ちびくまスケッチ(2003年2月)



2/2

2月に入ってから初めての日曜日。
「どこかに連れていってあげようか?」とちびくまに話し掛けたら
「おでかけしません。ちびくまくんしんどいです。おかあさんといっしょにねんねします」

へっ?と思って熱を測ると、38.3℃。あちゃ〜。
・・・というわけで、1日中2人で布団に入って過ごしました。


2/4

一晩ゆっくり休んで、昨日の昼には熱も下がったちびくま。今日は学校へ行けるかな、と思っていたのですが、本人は
「しんどいです。学校おやすみします」

本人が他に学校に行くのが嫌な理由があってそういっている可能性はまずないことがわかっているので(なんてラッキー)、送迎バスの添乗員さんと障担に電話をして、もう1日大事をとらせる旨を連絡します。

ちびくまは、朝食を食べたあと、テレビを見たり、パソコンで遊んだりしていましたが、
「先生がね、クレープ、ちびくまくんの分を取っておいて、あとで届けてあげるからね、って言っていたよ」
と私が言うと、さっと顔色が変わりました。

実は、今日は、障級で3学期に誕生日を迎える子のための誕生会だったのです。毎学期の誕生会の後は、みんなでおやつを作ってたべます。今回はクレープを作ることになっていました。

「ちびくまくん、クレープ、つくる。クレープたべる」
珍しい事だけど、体調を崩したせいで、今日がその日であることを忘れていたのでしょう。
でも、思い出してしまった以上、もうだめ。
スケジュールが崩れてしまったことに気がついて、めためたと調子が崩れていきます。

「今から行ったら、クレープを食べることはできるよ」と言うと、ぱっと顔が輝いて、「いく!学校いくよ!」と叫んだのだけど、すぐに「学校いけません。だめだよ〜」と言って、泣き出してしまいました。

「どうして?まだしんどいのかな?」と尋ねると「しんどくない」と泣きじゃくり、そのうち、ぼそっと「おかあさん、**(バスの添乗員)さん、でんわした。M先生、でんわした」

ははぁ。それでわかりました。
「今日は学校へ行かない、とお母さんは添乗員さんにも先生にも言った。だから僕は学校へ行く事ができない」ということのようです。さすが自閉症!

そこで、「**さんも、M先生も、ちびくまくんクレープを食べにきてね、と言っていたよ。(時計を見て)4時間めにきてね、と言っていたよ」
と伝えると、たちまち立ち直って、
「おかあさん、おきがえして、学校いこうか!」

普段よりずっとてきぱきと着替えをして、車で学校へ。
飛び入りなのでどうかな〜、と心配でしたが、障担は笑顔で
「ちびくまくん、来てくれたん!クレープ、お友達はもう食べちゃったけど、ちびくまくんの分、とってあるよ」と出してくれました。ちびくまは、「わー、クレープだ。おいしそうだねえ」とニッコリ。

でも、結局、クレープ自体には殆ど手をつけず、その後の給食も殆ど食べず、終業まで教室で絵本を読み、プラレールで遊び、先生方に「あしたはげんきできます」と宣言して帰宅しました。
「スケジュールを曲げない」ことが何より大切なことだったわけね(笑)。


2/5

ちびくまは、「見た動作を自分の体で再現する」ことが大変苦手です。

なので、8歳になった今も、「バイバイ」は伸ばした腕をタテにぶんぶん振るとか、腕はまっすぐ前に突き出して手首から先をひらひら振るとかになってしまいます。

そして、お辞儀は「膝に手を当てて、膝を曲げる」。文字通り「頭を下げて」いるわけですね。どう見てもそれは「屈伸運動」(笑)
何度か教えたことはあったのですが、本人が「教えて欲しい」と要求を出さないのにこちらが指導しようとすると、本人のやる気をそいでしまうことが多いので、「まあ、誰に迷惑をかけるわけでなし」と今のところは傍観しています。

さて、今日、2日ぶりに朝から登校して、4年生の担任の先生に、「あら、ちびくまくん、もうげんきになったのね」と声をかけてもらったちびくま。
「よくなりました」と言いながら、やっぱり膝を曲げて「ちびくま式お辞儀」をしました。

