言って、ちびくまは、かき集めたパンくずを、私の口に押し込んでくれたのでした。
いや、だから、「独り占めしたこと」を怒ってるんじゃ…。(笑)

彼の「勘違い」に笑ってしまって、ちゃんと叱れなかったので、作戦を変更することにしました。今、うちのキッチンには、こう書いた紙が貼ってあります。
「まるいパンは、1こたべます。」





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