ちびくまスケッチ(2002年11月)


11/1

うちの市では、通園施設などにいる子の就学先は大抵9月までに決定します。県の認可が必要な障害児学級新増設の場合を除いて、保護者の希望どおりに就学先が決まるからで、私の知る限りでは、もめることは少ないようです。

それで、もう、次の学年の就学活動が始まっていて、今日は再来年4月に入学する子どものお母さんたちがちびくまの学校を見学にきました。

ちびくまは、大好きな「おきゃくさま」なので、大張り切り。
一行が教室に入ってくると、さっそく数を数えて、「おとな11人、こども2人、11+2=13、ぜんぶで13人」と言い、お母さんたちに「すごーい」と言って貰って大得意。

5クラスも見学しないといけないので、短時間でお客様が出て行ってしまうと、机を叩いて怒っていたそうです。
もっともっといいところを見せて、褒めてもらいたかったのでしょうね。

11/5

いろいろできることが増えている一方で、相変わらず身辺自立だけは、ぽっこりと落ち込んでいるちびくま。

着替えと手洗いはなんとかできるけれど、洗面・歯みがき、入浴・洗髪は全介助、排泄は時間誘導もできずオムツ着用、食事は家では手づかみが主。

普段は「子どもの得意なことを伸ばす」ことに主眼をおいて生活しているので、あまり意識することはありませんが、何かの機会にこうやって「できないこと」を意識して並べるとどよーーーんとして、「私がちゃんと”訓練”しようとしなかったからかなあ」などと落ち込んでしまいます。

さて、今日ちびくまと2人でご飯を食べていたときのこと。
彼は殆ど手づかみですが、毎回食事の度に「お箸か、フォークか、スプーンか」を選ばせることにしています。
以前は、スプーンを選ぶことが多かったのですが、学校で、周りの子どもを意識してお箸を使おうとするようになってから、家でもお箸を選ぶことが増えてきました。今日もお箸を選びます。
つい手づかみしてしまうのもわかっているので、手拭用のオシボリも用意して「いただきます」。

「手づかみとはいえ、美味しそうに食べてるなあ」と思って、ちびくまが食べる様子をじっと見ていると、ふとちびくまと目が合いました。
すると、ちびくま、さっとお箸を持って、上目遣いに私を見ながらご飯を食べるのです。
いや、別に、お箸を使ってない、って責めるつもりはないんだけど。(笑)

「ちびくまくん、お箸使うの上手ね。ご飯がお箸で食べられて、かっこいいね。さすが2年生ね」というと、さっと満面の笑みに換わって、「もっとほめて〜」と言わんばかりに、私が見ているのを確認しながら、一生懸命お箸を使って食べつづけます。。

うん、減点法であれもできない、これもできない、と考えるのはやめにしましょう。本人だって、他の子にはできるのに、自分にはできないことが
たくさんあるらしいことに、気がついて気にしているんだもの。
「いつかはできるようになりたい」という本人の気持ちを消さないことの
方が、今はきっと大切なはず。

・・・でも家計を圧迫するオムツ代・・・やっぱりトイレだけでもなんとかなって欲しいーーーー(T_T)。


11/11

去年閉店した国道沿いのホームセンター跡地に、外資系の大型玩具店がオープンすることになりました。

毎日、その建設現場の前を通学パスで通るちびくま、「おかあさん、ト***ス、11月19日オープンだよ」と毎日言いつづけています。

ト***スにはアメリカ時代もよく行っていたし、帰国後も2店ほど行ったことがあるので、どういうところかはよくわかっているようです。

でもちびくま、学校でも毎日同じことを言っていたらしい。
今日、ちびくまのノートに障担の字で、「11月19日に、お天気がよかったらみんなでト***スのお店を見学に行きましょう」と書いてありました。

もちろん、大喜びのちびくま。
それから、家では「ト***スオープン」のことをぴたっと口にしなくなりました。目的は達した、ということなのでしょうか(笑)。


11/13

今日は音楽会の児童鑑賞会です。
本来これは子どもが他学年の演奏を鑑賞する機会、ということですが、より刺激の少ない環境での子どもをゆっくり見ることができるので、障級在籍の子の親は、こちらを見に来ることも許されています。
私も何人かのお母さんたちと一緒に見に行きました。

ちびくまは交流級の子供たちに混じって体育館の床に敷いたシートの上に座っていました。少し離れたところに介助の先生が1人ついてくれていますが、基本的にはこういう場でも立ち歩いたり大声を出したりということはなくなったようです。