それを見ていた人たちからいっせいに「かわいい〜〜!」と声があがって、ちびくまは大満足。

数日ぶりにあった交流担には、どこで覚えてきたのか「うん、いいよ!」と返事。(これまではずっと「はい」だった)
給食時には先生たちがまだ打ち合わせをしていると「さっそく(お先に、の意でしょう)いただきます」
早速フル回転で学校生活を楽しんでいる模様です。


2/7

今日は交流級の生活の授業で、地元の郵便集配局を見学。
郵便屋さんの赤いオートバイは、以前からちびくまのこだわりの対象ですから、ちびくまはこの日を楽しみにしていました。

学校から外に出る時も、障担を心配させることはまずなくなったちびくま。みんなと一緒に並んで歩いて、郵便局まで無事着きました。

郵便局の中でも、まわりと歩調を合わせて回り、説明も静かに聞き、「説明用ビデオ」も皆と一緒に喜んでみたそうです。

その後、他の子達は「質疑応答」になったのですが、ちびくまには少し大変だし、これまでかなり頑張っているから、と思った障担が「外に出て、駐車場で赤いオートバイや車を見ようか」と提案してくれると、大喜びで、学校に帰る時間になるまでじっくりと眺めてきたそうです。

帰宅したちびくまの第一声は、「おかあさん、きいて。ゆうびんきょくいったの。ゆうびんやさんのオートバイ、見たの。おもしろかったよ」

そうでしょうとも。
その晩、郵便局のオートバイの車種は何で、ナンバーは何番と何番があるか、郵便車はどこのなんという車で、ナンバーは何番で、なんと書いたステッカーが張ってあるかまで、言わされた(もちろん本人は全て覚えているわけだけど、母はそれを知らない、というのがまだいまいちわかっていない)母だったのでした。


2/11

夕方、なんの前触れもなく、いきなりしくしくと泣き出したちびくま。
こういう時の恒例で、抱き寄せて「どうしたの?なにが悲しいのかな?」
と訊くと
「キャンプのとき、ちびくまくんは、ごはんだごはんだのうたがいやだったの」

市教委主催の夏の交流キャンプの食事の時は、全員が食堂に集まって、「ごはんだごはんだ」の歌を歌ったのですが、それが(理由はわからないけれど)嫌だった、ということのようです。

でもね、ちびくまくん、一昨年の夏の交流キャンプのことを今言われても、お母さんはどうともしてあげられないわ。(~_~;)

こういうことがしょっちゅうあるから、自閉っ子の生活って、本当に一つ一つのことを気配りしておかなきゃな〜、と思う毎日です。


2/12

今日は交流級での日番。
朝の会や給食時の司会の役ができるので、ちびくまは前日から介助の先生に生徒役をさせて練習するほどの気合のはいりようです。

今朝も起きた時から「きょうは、ちびくまくんは、2年1組のにちばんです。しかいします」と宣言していただけあって、普通の司会はまったく危なげなくこなすことができたそうです。

更に、今日から2年生にも「情報」の時間が始まって、パソコンで本格的にインターネットができることになったので、日頃の張り切りぶりに拍車がかかります。

周りの友達が、ローマ字入力やキーワード検索に四苦八苦するなか、1人どんどんマウスとキーボードを操作してはご満悦だったそうです。


2/14

バレンタインデーのパーティをしよう、とちびくまの障級の先生たちが大きなチョコレートケーキを買ってくれました。
クラスのみんなと、3年生の交流担(2年生と4年生の交流担は女性)でいただきました。

ちびくまは、自分の交流担の先生も好きですが、この3年生の交流担のA先生の大ファン。(障級には、各交流担の先生もしょっちゅう出入りしているので、学年が違っても顔を見ることはよくあるのです)
日頃から「ちびくまくんも、3年生になったらA先生のクラスになるの〜」と言い続けているくらいなので、日頃はなかなか一緒に活動することがないA先生と一緒にケーキを食べられる、というので大喜び。

ちびくまは、最近やっとケーキを出されると食べるようにはなったものの、チョコレートには手を出した事がありません。お菓子やデザートの類が全く好きではないので、それを知らない人からおやつを出されると、「嫌いなものを食べるように強要された」と感じて、パニックになってしまうことがあるくらいです。

「ひとりだけ食べられないと可哀想だから・・・」と心配した障担が以前食べたことのある、生クリームのケーキも用意してくれていたのですが、そんな心配もよそに、なんとおかわりまでして食べたそうです。

