ちびくまスケッチ(2003年3月)


3/3

今年もいよいよ3月に入り、「6年生を送る会」の練習が始まりました。

体育館の舞台に、学年ごとに上がり、歌や台詞の出し物があります。
こうした行事の練習も十分配慮をしてもらいながら数を重ねるうちに、介助や配慮を段々に減らしていっても混乱なく参加できるようになってきました。

今年の出し物は振り付けつきの替え歌に、皆で唱和するお別れの挨拶。今日は、全校生で歌う校歌の練習もありました。
今まで、校歌斉唱の間、じっとその場で立っているだけのちびくまでしたが、今日、入学以来初めて、口を開けて、校歌を一緒に歌っているのに障担が気付きました。

「うちの校歌は、戦前の歌詞ですからね。子どもの生活実感とは結びつかないし、ちびくまくんが歌わなくても無理はないと思っていましたから」

でも、ちびくまの耳には、確かに届いていました。入学以来、これまで一度も誰にも「歌いなさい」とは言われなかったけれど、彼は自らの意思でみんなと一緒に歌い始めました。

3学期の初めから、少し荒れていたちびくま。
何かを乗り越えようとしているときの混乱からくるのではないか、と見守ってきたけれど、答はこういうことだったようです。

3/4

「6年生を送る会」本番でした。

練習時間も限られていましたが、2年生は替え歌の合唱と、挨拶の唱和を頑張りました。ちびくまも、合唱も振り付けも、唱和も、練習の時以上に頑張っていたそうです。

先月の合唱コンクールに頑張って「みんなに伍して合唱ができたこと」が、「6年生を送る会」の頑張りに繋がり、これができたことがまた次へのやる気、次への頑張りに繋がっていくようです。

2年生もあとわずか。
ちびくまは、確実に歩みを進めています。


3/5

絵本の音読を自分の特技として、自信を持っているちびくま。
障級でも「読み聞かせ」の部分は、「ちびくまくんがする!」と立候補してやらせてもらうことがほとんどです。

これまでは、「自分が読むこと」で満足だったのですが、最近これに新しいおまけが加わりました。
読んだ後、障担や介助の先生たちに「○○先生、どうでしたか?」と感想を求めるのです。あてられた先生は必ず「・・・と思います」と感想を言わされます。

感想を一通り聞くと、ちびくまは満足して「これで、よみきかせをおわります」と宣言するのだそうです。
これは、交流級で日番がみんなの前で本を読み、その内容や読み方について、みんなが感想を述べる、という朝の会の内容を取り入れてきたもののようです。

「交流級に頻繁に行くようになって、障級でずっとやっていることも『もっとこう変えていったらいいのに』と思うようになったんでしょうね。」と言う障担。

良くも悪くも、「これまでこうあったこと」にこだわりがちで、変化を受け入れるのが苦手な自閉っ子にとって、自ら新しいことを取り入れて、ルーティーンを調整していく、というのは大切なスキルのひとつ。
学校でも、こうしたちびくまの気持ちを、とても大切に扱ってもらっているようです。

3/7

ちびくまは、牛乳を飲みません。
2歳ころまでは飲んでいて、一時は牛乳と白飯だけで生きているような感じだったのですが、いつ頃からか、ぴたっと乳製品を食べなくなりました。今、乳製品で口に入れることができるのは、ピザに載っているチーズだけです。

給食では毎日牛乳が出てきますが、障担は「無理強いする事で得るものは何もないから」と入学以来一切そのことには触れずにいてくれました。

ところが、毎日のように交流級で給食を食べるようになると、ついに、同じ班の子が「ちびくまくんは、いつも牛乳飲まへんねんなあ」と素朴な疑問をちびくま本人にぶつけてしまいました。一緒にいた介助の先生は「あっ」と思って焦ったそうですが、本人はそのときは平然としていたそうです。

けれど、その翌日からこれまで手もつけなかった牛乳ビンのキャップをとったり、牛乳のニオイをかいだり、牛乳ビンを持ってしばらく固まっていたり、という行動が見られるようになりました。「やっぱり、ああ言われたことを気にしているんですね。どうしてあげたらいいのかしら」と心配してくれる障担や介助の先生たちと一緒に、しばらく成り行きを見守っていたのです。

