ちびくまスケッチ(2001年9月)


9/1

いよいよ2学期。「今日から学校だよ。またバスがお迎えに来てくれるよ」と言うと、ちびくまはウキウキ。
喜びいさんでバスに乗り、出かけていってしまいました。(母はちょっとサビシイ)

教室に着くと、さっそくお気に入りのおもちゃを出して遊び、先生が新しく追加してくれたおもちゃも、目ざとくチェックしていたそうです。
体育館での始業式も交流級の子どもたちと共に並んで、問題なく参加できました。
連絡帳には「校長先生のお話のときに、目が輝いていました」。ヒマさえあれば、障級を覗いてくれ、障級の行事には必ず参加してくれる校長先生が、ちびくまは大好きなんです。

「夏休みのブランクを全く感じさせない、順調なすべり出しです」とは、障担のお言葉。


9/4

今日は、1年生全員が近くの神社に出かけます。
ちびくまも、もちろん、障担に付き添ってもらって、一緒に行きました。

多動はかなり収まっているものの、ちびくまはM小障級きっての元気者。他の子どもたちに混じって、神社の裏山に登ったり、坂を登ったり降りたり、賽銭箱を覗き込んだり、と、散々障担を引っ張りまわしました。

普通学級の子どもたちと一緒の行動も、かなりとれるようになってきました。
集団のもつ力も、あなどれないな、と思います。


9/5

今日から、運動会の練習が始まりました。今年の1年生は、かけっこ、玉入れ、2年生と合同のダンス、それに全校種目の大玉転がしと応援合戦に出場します。

今日の初練習は、体育館で、ダンスの練習。
先生が「体操服に着替えてね」と言うと、ひとりでさっさと着替えて、「たいいくかん?」と訊きにいったそうです。ダンスでは、全体への口頭指示が主になるので、障担はちびくまのために、指示をひらがなで書いて見せてくれています(自閉症の特徴である視覚優位への対応)。でも、ちびくまは、今日はその場に座ったり寝転んだりしながら(障担が「たいいくかんではねません。」と書いてくれたら、大喜びしたらしい)、みんながやっているのを眺めていたそうです。さて、これからどうなりますやら。

今日は、1年2組の掃除当番にも行きました。
これまで、ちびくまは免除されていたのですが、交流級に行くことが負担にならなくなってきているので、2学期から給食当番や掃除当番にも参加することになったのです。もちろん、介助つきですが。
今日は、「机を4つ拭きます」という指示で、拭き掃除をしました。やりかたは、介助の先生がお手本を見せてくれます。こうして、少しずつ学校生活の幅が広がっていっています。


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9/7

1年2組の学級会で、係決め。ちびくまは今学期は「なかよし係」になりました。
「なかよし係」とは、子供同士でもめたり、ケンカになったりしたときに、「ケンカはあかん」「仲ようせんとあかん」と声かけする係、だそうで(笑)。
「ちびくまくんには、ぴったりの仕事です」というのが、障担の感想です。

相変わらず、運動会の練習が毎日続いています。ちびくまは、特にストレスがかかっている様子もなく、淡々と練習をこなしているようです。と言っても、「その場で見ているだけ」の人だそうですが。
初めて習う、ラジオ体操も、ジャンプのところだけ、参加しているのだとか。


9/9

今日は日曜日。夫は出張中なので、ちびくまと2人きりです。
なんとなく、ちびくまの様子がおかしいので、熱を測ってみると、38.3℃。わちゃ〜。
新聞で、休日診療の医院だけは確かめておいて、しばらく様子を見ます。
午後には熱がさがりはじめたので、ほっとしますが、ちびくま、食欲が全くありません。
熱はさがってきたのに、それに反比例するように、セキが出始め、ぐったりしてきました。
「どうしようかな〜、お医者さんに連れて行こうかな〜」
迷っている間に、時間がどんどん過ぎていきます。
ちびくまは体がつらいのか、「おかあさん、抱っこして」を連発。ついに、トイレに立つほかはちびくまを抱いて過ごすはめになりました(横になると息が苦しいのか、立て抱き(?)してもらいたがる)。
「お腹痛い?」と訊くと、「おなかいたい」、「お腹痛くない?」と訊くと「おなかいたくない」と答えるので、
全く要領をえません。それでも、「しんどい?」には「しんどい」、「しんどくない?」と訊いても「しんどい」と答えるので(前回発熱してしんどそうな時に、「ちびくまくんは、しんどい。ちびくまくんは、いま、しんどいです。」と連呼して教え込みました。こういうことは元気なときには教えられないので)、これは間違いなさそうです。(でもそれくらいは見ただけでわかる(~_~メ))
病気になるたびに、「ちゃんと言葉をしゃべってくれたらなあ」と思います。