さて、いよいよ2年生の本番。ちびくまは最前列です。
入場の時は、後ろの子が電車ごっこのようにちびくまの肩に手を置いて、入ってきました。これ、触覚過敏のある子どもだと「よけいなお世話で大迷惑」になってしまうケースもありますが、ちびくまにとってはいつも電車ごっこを一緒にしている仲間の子だったので、特に抵抗なく受け容れているようでした。

まずは歌から。これはちびくまも大好きな歌なので、ニコニコしています。ちびくまはメロディーも歌詞も完璧に歌えるのですが、口を殆ど開けずに小さな小さな声で歌っているんです、と練習に付き添っていた障担が教えてくれました。去年はひとが歌っているのを聞いているだけ、だったのでこれも進歩といえるでしょう。

次は和太鼓と鍵盤ハーモニカの合奏。最後部の立ち位置までは、さっきと同じ子が誘導してくれていました。太鼓のバチには、持つ位置を示すカラーテープが貼られています。
太鼓のリズムはばっちりでした。間奏の間に、今度は鍵盤ハーモニカを首からかけて(幕の裏で介助の先生が手伝ってくれます)また壇上へ降りて、構えるのですが、今度は誘導してくれるはずの子が忘れて自分だけ降りてしまったので、ちびくま、壇の最上部で立ち往生。
でも、演奏が始まると、とりあえずその位置で鍵盤ハーモニカを弾きはじめました。

あわてて駆けつけた障担が、本来の立ち位置まで誘導して、無事に演奏終了。一瞬ひやっとしましたが、ハプニングが起こってもパニックにならずに、とりあえずみんなと合わせて演奏をしようとしたところに、彼の大きな成長を感じました。

自分の演奏が終わると、また交流級の子たちと、席に戻って、少しふざけたりもしながら、とうとう最後の演目まで立ち歩きもなく過ごすことができました。

去年はただそこにいるだけ、ただ壇上から逃げないでいるだけ、だったちびくまが、今年はちゃんと演奏もできた、というのが、大きな驚きでもあり、この1年の大きな成長を実感して、母も思わずうるうるきてしまいました。

本人も、満足いく出来だったようで、私を見つけるといい笑顔で駆け寄ってきて「ちびくまくん、すごく上手だったよ。よく頑張ったね」と言うと、「はい!」と元気な返事が返ってきました。


11/15

今日はいよいよ音楽会本番。

児童鑑賞会の時に最初から最後まで聴いたので、今日は少し遅れて、前半の最後から2番目のちびくまの出番の時だけ見られるようにでかけていきました。

保護者が演奏中に出入りしないようにドアのところに立って番をしていいたのはちょうど去年ちびくまの交流担だった先生。

私の姿を見つけると、「ちびくまくん、児童鑑賞会の時、素晴らしかったですね。私、1年でこんなに伸びるものかと思って、涙が出てしまって」と再びうっすらと涙を浮かべて言ってくれました。

去年、自分でも「どういう風に接すればいいのかとおっかなびっくりで」と言いながら、なにごとも「ちびくまくんにはちびくまくんなりの参加、というものがあるから」と、一切無理強いせず、でも、きめ細かくちびくまを観察し、褒め、「学校という環境」が彼にとって安心で快適な場所に
なるまで、辛抱強く待ってくれた先生。

2年生になって、彼がどの行事にも余裕をもって楽しみながら参加できているのは、この交流担と障担が、綿密に連携をとりながら、辛抱強く地道に集団参加のための基礎作りをしてくれたからだろうと思います。

さて、いよいよ本番。
ちびくまの演奏は、児童鑑賞会以上に上出来でした。
今度はちゃんと太鼓からひな壇への移動もスムーズにできました。和太鼓も、鍵盤ハーモニカも、ちゃんと演奏できていました。

ほんの数年前でも、今日のちびくまは想像できなかった。
なんだか「みなさん、ありがとーーー!」という気分の1日でした。

11/19

きょうは、ちびくまが楽しみにしていた、大型玩具店オープンの日。ちびくまは朝からそのことで頭がいっぱいで、大張りきりです。

障担は、ちゃんと約束を守って、ちびくまたちを店に連れて行ってくれました。もちろん、それだけではありません。ちゃんと、その行き帰りに、12月始めに行われるマラソン大会のコースの下見が入っていたのですが。