そして、今日。ちびくまは、自分でキャップを開けた牛乳ビンを介助の先生の口に押し付け、飲むように要求しました。そして、介助の先生がそれを飲み干してくれると、空の牛乳ビンを自分の前に置いて、とても嬉しそうにニコニコしたそうです。

空の牛乳ビンはそのまま自分でおかたづけ。
ちびくまが牛乳を飲まないのを知っているクラスメートが「あれ?ちびくまくん、牛乳飲んだん?」と尋ねるのにますます満面の笑顔。

「飲まなければならない」ということと「飲めない、飲みたくない」という自分の欲求との間で、ちびくまなりに折り合いをつけた結果なんでしょうが、なんとも・・・(~_~;)

障担から、「これから当分の間、ちびくま君の給食に介助に行く先生は、牛乳2本飲むのを覚悟していくこと」とお触れが出たそうですが・・・。


3/10

私の体調が悪くて、2月の授業参観に行けなかったので、今日、個人的に参観させてもらえることになりました。

「朝早くて申し訳ないですが、どうせなら、送迎バスを降りてくるところから見てください」とのことでちびくまを送迎バスに乗せたその足で、自分も車に乗って学校へ向かいます。

ちびくまには説明してあったので、パスを降りながら私の姿を認めると、「あ、おかあさんだー」と言いながらニコニコ近寄ってきて、しばらく一緒にいましたが、そのうち「うんどうじょうであそぶ」と宣言して、荷物を介助の先生に預けて、運動場のほうへ1人で走っていきました。

そのうち、全校集会のための整列を促す放送が入ると、ちびくまの姿はわからなくなりました。
校長先生の話があり、外部のコンテストに入賞したお子さんの表彰があり、全校集会が終わるまで、ついにちびくまがどこにいるのか、わかりませんでした。

少し前までは、ちびくまの動きは独特なので、かなりの大集団にまぎれていても、ちびくまがどこにいるかは一目瞭然だったのですが、それだけ彼のやっていることが他の子どもに近づいてきたということなのでしょう。

続いて、交流級での算数の授業を参観しました。
もう一通り教科書は終わって、復習のような内容でしたが、問題の答あわせをするにも、「あっているか間違っているか」だけではなく、「それはなぜなのか」をしっかり言葉で説明することに重きがおかれているように思いました。

考える力をつけるためには、とても大切なことですが、音声言語の理解にも表出にも著しい困難を抱えたちびくまには大変な課題。出される問題自体には全て正解してはいるのですが、説明が理解できないので、静かにそこに座っているだけで精一杯、という感じ。

こういう子が、ずっと普通学級で授業を受けていたら、学校は本当に辛い場所になったことでしょう。
ちびくまを障級に入れて、本当に良かった、と思えた参観でした。

3/12

まだ風は冷たいけれど、日差しの暖かさは確実に春の便りを運んできています。

今日は、障級4クラス合同で電車に乗って、大きな公園へ遊びにいく計画を先生方が立ててくれました。
電車の大好きなちびくまは、3日ほど前にその計画を聞いて、大喜び。今日は、送迎バスから降りる足元も、学校から駅まで歩く足元も浮いていたそうです。(笑)

電車の中では、座っているのももったいなくて、ドアのところにずっと立ったまま、景色を眺め、目に付くものをかたっぱしから鼻歌交じりに言葉にしていきます。

公園の大型遊具で、元気いっぱい遊んで、給食に間に合うようにまた電車に乗って学校に帰りました。

帰りの電車の中では障担に「きょうはたのしかったです。またいきたいです」とアピールしていたそうです。

3/13

ちびくまのクラスに、急な見学のお客様がありました。
子どもと親御さんに、地域校の教頭先生や障担の先生も同行していました。

ギャラリーが増えると嬉しいちびくまは、いつもに増して大張り切り。見せるのは「朝の会」だったのですが、早速「ちびくまくんがにちばんしまーす」と前に出て、司会をやり始めました。彼の頭にインプットされているのは普通学級の朝の会なので、彼が丸暗記で司会をしていることに気がつかない人にとっては、「障級でここまでのことができるの?」という感じになります。

お客さんが来ていると、他の子どもたちもなんとなく「いいところを見てもらわなきゃ」という気になるのか、普段は手遊びなど知らん顔の子が上手に手遊びをしていたり、皆が普段にもまして、生き生き楽しそうに、先生方が「いつもこんなんやったらいいのになあ」と思うくらいノリの良い朝の会だったようです。