9/10

朝一で熱を測ってみると、37.3℃。顔色も昨日よりはよく、セキが残っているだけですが、昨日一日何も口にしていないので、とりあえず学校は休ませることにしました。

何分、元気者でとおっているちびくまなので、連絡すると、先生方はびっくり。
かかりつけの小児科に連れて行くと、「喉がかなり腫れているから、食欲が無いのはそのせいでしょう。熱も下がっているし、特に心配ないと思いますよ」とのことで、ひと安心。

もらった薬を飲んでひと眠りすると、ケロッとした顔で、ご機嫌でパソコンで遊び始めました。

夕方、近所に住む、隣のクラスの介助員のT先生が、「具合どうですか〜」と覗いてくれます。
「ちびくまくんでも病気になるの、ってみんなびっくりしていたよ」(笑)。
障担は、ちびくまへのお手紙をことづけてくれていました。
「はやくよくなって、いっしょにおべんきょうしようね。ちびくまくんのニコニコえがおをまっています。」
ひらがなで書かれた手紙を読んで、ちびくまは、ニコニコしています。
言葉の理解はどこまでできているのかわかりませんが、「字が読めるって、便利だなあ」と思わずにいられません。ちびくまに、その能力だけはくれた神様に感謝。


9/12

毎日、運動会の練習が続いています。ちびくまは最近、盛んに指で地面に数字を書くようになりました。
読むほうは完璧なのに、運動障害のためか、字を書くことは大の苦手で、今まで進んではとりくもうとしなかった課題だったのに。
ちびくまが字を書き出すと、周りの子が、「ちびくまくん、なにかいてんの」と言って覗き込み、読み上げてくれるので、喜んで、100まですらすらと書くようになりました。
100まで書き終わると、今度は逆に100から1まで書いたりします。

でも、ダンスの練習中もずっとしゃがんで地面に数字を書いてばかりいるので、障担が、しょっちゅう、「今はダンスの練習です。地面に字を書く時間ではありません」と声をかける必要があります。
「本人は、よーくわかってるんですよ。私と目が会うと、ニタッと笑って『じめんにじをかいては、いけませーん♪』なんて言うんです」とは、障担の弁。

運動会への意識付けに、先生たちが子どものお気に入りのキャラクターを使って、掲示物を作ってくれていますが、ちびくまの好きな「おさるのジョージ」は、黄色い帽子のおじさんに、「地面に字を書かないでダンスをしてね」と言われているのでした。(笑)


9/16

日曜日。朝から家でぼーっとしていたら、突如ちびくまが、「これから、○ティに行きます」と宣言。
「退屈だから、○ティに連れて行け」ということなんですね。
夫も、ちょうど出張先で撮った写真を現像に出さねばならない、というので、親子3人で○ティへ。

ちびくまの目的は、ここのおもちゃ売り場だろうとふんでいたのですが、今回はなんと、ゲームセンターが目的でした。母の財布と、メダル交換機を交互に指差し、「おかあさん、おかねをいれる」。
お〜〜い、そんなのどこで覚えてきたの?

まあ、現像を1時間待たねばならないので、千円分だけメダルを買って、ちびくまに半分渡しました。
でも、ちびくまは、メダルを山のように入れて、払い出しボタンを押して、ジャラジャラ落ちてくるのを楽しみたいだけだというのが判明。
おまけに、時々メダルを落っことして、行方がわからなくなったり、でたらめにボタンを押して、あっという間にすってしまったり、ともったいないことこのうえない遊び方をしていました。

メダルがなくなると、追加を要求しましたが、これには応じません。ちょっとギャーギャー言ってましたが、すぐに他人が遊んでいるゲーム機のキラキラチカチカに気をとられて、走り回って遊んでいました。

・・・将来、パチンコ屋やゲーセンに入り浸るようになったら、困るな〜。


9/17

今日は、交流級の、パソコン指導に参加。
親に宛てて、運動会の招待状を作る、という課題です。
本人は、朝の会の時に、「きょうの予定」にパソコンルームが入っているのを見て、大喜び。
「時間がくると、誰が何にも言わなくても『ちびくまくんは、パソコンするの』と言いながら、さっさとパソコンルームへ向かっていました」(連絡帳より)。

パソコン操作なら、普通学級の子以上によく知っているちびくま。ファイルの開き方も、マウスの操作も、「先生の指導を待たずにどんどん先にやっていました」(介助の先生談)。
お絵かきソフトだけではものたりなくて、「いちたろう、する」と言っていたそうです。