ちびくまたちは、塗り絵や風船などの粗品をもらって、先生たちを売り場をいろいろ見て、お店を堪能して帰ってきました。

家に帰ってきたちびくまが、まず言ったのは「ちびくまくんは、PI*Oであそびたかったの」。

先生に訊いてみると、テレビゲームのコーナーに行ったら、小さい子がたくさんいたので、あっさりあきらめて他のコーナーへ行ったのだそうです。でも、本当はそこで遊びたかったんですね。

ちびくま、学校では対子どもの関係もだいぶ良くなってきているんですが実はまだ、自分より小さい子が怖いのです。公園で遊んでいても、小さい子が寄ってくるとさっと逃げてしまいます。
傍目には「小さい子に遊具を譲ってあげる優しい子」かも。

11/20

集団の中で飲食をすることがとても苦手なちびくま。

学校の給食も、これまでは障級の教室で障担と1対1で食べたり、週に何回か少数の交流級の子を「お客様」に迎えて食べたりしてきました。

でも、2学期になってから、交流級で給食当番の仕事をした後、そのまま自分の席についてみんなと一緒に「いただきます」の挨拶をしていることが何度もあり、「そろそろ2年1組の教室でみんなと一緒に食べることを試してみてもいいのではないか」という話になりました。

音楽会という大きな行事が終わったので、早速今日から2−1での給食に挑戦することに。

ちびくまが給食袋を持って、障担と一緒に教室に行くと、周りの子達が「ちびくまくん、きょうからこっちで食べるん?やったあ!」と大喜びしてくれました。

ちびくまはちょっと緊張しながら、でもいつもと同じくらいの量を食べ、周りの子を見習って食器を下げ、いつもはくしゃくしゃにするナプキンも(一応)たたみ、その後同じ班の子達に絵本を読んで聞かせるサービスぶりだったそうです。

じっくりと時間をかけて、交流級でも安心できる環境にしてきたことでようやくここまでたどり着いた、という感じで「これまで急がせなくて良かった、と思いました」と障担も言ってくれました。

でも、家に帰ってきたちびくまに、「***(障級)の教室で食べるのと、2年1組で食べるのと、どっちがよかった?」と尋ねると、「***のきょうしつ!」という即答が返ってきました。(笑)

もちろん、障担は、ちびくまにとって「みんなと一緒に給食を食べる」ことがどんなに「頑張り」を要することか、ちゃんとわかってくれています。
その証拠に、ちびくまは給食のあとの掃除当番を当分免除してもらえることになりました。

「集団の中でみんなと同じ事をする」という、日本の学校では最も求められることであり、自閉っ子が最も苦手とすることでもあることとの間で、どう折り合いをつけていくのか、無理強いせず、でも諦めずにタイミングを見ながら少し背中を押してくれる、障担のセンスのよさに、感謝することが多いこの秋です。

11/23

ちびくまが一年生の頃から、先生と私の連絡用の連絡帳とは別にちびくま用の「れんらくちょう」を作って、そこに障担は学校でちびくまが経験したことを、私はちびくまが家でやったことを書き込んできました。

「文字を読むことで情報収集するタイプ」のちびくまに、自分の経験したことと、「言葉」とをリンクさせるための「データ提供」という位置付けです。

ちびくまは狙いどおり、この「れんらくちょう」から多くの言葉や表現を学び、日常生活に使うようになっています。
記憶力が非常に良い彼は、自分の言いたいことを表現する言葉が見つからないと、過去の連絡帳を出してきて、そこから言葉を拾い出していることもよくあります。

さて、今日も昔の連絡帳を出して眺めていたちびくま。突然あるページを私に示して、憮然とした顔で「いぬ」「いぬ」と訴えます。

「え?いぬ、って何が犬なの?」と聞き返すと、ちびくまはある行を指差しました。そこには「ぼくは、わんわんなきました。」と書いてあります。

どうも、「ワンワンなくのは犬だ。ぼくは犬ではない」と言いたかったらしいのです。
・・・母は、オオウケしてしまいました。

11/25

ちびくまの学年で、九九の学習が始まりました。

これまで、算数はずっと障級で個別指導を受けていたちびくまですが、九九の学習の間だけ、交流級でも算数の授業を受けることを障担から提案されました。

掛け算、という概念の理解は、ちびくまにはやはり難しく、個別の指導が必要なのですが、こと「九九の暗記」に限っては、数字の記憶に優れたちびくまなら交流級の子供に伍してやっていける、と考えられるからです。