こういうところだけを見て、「うちの子もここに入れさえすれば・・・」と思われたら、先生方はとっても困るかも(笑)。

3/17

今、「給食当番ごっこ」にはまっているちびくま。
おもちゃの箱を子ども2人で一緒に運びたいらしいのです。

でも、周りの子どもに協力してもらうのは大変。
手を変え品を変え、声色まで変えて、障級の友達が箱を一緒に持ってくれるよう、誘っています。

「なるほどねえ、そういうアプローチで行く?」と先生方にはオオウケしてもらっているとか・・・。
まあ、これも、対人関係のいい訓練になるかもしれないですね。

3/21

今日は祭日だけれど、夫は年度末で休日出勤。
日差しは暖かく、いよいよ春の到来を思わせる晴天です。

ちびくまに「2人でどこかへ行こうか?」と訊いても「おでかけしませ〜ん」とつれない返事。
でも、「K公園へ行って、お弁当をたべてから、遊ぶというのはどう?」と誘うと、「Kこうえん、いきまーす!」と元気な返事が返ってきました。

K公園とは、学校から12日に電車で出かけたばかりのところ。
その後も「Kこうえん、たのしかったよ。こんどはおかあさんといこうね」と繰り返していたので、見事ツボにはまったようです。

「電車で行きますか?車で行きますか?」と訊くと「でんしゃ」と即答だったので、近所のスーパーでお弁当を買い、2人で手をつないで駅まで歩きました。

日本に帰国したばかりのころ、通園施設の母子教室に通うため同じ道を2人で歩いた事が何度もありますが、その頃のちびくまは、手をつないでくれないので、飛び出しが心配だったし、気になるものを見つけると、そこからてこでも動かなくなるので、1人で歩けば10分ほどの道のりが30分も40分もかかってしまったものでした。

今日のちびくまは、歩道のないところや、交差点ではしっかり手をつなぎ、歩行者専用の道にくると、つかず離れずの距離を保ちながら足取りも軽く歩いています。
「2年で、本当に別人みたいになったなあ」と感慨に浸ってしまう私。

電車を降りてからのルートも、ちびくまはしっかり覚えていて、先に立って私を引っ張るようにして歩いていきます。
「ああ、みんなでここで遊んだのね」と想像がつきました。
シートを広げて2人でお弁当を食べて、大型遊具でしっかり遊んで、また電車に乗って、駅前のスーパーでお買い物。

こういう「当たり前の子ども連れ」になれる日がくるとは、本当についこの間まで思えなかったのです。
子どもの成長する力を、諦めないでよかった、毎日そう思う今年の春です。

3/23

今日の夕食は、ちびくまのリクエストで「中華風肉みそのレタス巻き」。
トマト以外の野菜を一切口にしないはずのちびくま、なぜかこのメニューであれば、レタスを少し食べてくれます。

肉みそを、小さくちぎったレタス2枚ではさんで食べていたちびくまが、突然、「おかあさん、これ、なにみたい?」となぞかけしてきました。
「え?なにみたいかなあ〜。サンドイッチ?」
「ちがうな。なにバ〜ガ〜みたい?」
「あ、ハンバーガーみたい!」
ちびくまはニッコリ。「あたり」のサインです。

ところが続いて、
「なんねんなんがつなんにちになんでなににいってたべたハンバーガーみたい?」
「・・・」
「2001年7月16日にみんなでマク***ドへ行って食べたハンバーガーみたいだね」
「・・・・・・・」

あとでこっそり、過去のスケッチを確かめてみた母なのでした。

3/24

今日は修了式。

体育館に全校生が整列して、校長先生から修了証書をもらい、校歌を歌い、校長先生のお話を聞く・・・という段取りのようです。

ちびくまは昨年の修了式でも、既に「じっと立っているため」の介助は要らなくなっていましたが、
「大きな声で校歌を歌っている姿を見て、胸が熱くなってしまいました。大きな成長を感じました」
と障担が連絡帳に書いてくれました。

一年間のスナップ写真を一冊のアルバムにまとめて、一枚一枚に障担がコメントを書き込んでくれたものをいただいて帰ってきたちびくま、さっそくそのアルバムを眺め、コメントを読み上げてご機嫌です。