9/19

「運動会の練習を、見にいらっしゃいませんか」と障担に誘われて、学校へでかけました。

1時間目、1、2年生合同のダンスの練習です。
入場は、障担にそばについてもらって歩き、隊形移動の際は、なんとなくみんなに付いていっていますが、ダンスそのものは全く無視で、みんなが踊っている間、ひとりでしゃがんで、地面に字を書いています。
なるほど〜、毎日連絡帳に先生が書いているのは、これだったのね(笑)。

私は、「普通の子」が出る運動会を親の立場で見るのは初めてなので、「うっわー、1年生って、もうこれくらいの振り付けのダンスができるものなんだ〜」と感心してしまいました。
でも、不思議に、自分の子が同じようにできないのを、切なくは思いませんでした。去年くらいまで、「普通の子」をテレビで見ても、「ああ、ちびくまには、こんなこと考えられない」なんて落ち込んでいたのに。

これまで、よく知らないまま、漠然と「普通の子」への憧れのようなものを心のどこかに持っていたのが、、「普通学級」の子もいろいろな子がいる、というのを目の当たりにして、やっと「健常児vsちびくま」という形で捉えるのではなく「他所の子は他所の子、ちびくまはちびくま」だと、個のレベルで捉えられるようになってきたのかなあ、と思いました。

さて、練習が終わって、教室へ向かっているとき、何人かの女の子たちが、ばらばらと駆け寄ってきました。
「***ちびくまくんのお母さん?練習見にきたん?」
「うん、こんにちは」
「あたしら、ちびくまくんと同じ組やねん」
「そう、いつも仲良くしてくれてありがとうね」
「おばちゃん、あんなー、ちびくまくん、うちの教室来たときなー・・・」
ぎくっ。何言われるんだろう。
「めっちゃ、おもろいねんで」「うん、ちびくまくん、いろいろおもろいこと、言うねん」
どてっ。
「そうなん。ちびくまくん、家でもおもしろい子なんよ。また一緒に遊んだってな」
「うん!」
あはは。障担が「うちの学校の子って、いろんな障害の子がいつも身近にいるせいか、心が柔らかいんですよ」って言ってたのが、実感としてよくわかりました。「ちびくまくんって、結構人気者なんですよ。面白いって」という障担の言葉も、まんざら嘘ではなかったようです。


9/20

ちびくまの大好きな「14ひきシリーズ」(いわむらかずお作の絵本シリーズ)と「もんぴー」(NHKおかあさんといっしょのクレイアニメーション)が、ちびくまと一緒に玉入れやダンスをしている、という貼り絵を、介助のN先生が作ってくれました。

ちびくまは、「14ひきのうんどうかい!」と言って大喜び。
「その子の好きなもの、興味のあるものを使って、課題への意欲を引き出す」という基本を常に押さえていてくれるこの教室は、ちびくまにとって居心地のいいところに違いありません。


9/23

いよいよ、運動会本番。すっきりとした秋晴れの日曜日です。

最初は入場行進。隣の女の子に手をつないでもらったちびくま、ちゃんと列に並んだまま行進します。でも歩調はマイペース(笑)。
開会式の間は、おもむろに座って、地面に字を書く。
ラジオ体操は、ジャンプの部分だけ参加。ほぼ予想通りの展開です。

1年生の最初の出し物はかけっこ。
ちびくまは、旗の合図でちゃんとスタートできたのですが、ニコニコ笑いながら悠然とゴールまで歩きます。間がもたないので、先生が「がんばれー、がんばれー、もう少し」とアナウンスを入れますが、本人は全く気づいていません。おまけに、途中で本部席に大好きな校長先生を見つけて、皇族よろしく笑顔で手を振りながら他の子に大幅に遅れてゴールイン。(「運動会で手を振ってもらったん、初めてやけど、嬉しかったわ」とコメントしたという校長先生、私もあなたが大好きです)

ダンスは、隊形変化はばっちり。でもやっぱり字を書いていました(笑)。

全校参加の応援合戦は、前から2番目の列で、もうノリノリ。もともと、ポンポンを振りながら、ピョンピョン跳ぶ振り付けなので、ちびくまはマイペースでも、他の子達と調和した動きになっていました。

最後の出し物、玉入れ。入場の時に、ちびくまが列を逸れると、後ろの子どもたちがそれにぞろぞろ付いていってしまいました(笑)。とっさに飛び出した障担が、ちびくまをゆっくり正しい位置に誘導して、事なきをえます。玉入れそのものは、見て楽しむヒト。玉数えは得意中の得意、地面に字を書きながら、一緒に数えます。