さて、パーティのあとは、「教室の飾り作り」。
卒業する先輩や、新しく入学してくる子どもたちのために、工作で花やちょうちょの飾りを作っているのですが、前回もちょうちょ作りを嫌がったちびくま、今日はなんと
「ちょうをつくるんだったら、さんすうをするの(また蝶を作るくらいなら苦手な算数の勉強のほうがまし)」と宣言したそうです。

「そこまで言われたら、とても蝶を作りなさい、とは言えませんでした」と障担の談。こういう自己主張が、本当に強くなってきています。


2/17

今日は、「音楽集会」。
これまでは、全校で一緒に歌を歌ったり、という内容だったのですが、3学期の〆として、「クラス対抗合唱コンクール」が行われました。ちびくまも、交流級の一員として参加します。

ちびくまのクラスが選んだ曲は「おさかな天国」。
毎日、「朝の学習」の時間や音楽の時間に練習を重ねてきました。学級会の時間には、さかなのお面を作り、振り付けを考えて練習。

ちびくまは、1日の半分くらいしか交流級では過ごさないので、練習面ではハンディもあったのですが、交流担と障担との連携もあり、本人もやる気満々で臨んだ本番。

ステージの立ち位置までは、仲良しの女の子が手をつないで誘導してくれ、曲が始まると、大きな口を開けて、皆と一緒に歌いだしました。1日しか練習できなかった振り付けも、多少動きにぎこちなさはあるものの、みんなに合わせてやることができました。

障担も、介助の先生たちも、観客席からその姿を見て、「よくぞここまで・・・」とうるうるきてくれたそうです。
すでに、「3年生の音楽会が楽しみね」という話になってしまっています。

さて、帰宅したちびくま、疲れが出たのか、なんとなくしんどそうにゴロゴロしています。気になって熱を測ってみると、38.9℃。
これは、インフルエンザかも、と慌てて小児科に連れて行きました。

車の中で、「お医者さんで、お腹もしもしをして、それからお口の中を見てもらいます。頑張ってお口をあけてください」と言い聞かせると、妙に神妙に「はい」。

ドクターは幸いかかりつけなので、ちびくまが口にモノを入れられる事が大嫌いなことを覚えていてくれました。
聴診器を当てた後、「お口を大きく開けてくれるかな?」
ちびくまがびくっとすると、舌圧子を見せて、「これは使わないよ。懐中電灯で見るだけ。お口を大きく開けて、あーと言ってくれるかな?」
と指示してくれました。するとちびくま、ちょっと小さめですが精一杯、という感じで口をあけて「あーー」。
自閉の子には、やや難しい言い方でしたが、それでもちびくまには、わかったようです。こんなちょっとした配慮で、全然違うものだな〜、と思いました。

「あー、喉、かなり腫れてるわ、お母さん。熱が高いのは、そのせいかもしれない。万が一インフルだったとしても、申し訳ないけど、もう抗ウイルス剤が手に入らないから、対症療法でいくしかないの。でも、様子がおかしくなるようなことがあったら、すぐに診るから。」
ということで、抗生剤をもらって帰宅。夜半はついに熱が39.1度まであがりました。さしものちびくまも、こうなるともうぐったりで、口を利く元気もありません。
心配なので、ずっと添い寝して、しょっちゅう顔を覗き込んでの一夜となりました。


2/20

今、交流級でちびくまの隣の席のOさんは、ちょっとしたちびくまマニアの女の子。

周りの子が思いつかないような、でもちびくまにはとっても魅力的なものを次々にちびくまに提供しては、ちびくまが大喜びするのを見て、
「やっぱり!これちびくまくん喜ぶ思てん。貸したげる!」

今日は2日ぶりに登校したちびくまに、雑誌の付録についていた、という絵本をちびくまに貸してくれました。

障級に戻っての朝の会のとき、ちびくまはそれを机の上に出して読んでいました。障担が「ちびくまくん、今は朝の会の時間です。その本を、先生に渡すか、机の中にしまうか、どっちにしますか」と言うと、ちびくま、本を机の中にしまったのですが・・・

障担の目を気にしながら、こっそり机の中から出して盗み読みしつづけていたそうで。
「これって、高学年くらいの子が使う、結構高等なテクニックなんですけど・・・。一体どこで身につけてきたんでしょうね」と笑う障担。