どの写真も、どの写真も、真剣に課題に取り組んでいるちびくま、仲のいい子に囲まれて遊んでいるちびくま、介助の先生に甘えているちびくま、見ているこちらまで楽しい気持ちになるような明るい笑顔でカメラを見ているちびくま、彼の1年間が、毎日毎日充実していて、楽しい学校生活を送ることができたことの証明書のようでした。

勉強熱心、指導熱心で、これ以上望めないほどの細やかな配慮をしてくれた障担はもちろんですが、毎日彼の思いに寄り添って、遊びにも学習にもじっくり付き合ってくれた介助の先生たち、(きっと)自閉っ子ならではのアンバランスさにとまどいながらも、彼が交流級にも自分の居場所が見つけられるように、と心を配ってくれた交流担にも、感謝でいっぱいです。

ちびくまの、障級の仲間たち、そして、交流級の仲間たち。楽しい時間をありがとう。来年度もどうかよろしくね。

3/26 

今日は学校の送迎バスの打ち合わせ会で、ちびくまと2人で市役所へ出かけて行きました。

内容は、送迎バスの運行に関する意見・要望を当局が聞く、というのと、新年度運行ルートの確認・決定というものですが、先生も友達も沢山来ているので、 ちびくまにとっては結構楽しみな行事のようです。

会議室に入ると、さっそく駐車場を見晴らす窓際に立って、
「あ、バスが右にまがったよ」
「○○ちゃんのおかあさんが来たね」
(ほとんどのお母さんの車の車種とナンバーも覚えている)
と実況中継を始めるちびくま。

今回の最大の変更は、ちびくまが、これまで2年間乗ったバスではなく、別のバスに乗ることになったこと。(バスは全部で5台)
先生方は「乗るバスが変わるのは、ちびくまくんにとって負担が大きいかしら」と心配して、前もって相談してくれたのですが

実は、このバス、去年の春、教委が新たに購入した新車のリフトバスで、ちびくまは以前から「あのバスに乗りたい」と憧れていたのです。

「おかあさん、ちびくまくん、***番のバスにのりたい」と彼が言うたびに、「お願いだから、それはいつものバスの中では言わないでね」と母はハラハラしていたくらいです。(だって彼の興味は純粋に『バス』なのに、運転手さんや添乗員さんには「こんなに可愛がっているのに」と思われて、気を悪くさせてしまうかもしれませんから)

そこで、
「ちびくまくん、3年生になったら、***番のバスに乗せてもらえるんだって」と本人に伝えてみると、「やったーーーーー!!」

というわけで、問題なく新ルートが決定したのでした(笑)。

ちびくまは既に「4月7日から、***番のバスに乗れるんだね、たのしみだなあ」とウキウキしています。
でも、お願いだから、それは4月4日の離任式(この日までは旧ルート)のバスの中では言わないでね。

3/30 

先日から「ちびくまくんは、おもちゃ王国へ行きたいなあ。いつ連れて行ってもらえるのかなあ」と遊園地行きをせっせと要求していたちびくま。
タイミングよく、父が会社で無料入場券をもらってきたので、久しぶりに3人で出かける事にしました。

でも、春休みの日曜日、お天気も良い、ということで、現地は想像以上の大混雑。一昔前のちびくまなら、入場券を買うためのものすごい行列(タダ券あって良かった!)を見ただけで引き返そうとしたでしょう。

ところが、今回は人込みを見てもひるみません。
足取りも軽く入場ゲートへ直行し、「ちびくまくんは、まず、あの電車に乗りたいです!」と指差し。
まあ、なんと完璧な日本語を喋るようになったこと。

電車で一周すると、「次は、プラレール行きます!」とまっしぐら。学校の遠足で遊園地に行った時も、こうやって先生たちを引き回しているんだろうなあ。(~_~;)

お目当てのプラレール館は、芋の子を洗うような有様でしたがちびくま、めげません。ジオラマを隅から隅までなめるように眺めるだけで、数十分をすごす事ができました。

その後お弁当を食べて、ゴーカートと回転するバスに乗り、(来るたびに乗り物リクエストが増えている)その後またプラレール館で1時間。

最後に観覧車にのって仕上げをして家路につきました。
「おもちゃ王国、今度はいついこうか」と、はや次の催促をするちびくまですが、ああいう雑音と嬌声と人臭さでパニックになりそうな人込み
ホント勘弁してください、と思った母・・・どっちが自閉なんだか(笑)。




ちびくまファミリーのホームページへ戻る「ちびくまスケッチ」目次へ戻る