でも、ちびくまは去年に比べて、確実に成長しているな、と感じられたことがありました。
去年の通園施設の運動会では、自分の席にじっとしていられなくて、ふらふら歩きまわったり、他のクラスの種目に飛び入り参加したりしていました。そのことを話すと、障担は、「練習の様子を見ていると、もうそういう心配はなさそうですが・・・見学の時には、本人の様子を見て、負担になっていそうなら教室で1人で息抜きさせる、とかしますので」と言ってくれていました。
でも、ちびくまは、結局最初から最後まで、交流級の子供たちと同じ席で、運動会を楽しんでい(るように見え)ました。念のために、介助の先生が少し離れてついていてくれましたが、ほとんど助けがいらない状態でした。私が後ろから見ているのに気づいても、寄ってくるわけでもなく、周りの子達となんとなくもたれあったりふざけあったりしながら(会話は成立しないはずなのに)座っているのです。

まわりの状況と、今自分に要求されていることを感じ取って、それなりに自分で折り合いをつけて参加しているように見えました。それだけでも、「よく頑張った!」って褒めてやりたい、親ばかの私なのでした。

もうひとつ、収穫。それは、この学校ではどんな重度の障害のある子でも、「その子なりのやり方で」健常の子と同じ競技に参加していたということです。もちろん、その子その子のニーズに合わせて、介助がついたり、参加方法が調整されていたりしましたが、不思議に、誰もが「やらされている」のではなく「やっている」という顔で参加していました。そして、車椅子でリレーに出る子にも、歩行車を押してリレーに出る子にも、先生と手をつないで走る子にも、「特別な」声援は、子どもたちからはあがりませんでした。「どんなに重度の障害を持つ子でも、お客さんや哀れみの対象にはしない。あくまで、仲間、として扱っていく」という、この学校の決意のようなものを、見た気がして、「この学校にしてよかったなあ」と思ったのでした。


9/26

今日は、運動会の予備日になっていたので、給食がありません。
予定表には「弁当を持たせてください」とありました。でも、明日は障級の遠足。
「2日連続でお弁当作るの、面倒だな〜」(わはは(^^ゞ)と思っていたら・・・。

障担から連絡があり、「26日のお昼ご飯は調理実習でお好み焼きと焼きそばを作りますので、お弁当の用意はいいですよ〜」。2日連続で早起きじゃ、お母さんたちがかわいそう、という配慮のようです。

ちびくまは、いつも障担と2人きりで給食を食べているので、みんなが揃っているのがちょっと辛くて、「ひとり離れた場所でもくもくと食べて(連絡帳より)」いたそうです。


9/27

今日は、障級の遠足。今回の行き先は、隣県にある、T動物園です。
うちの県にも、大きな動物園はあるのだけど、「どうせなら、家族では連れて行けないような所へ連れて行こう」という発想で、わざわざ遠いところを選択したのだとか。

バスの大好きなちびくまは、朝から超ご機嫌。
「いつも先頭を歩いていたくて、元気にさっさと歩いていました。でも、ちゃんと振り返って、みんながついてくるかどうか確認しながら動いているのはさすがでした。」(連絡帳より)

「午前中は、集団行動をして、お弁当の後は、それぞれの子の興味に合わせて動こうか、という先生たちの打ち合わせを聞いてないような顔をしてしっかり聞いていた」(障担談)ちびくま、お弁当が終わると、「のりものいくの!」と障担に要求。
更に動物を見に行くほかの子どもたちとは別れて、障担についてもらっての単独行動になりました。

親と一緒の時は、「お金を入れる」と要求するちびくまですが、相手が違うのはよくわかっているらしく、先生に「お金を入れて欲しい」とは言いません。でも、「ちゃんと相手をわきまえて、我慢しているのがいじらしくて、つい」(障担談)障担がお金を入れてくれ、電車の乗り物に乗せてもらいました。

障担が「ちびくまくんと、先生の内緒だよ」と言うと、ちびくまは「ないしょ、ないしょ」と応じたらしいのですが、帰宅後、「ちびくまくん、動物園で何したの?」という私の問いに、「電車、お金入れる、100円、200円」と答えたので、のりものに乗せてもらったことがすぐわかりました。

あとで、「『先生が、そんなけじめのないことをしてもらっては困ります』って、お母さんに叱られると思って、黙っててーって言ったのに〜」と言う障担と2人で大笑い。でも、「過去の出来事」に対する質問に、それとわかる形でちびくまが答えたのは、これが初めて。そのことで、障担と私は、2人で喜びあったのでした。





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