今日がその一回目。ちびくまは「五の段」をあっという間に暗記して、自分の番がくると、きちんと唱えることができました。
「はい、正解、よくできました」
交流級の先生に、みんなの前で褒められて、大得意のちびくまでした。

11/26

ちびくまのクラス(障級)には、興奮すると金切り声(いわゆる「奇声})をあげてしまうお友達がいます。リラックスしている時の声とは全然違い、呼吸が速くなり、体中がこわばった感じになります。こういう声を出すことは、やはり本人にも身体的負荷がかかっているようです。

全体的に過緊張ぎみのこの子に、自分で体の力を抜く感覚を覚えてもらうため、先生たちは臨床動作法の指導をしています。

今日も、ちびくまのそばで遊んでいるうちに興奮が高まり、金切り声をあげはじめたその子。
すると、ちびくまがその子の後ろにまわって、「どうさ」と言いながら先生がその子にやっているリラクゼーション姿勢をとらせようとしたそうです。

先生たちはびっくり。
そのうち、ちびくまも自分の手には負えないとわかって、「せんせい、○○ちゃんにどうさしよか」と言って、助けを求めました。

「ちびくまくんって、私たちのしていることを、ほんとによく観察しているんですよね。ますます気を引き締めて指導しないといけないわ」
ちびくまのしたことを面白がって、笑いながらそう話してくれた障担でした。

11/28

ちびくまの通うM小では、毎冬、耐寒マラソンをやっています。

今年も12月3日のマラソン大会にそなえて、先週から、毎朝運動場を走る練習が全校で行われてきました。
今日は、障級のメンバーで、大会のリハーサルです。
試走をしてみて、その子が走る適正距離やどのような援助が必要かを調べます。

ちびくま、スタートからマイペースで快調に走りました。去年はなぜ走らなくてはならないのかがわからなくて、歩いたり、止まったりしていたことを考えると、大きな成長です。

ところが、あるところでぴたっと足が止まってしまいました。それは、市の健康福祉センターの駐車場の横。今日は市民無料検診の日で、大型の検診車が4台も停まっていたのです。

特殊自動車大好きのちびくま、こうなったらもうてこでも動きません。試走の終わった仲間が学校に帰ってしまってからも、障担に付き添ってもらって、ずっと眺めていました。あまり長い間、嬉しそうに検診車を眺めているちびくまの姿に検査技師さんたちも気がつき、声をかけてもらって、ちびくまは大喜びでした。

障担は「本番の日は、検診車が停まっていないことを祈ります〜」と言っていますが、さて、どうなりますやら。

11/30

今日は、地元のF小で、「全校お楽しみ集会」があります。ちびくまも、交流授業として、これに参加することになりました。

F小にも、ちびくまの靴箱、ロッカー、机があり、交流級の先生が「このクラスのお友達だけど、いつもはM小のほうでお勉強している」と紹介してくれていることもあり、子どもたちも、「あ、ちびくまくん、今日はこっちへ来てくれたんや」と暖かく迎えてくれます。

ちびくまは、4年生のお兄さんとペアで、前半は「お店屋さん」を回ってゲームを楽しみ、後半は「お店屋さん」をすることになっていました。ところが、私が付き添っているので甘えが出るのか、ぐずぐずしてなかなかゲームに参加しようとしません。それで、思い切って、F小の障担に全ておまかせして、私は保健室で終わるまで待機することに。

色々な先生が折に触れて「いま、○年○組の部屋で○○ゲームをしてます」と様子を知らせにきてくれました。でも、どの先生も口を揃えて、「ちびくまくんって、あんな面もあったんですね!」

ぎくっ・・・。
これまで、交流授業ではヨソイキの顔で、大人しくきちんとしていたちびくまですが、結構やんちゃぶりを発揮して、元気に遊んできたようです。
・・・それ以上のことは、聞かないことにしておこう・・・

でも、「今まで、M小ではこういう場面もあったんでしょうけど、F小でもそういう顔を見せてくれたのが、とても嬉しかったです」と交流担の先生は言ってくれました。

きょうのちびくまの「あのねノート」(ちびくまが自分でその日のできごとを書くノート)には
「F小学校でおべんきょうをしました。もぐらたたきしたよ。ポン」
と書いてありました。


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