最近、障担の指示に「え〜〜?」と口ごたえをしてみたり、「○○○ですよーだ!」と言ってみたり、「どこでそんなこと覚えてきたの?」ということの多いちびくまです。


2/25

ちびくまが体調を崩したり、地元校の2年生が学年閉鎖になったりで、なかなか日程が決まらなかった、3学期の地元校との交流授業がやっと実現しました。

ちびくまは、21日からまた熱を出して、昨日まで学校を休んでいたので、ちょっと心配でしたが、今日は朝から「F小学校行きます!」と大張り切り。

マンションまで迎えに来てくれた障担と、F小障担と一緒に、マンションの子どもたちに混じって集団登校。

その後、交流級の2年1組のおたのしみ会に参加しました。
多目的室の床に引かれたマットの上に正座して、みんなと一緒に、紙芝居などの出し物を見ました。
各出し物が終わると、拍手。これも最近身につけたスキルです。

ちびくまは、障担がちびくまのために作ってくれた、M小と、ちびくまのM小での生活を紹介する写真絵本をみんなの前で朗読しました。

教え子に対する愛情のとても深い障担の作った文章は
「ぼくは、○○がとくいなので、お友達にもおしえてあげます」
「とてもじょうずにできたので、どの先生からもほめてもらいました」
など、表現がとっても自画自賛風。
他の子から反感を抱かれないかと心配な面もありましたが、ちびくまにとっては、とっても嬉しい絵本だったようで、早速全文を暗記して、どこでも繰り返し暗誦しています。

M小に戻って、介助の先生たちに「F小のおべんきょう、どうだった?」と訊かれると、「たのしかった!またいきたいでーす」と元気に返事を返したちびくまなのでした。


2/26

ちびくまと入れ替わりに、熱を出して寝込んだ私。
熱はたいしたことないのに、頭痛と全身の筋肉痛と関節痛、それがおさまるにつれて、鼻炎の症状と咳、つばを飲み込むのも辛いほどの喉の痛み、と風邪症状が満艦飾に出てきてしまいました。

起き上がっているのが辛くて、ちびくまを学校に送り出したあとはずっと布団に入って休んでいます。もうそんな日が3日も続いていて、お医者さんでもらった薬もちゃんと飲んでいるのに、まったく楽になりません。

でも、こんなときでも容赦ないのがちびくま。
いつもどおりニコニコして「おかあさん、ちょっとあっち、見に行ってみようか」「おかあさん、この本、よんでください」「おかあさん、これはなんの車?」

同じことを何十回も訊いてくる反復質問も、「おかあさん、おかあさん」とべたべたまつわりついてくるのも、日頃は全くといっていいほど気にならないのですが、自分の体すらもてあましているような状況では、はっきり言って拷問状態。

「おかあさんは、びょうきで、しんどいので、ちびくまくんとはあそべません。ひとりで、しずかにあそんでください。」と言うと、顔色を変えてしくしくと泣き出す始末。

相手の感性に寄り添って、根気強く、丁寧に関わる・・・ってやはりこちらの心身が健康な状態でないとできないものなんだわ、と痛感しています。      


2/28

短期間のうちに、何度も熱を出して体調を崩すちびくまに、障担が「抵抗力が弱っているので、交流級とのお友達との接触を少し制限しましょう」と、障級の教室への他の子の出入りをしばらくの間禁止してくれることになりました。
授業も、障級の教室で、個別に指導を受けます。

でも、昼休み、交流級のおとなしい女の子が2人、「ちびくまくんのおみまいにきました」とやってきました。
障担が、「じゃあ、あなたたちだけ、特別ね」と彼女たちを入れてくれたので、ちびくまは大喜び。お気に入りの絵本を一緒に読んだりして、楽しそうに過ごしていたそうです。

以前は交流級の子供たちの中に入ると、とても緊張している様子だったのですが、自ら「友達と一緒に過ごすのが楽しい」と思えるようになってきているんですね。

「友達と仲良くすること」を無理強いされなかったからこそ、まわりの環境との折り合いのつけ方を、自分なりに学んでいくことができているのでしょう。
同時に、こういう交流級の子供たちとの関わりも、私が思っていた以上に、ちびくまにとっては大切なことのようです。

今の学校は、本当にちびくまのニーズにぴったり合っているんだな、と改めて実感しました。


ちびくまスケッチ目次へ戻るトップページへ